テラーノベル
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#サイコホラー
#ダークファンタジー
僕は廊下を駆け抜けた。
「翔太!? なんでそんなに急いでるの!?」
後ろから慌てて栞里がついてくる。
「三年生を部長の座から引きずり落とす!」
「はぁ……また変なこと言い出した。」
バァーンッ!
力いっぱい部室のドアを開けると、皆んながこっちを見た。
「部長! 僕はあなたから部長という称号を奪います!」
「そっか。うん……何言ってるの?」
部長は筆を持ったまま固まっている。でも僕は止まらない。
「僕と勝負してください。僕が勝ったらあなたは引退だ!」
「……いいよ。」
「ええーー!!??」
部員たちが一斉に叫んだ。
そして勝負の内容は『どちらが栞里を上手く描けるか』に決めた。
「なんで私が……」
栞里が困った顔をする。
「栞里はもともと可愛いから描くの簡単なんだ!」
「うっ……可愛いって……」
栞里が顔を赤くて俯いた。なんでだろう。僕はただ事実を言っただけなのに。
「じゃあ始めるよ。勝負開始!」
部長の合図で、僕は一気に描き始めた。
十分後。
「ふぅ。我ながらいい出来だ。」
「早すぎないか!?」
「見せてみろよ!」
部員たちが僕のスケッチブックを覗き込む。
「こ、これは……小学生の落書きか……。君こんなに絵下手だったけ?」
部長が眉をひそめる。
「えっ? 上手いですよ?」
僕は本気でそう思った。栞里が見せて欲しそうにこちらを見ている。僕はスケッチブックを差し出した。
「まずい! 見ない方がいい!」
部員たちが慌てて止めようとする。でも栞里はページをめくった。その後目を見開いてしばらく固まった。
「これ……私……? 目がぱっちりで……可愛い……!」
「でしょ! 僕の自信作!」
「……そうね。どっちもお馬鹿さんなのね」
部長がため息をついた。
それから数分後。
「はい。出来たよ。審査は部員たちでいい?」
部長がスケッチブックを閉じながら言った。
「もちろんです!」
僕は胸を張った。
でも部員たちは即答だった。
「部長の勝ちでしょ」
「うん。これはね……」
「流石に部長だよ」
うーん。どこが悪かったんだろう?
僕は同じ二年生のサク君に聞いてみた。
「なんで部長? 僕の絵どこが悪かった?」
サク君は困った顔で笑った。
「まぁ、しょうがないよ。部長の方が歴も長くてテクニックもあるんだからさ」
そっか! 歴か!
僕は今度は一年生のミツバちゃんに感想を聞いてみた。
「どこが悪いと思う?」
ミツバちゃんは躊躇いもなく言った。
「先輩さ……なんで美術部に居るの? 才能もないのに」
「ミツバちゃん? 言い方……」
部長が優しく止めようとする。
うーん? なんか酷いこと言われたような……。でもどこが酷いのか分からないや。
「気にしないで翔太。大丈夫だからね。」
栞里が僕の袖をそっと掴んだ。その声は少し震えていた。
部長が僕の方を向いた。
「翔太君。なんで部長になりたかったの?」
「部長になれば部活を好きに休めると思って」
「ははっ! バッカじゃないの?」
ミツバちゃんが笑った。
「前々から思ってたけど、やっぱり翔太先輩脳みそ小ちゃい!」
「あなたね! 先輩に向かって!」
栞里が怒った声を出した。
「栞里……」
僕はダメだよと目で伝えた。栞里は悔しそうに唇を噛んで引いた。
部長が優しく言った。
「そっか。でもね、それは違うよ。部長は好きに休めるわけじゃない。なんなら部長が休んだら部活が回らなくなって大変。やる事も多いし」
「そうなんだ……。じゃあ僕部長やらない」
「うん。それがいいよ。」
部長は笑ったけど、その笑顔の奥に、少しだけ疲れが見えた。
栞里はミツバちゃんにゆっくりと近づいた。その歩き方はいつもの優しい栞里じゃなかった。
「私、あなただけは絶対に許さない」
低い声だった。部室の空気が一瞬で冷えたのを感じた。
「二年生のマドンナがあんなバカのことを……もしかして……」
ミツバちゃんは何か言いかけたけど、栞里は僕の方へ振り返った。
「翔太。もう帰りましょ」
「あっ、えっ?」
部長が苦笑いした。
「うん。今日はもう解散しようか。ちょっと空気が悪いしね」
帰り道、僕はずっと気になっていたことを聞いた。
「ミツバちゃんのこと許さないって何で?」
栞里は笑顔で言った。
「翔太は気にしなくていいの!」
でもその笑顔は少しだけ固かった。何で優しい栞里があんなに怒ってたんだろう?
はぁ、気になって夜も眠れないよ。
「あっ! そうだ。マサシ大丈夫かな?」
栞里はまるで興味がないみたいに前を向いたままだった。
「マサシ落ち込んでるよね? 家に様子見に行く? てか行きたい」
栞里は少し考え込んでから言った。
「分かった。行こっか。でもタケル君の今日のことあんまり話さないであげようね」
「なんで?」
「皆んな悲しいこととか聞かれるの嫌なのよ」
そうなんだ。栞里はいつも僕にいろんなことを教えてくれる。優しい。
僕たちはマサシの家に着いた。チャイムを押すと、マサシのお母さんが出てきた。
「ごめんなさいね。マサシ今ちょっと部屋にこもって出てこないの」
栞里が丁寧に頭を下げた。
「そうなんですね。マサシに、皆んなも元気だからあなた一人で背負わないでって伝えてください」
「伝えておくわ」
僕はふと、マサシの部屋の窓を見た。カーテンの隙間から、誰かが覗いている。
マサシだ。
僕は嬉しくなって手を振った。でもマサシは怒ったような顔で僕を睨みつけ、バサっとカーテンを閉めた。
………なんか怒ってた?
◆
ある夜。
俺は家を飛び出した。親とも友達とも喧嘩をして、胸の奥がぐしゃぐしゃで、とにかく家にいたくなかった。
でも、その後の記憶が曖昧だ。誰かに呼ばれた気がする。足音が後ろからついてきた気がする。
気づいたら真っ暗なガレージみたいな場所にいた。コンクリートの匂い。冷たい床。どこがで水が落ちる音がしている。
そして目の前にそいつが立っていた。
黒いフード。アニメキャラみたいな仮面。ニュースで見た連続殺人鬼?
そいつはゆっくりと手を伸ばし、仮面を外した。
「えっ……。 あっ、ごめんなさい。」
その瞬間、俺の心臓は止まった。
そこから先の記憶はない。多分、俺は死んだんだと思う。
最後に見たのは犯人の顔と光るカッターナイフ。
コメント
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ぽたおさん、第2話読みました! 翔太くん、やっぱり「脳みそ小ちゃい」発言炸裂ですね(笑)でも悪意がなくて、だからこそミツバちゃんの毒舌や栞里の急な低音トーンが際立ってました。優しい子が怒ると震えるのが怖い…。 最後の「ある夜」の急な視点切り替えと仮面の人物、これが物語の核心なんでしょうね。マサシの怒ったような睨みも伏線っぽくて気になります。続きが待ち遠しいです!