テラーノベル
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雑誌のページを捲る手元に、ふ、と落ちる影。
顔を上げる。ピンク色の前髪の隙間から、いたずらっぽく含みを持った彼の意味深な笑顔を見つける。
「何か用です?」
ピンク髪の青年は返事しなかった。ただ無邪気に微笑んだまま、黙って首を振った。真意が読めない。けれど、さして興味もない。
再び雑誌を捲り、そこにある記事を目で追う。斜め上から、じっとこちらを見つめる青年の静かな息遣いが感じられた。
「俺、蓮の好きな人、知ってるよ」
唐突に降ってきたセリフに一瞬手を止める。誌面に目を落としたまま、聞き返す。
「だから、どうしたの」
「こっち向けよ、蓮」
青年の気配が、限りなく近付いてきた。思わず顔を上げる。瞬間、柔らかい唇が触れた。悠に10秒はくっついたままでいただろうか。背筋が、微かに震えた。理由は何となくわかっていた。
「間接キス」
スローモーションで離れていく。青年の輪郭が、ふいに彼と重なって見えた。
「あのね…」
怒りは感じない。指先で唇をなぞって、ゆっくり瞬きをしてみる。
咄嗟に、このキスを、記憶しようとしていた。
青年がくるりと踵を返す。つま先がテーブルの脚を蹴って、小さくかたん、と音を立てた。部屋の扉を開けて、青年が振り返る。
「おすそわけ」
また、ピンク色の前髪の奥で無邪気に微笑んだ。
「阿部ちゃんが、お前を切ない目で見てるんだよね」
ぱたぱた軽い足音で駆けていく背中を黙って見送った後、頬杖をついた。
もう一度、キスの感触を思い出す。彼の唇に、触れられる瞬間を思い描く。
青年のセリフが脳内でエコーした。
「阿部ちゃんは蓮のこと好きなのかもしれない。でも、阿部ちゃんは俺のものだから。俺のことも、好きでいるんだ」
コメント
8件
余計なの一枚入っとる😂😂😂
最近、めめあべさくについてあれこれ思いを馳せています。理想的な着地はこんな感じかなぁ🤔 めめあべもめめさくもあべさくもさくあべも好きで、選べない…😳