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#溺愛
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翌朝。孤児院のテラス。
「……ソフィアや。もし、あんたとアンナさえ良ければ、ずっとここにいてもいいんだよ」
院長先生が、温かな両手で私の手を包み込んだ。
「えっ! 本当ですか、院長先生!?」
隣でティーポットを抱えていたアンナが、パッと花が咲いたような笑顔で飛び跳ねる。
「ちょうど人手が足りなくて困っていたところなんだよ。ここで職員として、無理のない範囲で働きながら子育てをする……そんな道も、案外悪くないとは思わないかい? 子供は大歓迎だからねぇ」
この温かな場所で根を張り、生きていく未来。そこにあるのは、心からの安らぎだった。
「……院長先生、私――」
答えようとした、その時だった。
――ゾクッ。
背筋を氷でなぞられたような冷気が走り、アンナが淹れてくれたばかりの温かいハーブティーから、湯気が消えた。
「……? 急に、暗くなっちゃいましたね……。お嬢様、空が――」
視線を上げると、そこには太陽を塗り潰すような黒い霧が渦巻いていた。それは意志を持っているかのように急降下し、またたく間に青空を喰らい尽くしていく。
さっきまで元気に遊んでいた子供たちが、一人、また一人と激しく咳き込み、崩れ落ちた。
「みんな!? 早く中へ!」
院長とアンナとともに駆け寄った私の目に飛び込んできたのは、子供たちの手足に浮かび上がる禍々しい黒い痣。肌は血の気を失い紫色に変色し、呼吸は浅い。
(これは……ただの病気じゃない。すごく邪悪な気配を感じるわ……!)
その時、脳内に切迫した声が響いた。