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「嫌っ、止めてってば!」
力を振り絞り、何とか新田から逃れた私は鞄を手に教室を出ようとするけれど、
「きゃっ!」
急いだあまり、足がもつれて教卓の前辺りで転んでしまう。
「琴里、大丈夫か?」
そんな私にすかさず近付く新田。
「嫌、来ないでよ……」
教卓を背に私は新田に追い詰められてしまい身動きが取れなくなった。
「なぁ琴里、俺、本気だよ?」
新田の手が私の頬に触れる。
「……っ!」
ゾワッと気持ち悪い感覚が全身を駆け巡り、身体がピクリと反応する。
「あの男とは、もうヤッたのか? まあ琴里は今までにも色んな男と付き合ってきたみたいだから過去の事は気にしない。けど、俺と付き合ったら絶対俺以外の男には触れさせない。俺だけが、触れられるんだ」
「……っ」
頬に触れていた指が唇へと移動してきて、そのまま軽く撫でられる。
目は血走り、口元に笑みを浮かべながら、まるで私が自分の彼女かのような発言をする新田に、恐怖すら感じていた。
(何なの、コイツ、頭おかしいんじゃないの? 自分の世界に入り込んでる)
恐怖で動く事すら出来ず、私が抵抗しないのを良い事に新田の指は首筋から鎖骨を伝ってブラウスのボタンに手を掛けると、一つ、また一つとボタンを外していく。
「いやだ、本当に、止めてよ……」
「何だよ? そんな初めてみたいな顔して。それともあれか? 琴里は無理矢理されるのが好きとか?」
「違っ……止めて……お願いだから……っ」
身体は震え、薄ら涙が浮かび視界が歪んでいく中、突然教室のドアが勢いよく開く音がした。
「……り、つ……?」
視界が歪む中でドアに目を向けると、教室に入って来たのが律だと確認出来た。
そして無言で私たちに近付いて来ると、
「またお前かよ」
そう気怠そうに呟きながら新田の襟首を掴んだ律は、そのまま勢いよく投げ飛ばしてしまう。
「うわっ!?」
投げ飛ばされた新田は机や椅子に身体を打ち付け、顔が苦痛で歪んでいた。
「琴里、大丈夫か? これ、羽織っとけ」
「う、うん……ありがと」
座り込んだままの私の腕を取り立ち上がらせてくれた律は、自分が着ていたカーディガンを私の肩に掛けてくれると、私を背に庇いながら倒れている新田の方に向き直る。
「おいお前。次コイツに何かしたら、こんなんじゃ済まさねぇからな。よく覚えとけよ」
冷ややかな目つきでそう言い放った後、律に手を引かれ私は新田を振り返る事もせずに、そのまま教室を後にした。