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その夜、誠也は私の部屋に泊まることになった。理由なんて、もういらなかった。
ただ、今は……隣にいてほしい。
それだけで、何もかも救われる気がした。
ベッドの上、布団を並べて横になる。
誠也がぽつりと呟いた。
『“光”って名前、最初に聞いた時から心がざわついてた。今日、“瑛士”って手紙に書かれてた時点で、もう確信した。俺はきっと、あの手紙の“俺と顔が似た相手”やったんやろうなって』
私は頷くことしかできなかった。
涙がにじみそうになって、目を閉じた。
その瞬間。
まぶたの裏で、まるで映像みたいに景色が流れた。
波の音。
風に揺れるスカート。
そして、誰かが私を呼ぶ声。
“光……光。待たせて、ごめん。”
“もう離れへんからな。どこにも行かへんって、誓うから”
それは、まさに誠也くんの声だった。
いや……瑛士の声だった。
「……見えた」
私が呟くと、誠也くんも同じタイミングで息を呑んだ。
『俺も、今……光が泣いてる顔が見えた。海辺で、俺に“もう行かないで”って……』
私たちは同時に起き上がり、見つめ合った。
もう、言葉はいらなかった。
記憶が、心が、すべてを語っていた。
今、私たちは“ふたり”じゃない。
前にも一度、確かに愛し合った“ふたり”が、ここにいた。
「やっと会えたね……瑛士」
私がそう言うと、誠也くんの瞳が潤んだ。
『遅なってごめんな、光……。』
そして、そっと抱きしめられた体温に、心が震えた。
そう2人は”光と瑛士”の生まれ変わりだった。