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emshpすごく迷ってるのでとりあえずちょいちょい書き進めてたやつ登校します。
無駄に長くなっちゃったのだ。
なお🔞は無い。
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君たちは「人型乳牛牧場」なるものを知っているだろうか。
数年前から “人型乳牛計画″ なるものが実践されている日本では、乳牛を人型に改良し、メタンガスなどの排出量を減らそうと奮闘しているのだ。
人型だと人語も話せるので円滑なコミュニケーションも取れ、乳牛のストレスも最低限に抑えられるかもしれない。
で、そんな人型乳牛の新人お世話係がこの俺、ロボロである。
今日から担当する子は、人間に恐怖心を抱いている子なのだとか。
そんな子を新人に任せて大丈夫か、頭おかしいんじゃないかと思うが、口には出さない。こう見えて優秀な良い子ちゃんやからな。
その子の檻へ向かうと、そこには茶髪の人型乳牛がいた。
胸の辺りが切り取られた卑猥なレオタードを身に着けた細身の……多分、オス。
名前は――シャオロンか。
「初めまして」
軽く話しかけると、異常に怯えた。何かトラウマでもあるのだろうか。
「今日から君の担当になるロボロやで。よろしく。ちょっとお部屋掃除するから入るで」
中に入ると隅っこの方に逃げてしまった。
気にせず掃除をしていると、シャオロンはきょとんとしながら俺の手元を見ていた。
「これ気になる?」
箒を見せてあげると少しだけ興味をそそられたようだが、俺と目が合うとまた背を向けてしまった。
うーん……こりゃ難題やなぁ。
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次の日の朝、檻へ向かうと、シャオロンは寝ていた。
さすがに寝ている最中に入るのは怖いだろうから、起きるまで待ってやる。
数分後目を覚ましたらしいシャオロンは、俺を見つけると再び隅っこへ。
「お部屋掃除するで~」
中に入り掃除をする。
あ、ご飯も出してあげんと。
そんなことを考えていると、カサリ、と少し硬めのカーペットの衣擦れの音がした。
ついそちらを向くと、こちらに近づこうとしていたシャオロンは慌てて隅っこへ戻ってしまう。
難しいなぁ……。
「……シャオロン」
試しに名前を呼んでみると、少しだけ顔をこちらに向けてくれた。
しかしかわええ顔しとんなぁ……。
「さて、俺はそろそろ業務に戻るで。そこのボタン押してくれたら来るから、なんかあったらすぐ呼んでや」
ご飯を置いてあげて檻を出る。
シャオロンにばれないように様子をうかがってみると、少し遠慮がちに口をもぐもぐさせていた。
可愛い……。
その日は、シャオロンからの呼び出しは一回も無かった。
――――――――――――――――――――
次の日の朝もシャオロンに会いに行った。
その日はシャオロンはもう起きていて、俺が置いておいた櫛で髪を梳いていた。
「シャオロン、おはよ。早いな」
声をかけると、ビクゥッ!と肩を跳ねさせたシャオロンはいつもの隅っこに避難した。
まぁこんな一日二日で慣れてくれるとは思わないし、想定内っちゃ想定内。
でも彼の目の色に合わせた琥珀色の櫛を使ってくれたのはちょっと……かなり……いや、めちゃくちゃ嬉しい。
いつも通り掃除をしていると、「ろぼろ」と鈴を転がすような軽やかな声で名前を呼ばれた気がした。
「え」
シャオロンの方を見ると、少し怯えた様子だが、しっかり俺と目を合わせてくれた。
「ぃ、今の、シャオロンの声……?」
それには答えてくれなかったし、首を縦にも横にも振らなかったけれど、シャオロンは俺が檻から出るまで決して目を逸らさなかった。
――――――――――――――――――――
次の日シャオロンに会いに行くと、俺を待ちわびていたかのようにぱっと顔を明るくした。
え、マ?
まだまだ根気強くシャオロンと向き合って少しずつ……みたいなビジョン立ててたんやが。
「ろぼろ、ろぼろ」
幼い子供のような拙い喋り方で俺の名前を呼ぶシャオロンは、思わず顔を赤らめてしまうほど可愛らしかった。
そして俺に抱き着く。
今まで座ってたからわからんかったけど俺より背高かったんやな……。
「シャオロン、怖ないん?」
「ろぼろはこぁくない!やさしい!」
琥珀色の瞳をとろんとさせこの世で一番愛しいものを見るかのように俺を見つめてくる。
なん、えぇ……()
いやでも可愛いからええか……。
「じゃあ、シャオロンの好きな物教えてや。俺が持ってきてあげる」
「すきな、もの?」
ちょっと上を向いて考えていたシャオロンは、俺の腕に胸を押し付けて囁いた。
「……なんにもいらない。ろぼろといっしょにいたぃ……」
「可愛い」
「へっ!?///」
間髪入れず可愛いと言ってしまった。失態失態。
でも本当に可愛いのだからしょうがない。
甘栗色の柔らかな髪。くりっくりの大きな琥珀色の目。唇は薄いのに肉感的で、細い身体はひょろひょろとした印象を受けるため簡単に押し倒せそうだ。
どこを見ても男好きのするパーツしか無くて、目のやり場に困る。
「わかった、じゃあここにいるわ。シャオロンの好きなものは俺ってことやろ?」
「ぅ、うん……///」
かわいーこの子……。
誘拐したい……。
あかん、ショッピくんみたいになってきとるわ。俺はあんな変態じゃない。多分。
「さて、そろそろ搾乳の時間なわけやけど……」
「……おれ、あれきらい。いたいもん」
「でもなぁ~……」
そこでちょっと考える。
突然だが俺は結構ここの所長に気に入られているのである。
俺の頼みなら多少無茶でも聞き入れてくれるくらいには。
ならシャオロンの今日の搾乳を無しにすることも不可能じゃないんちゃうか……?
「じゃあちょっと電話するから、良い子にしててな」
こくこくと幼子のように首を振るシャオロンの頭を撫で、檻を出る。
所長の部屋の固定電話に連絡すると、1コールですぐに出てきた。
「……あ、もしもし。ロボロです」
『ロボロくん?どうしたんだい?』
「僕の担当の乳牛でシャオロンっているじゃないですか。その子が今日体調悪いみたいで……搾乳を無しにしていただくことって可能でしょうか?」
『あぁ……なるほど。しかしなぁ……』
「何か問題が?」
『あの子はこの牧場で一番よくミルクが出る子でねぇ……。休んでしまうと少し仕事が滞ってしまうんだ』
「そう、ですか……。いやしかし、体調の悪い時に搾乳しても美味しくないかと思うのですが」
『ふむ、言われてみれば……。仕方ない、君の顔を立てて今日は休ませてあげようか』
「ぁ、ありがとうございます!」
『頑張るんだよ、ロボロくん』
ぷつっと音が鳴り電話が切れる。
あの人なんだかんだ優しいんよな~。良い子ちゃんやってて良かった。
「シャオロン、休みとれたで」
「ほんと!?ろぼろもずっとここいる!?」
「おるよ~」
「やったぁ……!」
キラキラと目を輝かせるシャオロンの頭を撫でてやる。
すり、と擦り寄ってくるのは本当に反則だと思うのだがどうだろうか。
「あ、ごめんシャオロン。俺ちょっと仕事あって……」
「ぇ……いっしょにいてくれるって……」
「30分で戻ってくるから!」
「……わか、った。かえってこなかったらおこる、から、ね……?」
「うん、ありがとう」
檻を出てワイシャツとズボンに着替え、事務室に向かう。
そこにはボロボロになって机に突っ伏しているショッピくんがいた。
「どうしたんショッピくん……」
「……俺の担当、チーノっていう乳牛なんすけど……性欲が半端なくて……」
「うん」
「朝っぱらから犯された……」
「草」
チーノには俺も一回会ったことがある。
かなりコミュ力が高いみたいで、ずーっとニコニコしながら話しかけてきた。
まぁ完全に作り笑いやったけど。
そんなことを考えながらパソコンを開く。
担当乳牛の状態を記録するためだ。
「ロボロさんの担当ってあれでしょ?シャオロン……でしたっけ?」
「せやね」
「噂によるとあの子、警戒心は強いけど大好きになった人には依存しまくるって」
「……、」
「気を付けた方が良いっすよ。俺の同僚にもあの子に依存されまくって殺されかけた奴いますし」
そういうことは先に言ってくれショッピ……!
多分大好きになられたよな……?
……いや、でも。
あいつ可愛いし、全然アリよな。
「……聞いてます?」
「うん……聞いてる……」
「聞いてない時の返事なんよなぁ」
そんなショッピのぼやきはスルーして事務作業に戻る。
あ、そういや身長とか測ってへんかったな。後で測ったろ。
「あー、もう30分かぁ。年を取ると時間の流れが早く感じますねぇ、なんちゃって」
「……え?」
「え?あぁ、正確には……28分ですけど」
「!?」
「え、ちょ、ロボロさーん!?仕事は!?」
そんな声は無視して、走ってシャオロンの檻へと向かう。
無駄に広いねん、所長乳牛飼育しすぎやろ……。
「シャオロン?」
「……ろぼろおそい」
「え……ご、ごめん」
「32びょう、おくれた」
「ごめん……?」
琥珀色の櫛をいじって遊んでいたシャオロンは、こっちも見ずにそう言う。
細かすぎひん?数えてたん?
やべーこいつ……。
「なんで、……みんなやくそく、まもってくれないのぉ……?」
ゆらりと振り向いたシャオロンの目は虚ろだった。
深い悲しみと怒り、そして重すぎる愛情の色を綯い交ぜにした瞳で俺を見つめる。
「……やくそくまもってくれないろぼろなんか、しんじゃえ」
そう呟いたシャオロンは、俺を押し倒して首を絞め始める。
「ッ!?」
「すき、だいすき、ろぼろすきぃ……」
恍惚とした表情で俺の首を絞めるシャオロン。
健気に俺と一緒にいたい、とねだったシャオロンとはまるで別人で。
「しゃ、ろっ……」
「ロボロくん!」
突然所長が現れ、シャオロンを羽交い絞めにする。
後ろから走ってきたショッピくんはどこかに電話した後、続いて檻の中に入っていく。
「げほっ……ごほっ」
「ロボロさん、大丈夫ですか……?」
「やだ!はなして!ろぼろとずっといっしょにいるのぉ!」
喉を押さえて咳き込む俺の背中をショッピくんが摩ってくれる。
シャオロンの方を見ると、所長に床に押さえつけられて泣いていた。
「ろぼろ!ろぼろぉ!たすけてよぉ……!」
ぽろぽろと涙を流すシャオロンを見て困惑している俺に、ショッピくんが言った。
「今、保健所に連絡しました。速やかに殺処分してくれるそうです」
「え」
「今まではここの売り上げに貢献してくれているということで殺処分はしなかったが……ここまで問題を犯すとなればもうだめだ。ありがとうショッピくん」
ショッピくんは「一安心ですね」と笑いかけてくる。
殺処分。
つまり、シャオロンは殺されるということ。
もう、会えないということ。
「嫌です!」
思わず叫んでしまっていた。
所長もショッピくんも、シャオロンでさえ驚いた顔をしている。
「シャオロンは俺が貰います。殺処分はやめてください!」
「……だめだ、ロボロくんの頼みでも聞き入れることはできない」
「ちゃんと俺が教育します。乳牛じゃなくて、普通の人間にします。だからどうか……!」
「……俺も反対です。シャオロンとロボロさんを2人きりにしたらどうなるか」
それからは、記憶が無い。
気づけば俺は、シャオロンを姫抱きして自分の家にいた。
手は真っ赤で、かすかに鉄のような香りがする。
「……ろぼろ」
俺を見上げて笑っているシャオロンを見て、連れて帰ることができたんだと安堵した。
「シャオロン、ずっと一緒にいてくれる?」
「うん!ずっといっしょにいるよ!」
シャオロンをソファに座らせ、俺も隣に座る。
抱き着いてきたシャオロンを優しく撫でた。
ここまで書いて5084文字。
俺にしては長い……ウム、よくやった自分。
コメント
1件
愛してるッッもう、好きッ♡ タイトルからして面白いのは天才すぎる そして内容は神すぎて失神レベルっすわ