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『初音ライダー剣』
第4話
“焦燥”
ミクとMEIKOはBOARDの宿舎に戻った後、戦況を報告し、少し休んでいた。戦いに次ぐ戦いで、2人は疲れていた。
ウタ「お疲れ様、2人共。」
ミク「…うん、ありがとう。」
ミクはウタからアクエリアスを受け取り、早速飲む。同時に、MEIKOもウタから紅茶を受け取って飲み始める。
MEIKO「ミク、あの技、何でできたの?」
ミク「あの技?…ああ、カードのコンボ技のこと?」
MEIKOはミクがラウズカードのコンボ技「LIGHTNING BLAST」を使えたことをミクに問う。自分は見せはしたが、教えてはいない。
ミク「別にそんな大したことじゃないよ。ただ、この前姉さんがラウズカードの組み合わせでコンボ技を使ったとき、私のでもできるかな、と思って見様見真似でやってみただけ。」
MEIKO「見様見真似でそこまでできたの?」
ミク「まあ、何となく考えたけど。キックの技と、属性を付与するカードを組み合わせたらどんなかな、て。で、他にもありそうだから色々試してみようかな、とも考えてる。」
ウタ「凄いね、ミク。ブレイドが様になってきてない?」
ミク「そうかな?全然自覚ないけど。」
MEIKO「…」
ウタの言う通り、ミクはこの短期間で着実にブレイドの変身者として様になっている。誰に教わったわけでもないラウズカードのコンボ技を見様見真似でやってのけた。それだけではない。バイクで敵に体当たりを敢行し、そこに追撃を入れる等、戦闘のイロハも掴んできている。MEIKOはそう思えた。
ミク「ん?どしたの、姉さん。」
MEIKO「ん?…い、いや、何でもない。」
MEIKOは考え事にふけっていた。ミクが仮面ライダー=戦士として着実にレベルアップしていく一方で、自分はどうだ。あまり成長できていないのではないか。そう思えてきた。
ミク「姉さん、大丈夫?」
MEIKO「ん、大丈夫だって。何でそんな心配されなきゃなんないのよ?」
ミク「…姉さん?」
MEIKO「ちょっと休ませてよ。戦闘明けなんだから。」
MEIKOはミクと少し距離を置くべく、紅茶を持って部屋を出ていった。
MEIKO「…」
MEIKOはまだ物思いにふけっていた。自分とミクと一体何が違う。彼女はそう思えてならなかった。確かに、短期間で戦闘技術を身に着けてきたミクの技量は認めざるを得ないものがある。しかし、短期間過ぎる。まだミクがブレイドに変身するようになって1ヶ月も経たない。その短期間で、自分に追いついてきたのか。そう思うと、ミクの資質は嫉妬を通り越して怖いものがある。そう思っている最中、再びアンデッド出現の報が入ってきた。
ウタ「MEIKO先輩、アンデッドが出現しました。場所は街外れの動物園です。」
MEIKO「…分かった。すぐ行く!」
MEIKOは通信を受け取ると、すぐにレッドランバスの方へ向かい、出撃する。
その頃、ルカはユキを連れて動物園に来ていた。小動物が好きなユキはゾウやシマウマ、ライオン等の日本にいない動物にキャーキャー言いながら見て楽しむ。その様子をルカは穏やかに見ていた。
ユキ「お姉ちゃん、これ触ってみて。」
ルカ「ん?ああ、モルモットか。」
ルカは箱に入れられているモルモットを見て微笑した。ユキはすっかり気に入り、もらって帰ろうとする。
ユキ「ねえ、この子、もらって帰ってもいいかな?」
ルカ「いや、それはダメだろ。」
ユキ「何で?この子、野生に帰りたそうだから、返してもよくない?」
ユキはモルモットを1匹手に取って、野生に返そうと言う。
ルカ「何で野生に返りたいって分かるんだ?」
ユキ「…何となく。」
ルカ「…何となく、か。」
ルカは呆れた。モルモットの1匹が野生に返りたいと言うのは単なるユキの勘だった。
ユキ「でも、こんな狭いケースに入れられてるくらいなら、いっそ野生に返し
た方がこの子のためだと思うけどな。」
ユキは自分なりにモルモットのことを考えていた。それを悟ったルカはユキの頭をなでる。
ルカ「ユキちゃんは優しいな。よくそんなことが考えられたな。」
ユキ「そう?へへ。」
ルカ「でも、野生に返すのはダメだ。そのモルモットはこの動物園の管轄だからな。」
ユキ「ん!」
ユキは嬉しそうに言う。
ルカ(何をやってるんだ、私は…)
ルカはそんなユキの頭を撫でた後、不思議な気分になった。何故自分がこんなことをしているのか。優しい?子供や小動物を愛でる?そんなことを言ったりするヤツだったか、自分は。そう思えてならなかった。
ユキ「お姉ちゃん、どしたの?」
ルカ「…ん?いや、何でもない…!?」
ルカはユキに軽く返事をした後、アンデッドの気配を感じた。アンデッドは間違いなく近くにいる。それは直感で分かる。
ルカ「ユキちゃん、ちょっとの間1人でいられる?」
ユキ「へ?どしたの、お姉ちゃん?」
ルカ「急用ができた。大丈夫だ、すぐ戻る!」
ルカはそう言ってユキに背を向けて走って行った。
ルカ「…ん?」
ルカは走っている中で、別の気配も感じた。ミク/ブレイドとMEIKO/ギャレンだ。彼女らもアンデッドを追って近くに来たのか、とルカは悟った。
ルカ「…手並みを拝見させてもらうか。」
ルカは思考を切り替え、ミクたちの戦いを一歩退いたところから見てみることにした。
同じ頃、ミクとMEIKOはアンデッドの気配がしたという動物園の近くに来た。
ミク「ここだね。」
MEIKO「間違いなく、ね。」
2人はバイクを降りると、ブレイバックルとギャレンバックルを取り出し、臨戦態勢に入る。
MEIKO「手分けして探しましょう。私は左に行くから、ミクは右を頼むわ。」
ミク「OK。」
ミクとMEIKOは二手に分かれて行動することにした。2人は早速手分けしてアンデッドを探すことにする。
ミクは早速、動物園の右方向へ行ってみた。しかし、広大な動物園を徒歩で探すため、それなりの時間を要する。さらに、アンデッドは気配を消したり移動したりして、アンデッドサーチャーに反応しなくなったりもする。動物園の人込みの中なら猶更だ。これは捜索は難航しそうだ。ミクはそう思った。そう思っている中で子供の泣き声を聞いた。歌愛ユキだ。
ユキ「ふぇ~…」
ミク「どしたの?」
ユキ「バケモノが出てきたのに、お姉ちゃんが帰ってこない…」
ミク「お姉ちゃん?私が一緒に探してあげようか?」
ユキ「…うん。」
ミクは事前情報もないまま、ユキの”お姉ちゃん”探しを安請け合いする。
一方のMEIKOは動物園外の左側を捜索していた。今回のアンデッドはこの動物園に来たのは間違いない。MEIKOはそう確信してアンデッドを捜索する。そして、その中で岩の上に仁王立ちしているアンデッドを見つけた。縞馬のアンデッド・ゼブラアンデッドだ。
MEIKO「見つけた!」
MEIKOは勇んでゼブラアンデッドを追う。ゼブラアンデッドはMEIKOの存在に気付き、岩の上からジャンプしてMEIKOの目の前に着地する。
MEIKO「ッ!?」
ゼブラアンデッドは左腕を振るってMEIKOを殴打する。MEIKOは殴り飛ばされ、その先で倒れた。しかし、すぐに立ち上がり、ギャレンバックルを装着する。
MEIKO「変身!」
「TURN UP」
MEIKOはポーズを取った後、オリハルコンエレメントをくぐり、仮面ライダーギャレンへと変身する。そして、ギャレンは早速ギャレンラウザーを取り出し、ゼブラアンデッドに向けて発砲する。ゼブラアンデッドは大きくジャンプして銃撃を回避し、ギャレンの背後に回る。
MEIKO「うッ!?」
ギャレンは背後を取られて振り向くが一足遅く、ゼブラアンデッドに殴られて転倒する。ギャレンはすぐさま体制を立て直し、ギャレンラウザーをゼブラアンデッドに向けるが、ゼブラアンデッドは自慢の足を使って高速で移動し、分身を作り出した。
MEIKO「な!?」
ギャレンは分身するゼブラアンデッドに困惑する。ゼブラアンデッドはその隙を突いてギャレンに攻撃を仕掛けてくる。まず1体のゼブラアンデッドがギャレンにパンチを浴びせる。ギャレンはその衝撃でよろけるが、怯まずにギャレンラウザーを発砲する。しかし、ゼブラアンデッドは高速で移動して残像を作り出し、銃弾はゼブラアンデッドの残像だけを撃ち抜いていく。
MEIKO「く…」
歯噛みするギャレンをよそに、ゼブラアンデッドは高速で移動しつつ、分身を作り出して攻撃を繰り返す。ギャレンは攻撃が当たらず、苦戦する。その様子をルカが遠くから見ていた。
ルカ「…弱いな。」
ルカはギャレンの戦いぶりを”弱い”と見限った後、その場を去った。
一方、ミクはユキと共に”お姉ちゃん”を探していた。広大な動物園だが、アンデッドが出たことで園内の人は非難し始めていた。そんな中でも、2人は引き続き探していた。
ミク「そういえば、ユキちゃんのお姉ちゃんて、どんな人?」
ミクはユキに”お姉ちゃん”の特徴を聞く。
ユキ「…ピンクの長髪がカッコイイ人。」
ミク「ピンクの長髪?ならすぐ分かると思うけど…」
ルカ「ユキちゃん、ごめん!」
ミクが思案する中、ルカがユキを探して戻ってきた。
ユキ「お姉ちゃん!」
ルカ「ユキちゃん、大丈夫?」
ユキ「うん。でも、バケモノが出てきたって聞いて、怖くなって…」
ルカ「それで泣いてたのか。でも、もう大丈夫だ。」
ルカは泣くユキを軽くあやすと、ミクの方を向く。
ルカ「…ありがとう。」
ミク「い、いえ、当然のことをしただけなんで…」
ルカは礼を言うが、ミクは謙遜する。そんなミクに対し、ルカは手を差し伸べる。ミクもそれに同調し、2人は握手を交わす。
ルカ「!?」 ミク「!?」
2人は握手をした瞬間、お互いのことが直感で分かった。
ルカ「…成程。お前がブレイドか。」
ミク「あ、あなたが…カリス…?」
ミクは困惑しつつも、ブレイバックルを取り出そうとする。しかし、ルカはそれを止める。
ルカ「逸るな。今、戦う気はない。」
ミク「へ…?」
ルカ「それより教えてやる。今、ここの反対側でアンデッドが別のライダーと戦ってる。行ってみたらどうだ?」
ミク「何でそんなことを…」
ルカ「仲間が心配じゃないのか?」
ミク「…!」
ミクはルカに礼を言う暇もなく、駆け足でその場を走り去った。
ユキ「お姉ちゃん、今の人、知り合い?」
ルカ「いや、赤の他人だ。」
ユキはルカを見遣るが、ルカは軽く流す。
MEIKO「くそ!」
その頃、ギャレンはゼブラアンデッド相手に苦戦を強いられていた。ギャレンの銃撃は残像を通過するだけで当たらない。それでいて、ゼブラアンデッドの攻撃はギャレンに当たる。この状況が続けば…と思うと、ギャレン/MEIKOは心が折れそうになった。
ミク「姉さん!」
そこにミクが救援に来た。ミクは早速ブレイバックルを取り出し、装着してポーズを取る。
ミク「よくも…変身!」
「TURN UP」
ミクはオリハルコンエレメントをくぐってブレイドへと変身する。ブレイドはブレイラウザーを振るってゼブラアンデッドに斬りかかるが、ゼブラアンデッドの残像をかすめるだけで当たらない。その直後に、ゼブラアンデッドはブレイドにパンチをお見舞いする。
ミク「うわッ!?」
ブレイドは軽く飛ばされる。その背後からギャレンが出てきてブレイドを押しのける。
MEIKO「どいてなさい!…コイツは私が封印する!」
ミク「へ!?でも…」
MEIKO「あんただけにやらせない!」
ギャレンは躍起になってギャレンラウザーでゼブラアンデッドを攻撃する。しかし、攻撃は当たらず、これまでと同じことの繰り返しである。その素早さを捉えない限り勝ち目はない。ブレイド/ミクは直感でそう思った。
ミク「…そうだ!」
ブレイドはある作戦を思いついた。ブレイド/ミクは目を閉じて、ゼブラアンデッドが自分を狙ってくる瞬間を見極めようとする。その時を突けば、攻撃は当たるはずだ。ブレイドはイチかバチかの賭けに出た。
MEIKO「ミク?」
ブレイドは精神を集中させて、瞑想に入った。ゼブラアンデッドはそこを狙い、ブレイドを攻撃してくる。しかし、ゼブラアンデッドの攻撃よりも早くブレイドがブレイラウザーを振るい、ゼブラアンデッドに斬撃を当てた。ゼブラアンデッドはその場に倒れ転げた。
MEIKO「ミク、どうやったの?」
ミク「攻撃を仕掛けてくる瞬間を狙っただけ。」
ブレイドはゼブラアンデッドが倒れているこの隙にブレイラウザーから♠2と♠6のラウズカード2枚を取り出し、ラウズする。
「SLASH」
「THUNDER」
「LIGHTNING SLASH」
ミク「はあああああッ!」
ブレイドは電撃のエネルギーを帯びたブレイラウザーを振るい、ゼブラアンデッドを斬りつける。ゼブラアンデッドは斬撃を受けて倒れ伏し、アンデッドクレストを開いた。ギャレンがその隙を見て空のラウズカードを投げ入れ、ゼブラアンデッドを封印した。しかし、ギャレン/MEIKOは変身を解除した直後、フラっと倒れそうになった。
ミク「姉さん!」
ブレイドも変身を解除してミクの姿に戻ると、MEIKOを気遣う。しかし、MEIKOはその手を拒絶する。
MEIKO「…ほっといて!」
ミク「へ?…でも、結構ボロボロじゃない。」
MEIKO「…ほっといてって言ってるでしょ!」
ミクは善意でMEIKOに手を差し伸べるが、MEIKOはそれを拒否する。彼女にはミクに対する嫉妬と焦燥感が芽生えていた。しかし、ミクがこれを知る由はない。