テラーノベル
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初めて阿部とそうなった夜、俺は、泣いた。
隣では阿部が可愛くてきれいな顔で眠っていて、それはほんの少し疲れていたけど、とても満たされている。
俺は、初めての経験にお腹なのか腰なのかどこかわからないけれどどこかが鈍い痛みを訴えていて、決してこんな風には眠れそうになかった。
スマホを確認するともう明け方の4時を過ぎていて、一度眠ったらなかなか起きない俺が何度も眠りに落ちながらも、何度目かに目を覚ました所だった。
胸の中が、まるで鉛を沈めたみたいに重たくて、ぐるぐるして、暗くて、頭の中がマーブル模様でぐちゃぐちゃだった。愛しいとか、嬉しいとか、そういう気持ちよりも、ただ自分が情けなく思えて仕方なかった。
阿部と、セックスをした。
本当に文字通り、俺の中にあいつが入ってきて、俺たちは繋がった。阿部は嬉しそうに目を細めて俺を抱きしめたり、俺の中を行ったり来たりして、俺の中で射精した。
俺は、阿部が身体の中にいるあいだ、ひどい圧迫感と不快感、そして引き攣れるような痛みに耐えながら、ずっと間抜けな途切れ途切れの声を上げていた。阿部と繋がっている時間が、ものすごく長く、途方もないほどに長く感じられた。
「翔太っ、好き、好きだよ。お前だけ…」
荒くなった呼吸の合間に、うわ言みたいに同じことを呟く阿部。その言葉を聞くたびになぜだか俺は泣きたくなっていた。
阿部のことは、もちろん好きだ。俺も、阿部が俺を思う気持ちと同じように、彼を愛して…いるんだと思う。
けれど、これで俺たちはもう今までみたいな仲間ではなくなったのだと、もう今までみたいに辛辣なツッコミをし合う友達のようにはいられないのだと思うと、ただ無性に悲しくなった。グループでいる限り、何を言ったって絶対に離れないっていう暗黙ルールが、破られたような気がした。
これまで、頼りない俺を支えてくれた絆が、跡形もなく壊れてしまったような気分だった。
「………っ」
また涙がこみ上げてきたので、布団の中で、俺はぐっと息を止め、声を殺して泣いた。そして泣き疲れた頃、俺は眠っていたみたいだった。
「…た、翔太」
「んん…」
優しく身体を揺すられる感覚。
目を覚ますと、阿部が泣きそうな顔でこちらを見下ろしている。こいつが泣くのを我慢する顔は結構怖い。そんな顔になるなら泣いてくれたほうがましってくらいに。
「あべ、ちゃん…」
「ごめんね、身体つらい?」
「…大丈夫」
裸の肩をそっと撫でられて、俺は小さく首を振った。
「泣いたの?」
「………」
そんな風に聞かれると、うん、とは言えない。でも、俺の目を見れば泣いたことなんて火を見るより明らかだろう。
「ごめん翔太、俺…自分ばっかり良くなって…」
「そんなことない」
阿部が、あんまり悲しそうな顔をするので、被せ気味に言ってその首に抱き着く。
「そんなことない、から」
俺と同じく裸の、薄い背中を乱暴にごしごし擦ると、しばらくして阿部は泣き出してしまった。俺も、一緒になってまた泣いた。
俺たちはしばらく抱き合ったまま二人してわんわん泣いた。そして、ひとしきり泣いた後、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を見合わせて、笑ってしまった。
あれだけ情けないと思った自分のことも、なんだかどうでもよく思えてきて、阿部が、今までよりも一層愛しくて可愛い存在に思えた。
過ぎた時間が戻らないのは、やっぱり少し悲しいけれど、俺たちはこれから、もっともっと、近付けるのかもしれなかった。
コメント
6件
一線越えたあとの心の揺れが愛おしくてしょぴを抱きしめたくなりました🥺 2人でおいおい泣くの可愛くてキュンです💚💙
あべなべありがとうございます😊
複雑だけどしょっぴーの気持ちめっちゃ分かる🥹 2人で幸せになって欲しいな😊💚💙