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あれから少し経った。

あの訓練の後僕が話しかけようとしたら一ノ瀬にとことん避けられた。正直腹が立つが僕は今彼に縋るしかないため必死にその感情を抑えている。

今日こそは彼と話すつもりだ。


無陀野「今日は血蝕解放を維持する訓練をする。みんな校庭に―」


無陀野の言葉がバクに遮られた。

どうやら鬼機関が桃太郎機関に襲撃を受けたらしい。


無陀野「予定変更だ。鬼機関の危機だ。お前らも着いてこい。」


皆戦いに備えていく。こんなことは桃太郎機関にいた時はなかった。もちろん急に襲撃することはあったが、このように襲撃を受けることはあまりない。


氷介(学生にまで手を借りるだなんて、鬼機関は人手がないのだろうか)


皆が準備を終えたあと、直ちに出発した。

もしかしたら僕の隊にいた隊員もいるかもしれない。ありえない話だが、僕のことが分かればもうここにいる必要もない。

一ノ瀬に話を聞く必要もない。


でも、 このままじゃダメな気がするのはなんでだろう。



無陀野「ここからは特に慎重に行く。気を引き締めろ。」


話によれば、桃太郎機関が鬼機関のアジトを特定し襲撃したようだ。

今は混乱が続いていて急を要する事態らしい。


氷介「おい、一ノ瀬」


四季「…」


まただ。また僕と口をきいてくれない。

何がダメなんだ。たしかに僕はお前に酷いことを言ったが、僕だってちょっとは改心したんだ。きっと、たぶん……


無陀野「今からアジトへ入る。くれぐれも死ぬなよ。」


無陀野の言葉に一気に空気が張りつめる。ピリピリと緊張がはりつめていて、少し動いたらそれが爆発しそうだ。みんなは真剣な顔つきでアジトへ足を運んだ。




アジトは鬼にとってまさに地獄のようだった。そこら中に広がる死体、もう誰のものかも分からない腕や足が散らばっている。こんな汚い殺し方をするだなんて、まるで品がない。

僕は鬼を殺したが、こんな汚く惨い殺し方だなんてしたことはなかった。

死ぬ時くらい美しく死にたいはずなのに。

こんな殺し方はあんまりだ。

その腐った性根が


氷介「汚らわしい…」


四季「…は?」


ぴりっとした痛みが頬をじんわりと満たしていく。平手打ちされた…?僕が?動きを読めなかった。この僕が…?


衝撃に体がよろける。ぐわんと視界が揺らぐ。なぜ殴られたのか僕には分からなかった。


四季「お前どこまでも最低だな。この人たちの気持ちにもなれないのか?」


一瞬で理解した。僕は確かに「汚らわしい」と言った。だがそれはこんな殺し方をした桃太郎に対してだ。それを彼は鬼に言ったと思っているのだろう。


氷介「違う…!僕は!」


四季「もう黙れよ!!!」


四季「お前にはわかんねぇよなぁ。隠れて生きる鬼の気持ちも、こんなふうになった人達の気持ちも!」


氷介「ちがっ」


四季「全部!!!!」


四季「わかんねぇだろ…」


その言葉を聞いた時ふつふつと腹の底から湧き上がる感情を抑えられそうになかった。


氷介「全部わかるよ!!!」


つい口から出てしまった。一ノ瀬はきょとんとしていて、止めに入ろうとしていた無陀野は手が止まっているし、他の生徒も驚いた顔で注目している。


氷介「…なんでもない。てゆうかこんなことしてていいのか?」


無陀野「…そうだな。こんなことをしている場合ではない。」


四季「…いこうぜ。」


悔しさ?怒り?なんで僕はこんな大声を出してしまったんだろう。

分からないのがなぜかもどかしかった。

氷上の王子が鬼だった話。

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