テラーノベル
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ピーンポーン。
玄関のチャイムが、朝の静けさを無理やり破った。
「翔太! 栞里ちゃんが迎えに来たわよ! 早く起きなさい!」
お母さんの声が階段を突き抜けてくる。
「はぁーい……着替えっ、着替えっ」
眠気を引きずりながら制服に袖を通す。
栞里は僕の幼馴染。
僕が遅刻しないように、毎朝こうして迎えに来てくれる。
クラスでは男子がよく栞里を見ている。なんでだろう。まぁどうでもいいか。
階段を降りようとしたとき、僕の手を掴んだ。
「翔太。手、赤い絵の具ついてるわよ。昨日描いた後洗ってないでしょ」
「だってめんどくさかったんだもん」
「はぁ……美術部に入ったのはいいけど、ちゃんと落としなさいってば」
「うーん?」
「ちゃんと話聞いてるの!?」
「聞いてまーす。」
お母さんが玄関を開けると、栞里はパッと笑顔になった。
「おはようございます! 翔太まだ準備中ですか?」
「ごめんね栞里ちゃん。翔太、少し天然だけど……これからも面倒見てあげてね」
「もちろんですよ! 翔太は私が立派な男に育てます!」
お母さんと栞里が笑ってる。何話してたんだろう。
「行ってきまーす」
靴紐を結びながら玄関を飛び出すと、お母さんの声が背中を追いかけてきた。
「行ってらっしゃい! 翔太!」
家の前では栞里が腕を組んでいた。
「翔太! また昨日も徹夜でなんかやってたんでしょ!?」
「えっ!? なんで知ってるの!?」
「その手、赤いのついてるよ」
栞里が僕の手を指差す。ああ、これか。
「さっすがー! 栞里にはなんでもお見通しだね!」
僕が笑うと栞里は一瞬だけ目をそらして、小さく呟いた。
「……はぁ、私も美術部入ってあげようかな」
「何か言った?」
「言ってません!」
学校へ着くと、昇降口でマサシが手を振っていた。
「おはよう! 栞里、翔太!」
鬼道マサシ。僕の友達第二号。
スポーツ万能、成績優秀、顔も少し良い。なんで僕なんかの友達になってくれたんだろう。
うーん。神様からの贈り物かな。
「なぁなぁ、昨日のニュース見たか!? あの連続殺人鬼のやつ!」
マサシが目を輝かせて言う。
「見てなーい」
僕が即答すると、横で栞里が頭を抱えた。
「翔太、ニュースは見た方がいいよ?」
「なんで? ニュース面白くないじゃん。見てて意味ないよ〜」
「本当に翔太は変わってるな」
マサシが笑いながら言った。
変わってる? どういう意味だろう? 僕は昨日と同じだと思うけど。
「なんか昨日と変わった?? 顔とか!? それとも身長!?」
僕が聞くと二人とも揃ってため息をついた。
「はぁ……」
僕も一応合わせて頭を下げてみた。なんでか分からないけど、こういう時は合わせた方がいい気がする。
「はぁー」
僕が真似をするとマサシは眉をひそめた。
「お前なぁ」
「早く教室行くよ!」
栞里が僕の腕を引っ張る。なんでそんなに急いでるんだろう。まぁ、いっか。
教室に入った瞬間、空気が変だった。ざわざわしてる。みんなの顔が強張ってる。まるで、誰かの葬式みたいな空気。
先生が入ってきて、教室が一瞬だけ静かになった。
「皆んな、落ち着いて聞いて欲しい。」
その声は、いつもより低かった。
「知っている人も多いと思うが、一週間前から家出をしていたと聞いたタケルが……昨日見つかった。……遺体として」
「はぁあ!? タケルが……」
マサシが机を叩きそうな勢いで立ち上がった。クラスの中が騒然とする。
「嘘……タケル君が……」
誰かが泣きそうな声で呟いた。
栞里が手を挙げた。
「先生! それって……昨日のニュースの、まだ見つかっていない犯人が……」
「それは分からない。ただ、可能性は高い……」
その言葉で、教室の空気が一気に冷えた。まるで冬が戻ってきたみたいに。
数学の授業が始まっても、誰も喋らなかった。ページをめくる音すら重い。本当にお通夜みたいだ。
タケル君のことは……正直よく分からない。でも皆んなが悲しんでいるのは分かる。そういうとき、どうしたらいいのか分からない。
それよりも、僕はよく周りから「変わっている」って言われる。治したいのに、どこが変なのか分からない。こりゃあ大変だ。
皆んなが悲しんでいるときに、僕だけ違うことを考えているのも……変なのかな。
授業が全部終わって、ここからは部活の時間。
皆んな重い顔をして教室を出ていく。その中でマサシだけが妙に速い足取りだった。
「マサシ、今日はサッカー部の活動あるよね? 部長っていつでも休んでいいの?」
僕が聞くと、マサシは振り返らずに言った。
「今日は気分が乗らねぇ。帰ってやりたいこともあるしな。」
どういうことだろう。僕も部長になればいつでも休めるのか! ……なれるかな?
「翔太」
栞里が僕の袖を引っ張った。
「皆んな悲しいの。だからサボりたくて休んでるわけじゃないのよ」
そっか。タケル君のことか。
「僕は部活行くね」
「私も美術部に入る。決めたの」
栞里が真剣な顔で言った。
そっか。でも栞里が美術部に入ると……僕、部長になれないかも。どうしようかな?
栞里が小さく呟いた。
「犯人はこの近くにいる。私が翔太を守らないと……」
「???」
「気にしないで、独り言」
ふーん。気になるなぁ。
「美術部の部室に行く前に職員室に寄るね」
「なんで?」
「顧問に僕が部長になれるようにお願いするの。あと、栞里も入部って伝えないと」
「ふふっ……そういうところが好き」
職員室の扉を開けると、先生たちが書類をまとめていた。僕は勢いよく言った。
「先生! 栞里が美術部に入りたいそうです! あと僕を部長にしてください! 栞里は優秀で絵が上手いし才能あるけど入ったばかりなので部長は無理です。なので僕を!」
先生は眼鏡を押し上げてため息をついた。
「部長って……今三年生の子がしてるでしょ? あなたは二年生」
「だってサッカー部のマサシは部長です!」
「サッカー部は三年生が引退してるからね」
「分かりました。三年生を引退させてきます。」
「うん。そういうことじゃない。」
僕は走って職員室を飛び出した。背後で先生が小さく呟く。
「はぁ……タケル君の件で大変なのに……やっぱり少し変わってるわね」
その時職員室の電話が鳴った。
ガチャ……
「はい……はい……はい。……えっ!? 一年生の山田君が家出……?」
職員室の空気が一瞬で凍った。
#現代
ぽたお
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猫塚ルイ

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コメント
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ぽたおさん、第1話読みました! 冒頭の朝の風景、なんかほのぼのしてて好きだな〜って思ってたら、タケル君の話で一気に空気変わったのがすごかったです。翔太くん、ちょっとズレてて可愛いけど、逆にそのズレが不気味にも見えてくる……。栞里ちゃんの「翔太を守らないと」も地味に怖くて気になる。最後の電話のシーンでさらに続きが気になりすぎました!次話、楽しみにしてます🌙