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「僕の事、軽蔑した?嫌いになった?」


レナードに組み敷かれた状態のヴィオラは、何も言わずただレナードを見ている。


「でも、僕はそれでも構わないんだ。君に嫌われても、僕は君を愛している。だから、ヴィオラ。僕は君を絶対に離さない。逃げようとしても、無駄だよ。君には帰る場所もないし、君は僕の側にいるしか、生きる術はないんだよ」









城に来てから、ひと月経った。ヴィオラにとってこのひと月は、奇妙な日々だった。


レナードは、ロミルダという婚約者がいるにも関わらず、勝手にヴィオラの事を婚約者と公言し、無論婚約者として扱ってくる。ロミルダの事は、相変わらずいない事にしているのか、完全無視している状態だ。


「ちょっと、宜しいかしら」


ヴィオラが1人中庭で、物思いにふけていた時、不意に声を掛けられた。後ろを振り返ると、正に今考えていた、ロミルダだった。


「ロミルダ様……」


実はロミルダと、2人きりになるのはこれが初めてだ。何だか嫌な感じがして、ヴィオラは後ずさる。ロミルダからしたら自分は、いきなり現れた女が婚約者と名乗り、レナードを奪おうとする悪の存在でしかないだろう。別にヴィオラ自身が名乗るというよりは、レナードが勝手に吹聴しているだけなのだが。


「ヴィオラさんって、仰いましたわよね。貴女、一体どういうおつもりですの?レナード様は、私の婚約者です。それをよくもまあ、いけしゃあしゃあと、自分が婚約者ですって?」


何度も言うが、別に自分で「私はレナード様の婚約者です」などと言っている訳ではない。でも、否定してない時点で同じだと言われたら何も言えない。

それにしても、いけしゃあしゃあって……聞き慣れない表現にヴィオラは瞬きをした。


「まったく、図々しいにも程がありますわ。大体、こんな陳腐な娘の一体どこが宜しいのかしら。私には、理解し難いですわ。レナード様も、悪趣味です事」


陳腐な娘、悪趣味……酷い言われようだ。だが、ヴィオラにだって言い分はある。確かに、レナードから自分で言うのも何だが、溺愛されていると思う。でもそれは、ヴィオラが望んでいる訳ではない。


真実を知った今は、レナードと結婚したいとは思えないし、正直好きな気持ちもなくなってしまった。

多分、記憶喪失のままのヴィオラだったら、レナードに心酔して無論結婚をしたいと思っている筈。そして今頃はロミルダに対しても対抗心を燃やしていた事だろう。


本当は、城を出て静かに平穏に暮らしたい。そう考えて何度か城から脱走しようと考えた。だが、常に監視されているらしく、直ぐに捕まる。それに、以前レナードから言われた通り、城を出て行った所で自分には居場所がない。衝動的に脱走はするが、後から改めて、現実を思い出す……。


デラにも会いたい。レナードはデラを侍女として側に置くことを許してはくれなかった。今頃どうしているのか。


パチンッ。


鈍い音と共に、頬に痛みを感じた。数秒してから、ロミルダに頬を叩かれたのだと分かった。


「っ……」


「貴女、本当に失礼な方ですわね。この私が話しているにも関わらず、なんの返事もしないなんて……レナード様だって、そうですわ」


ロミルダは、黙り込むヴィオラに無視をされたと思ったようだ。ずっとレナードから無視をされていて、大分気が立っているように見える。


ヴィオラは、叩かれた頬に手を当てる。かなり勢いよく叩かれたらしく、少し腫れている気がする……。


「ロミルダ様、申し訳」


「ヴィオラ、こんな所にいたの?探したんだよ」


ヴィオラが言葉を言い終える前に、こちらに向かって歩いてくるレナードが見えた。


「ヴィオラどうしたの⁈その頬は」


「へ、いえ……その、何でもありません」


ヴィオラは誤魔化すように笑って見せた。


「ふ〜ん。まあ、いいよ。戻ろう」


レナードは少し怒った様子でヴィオラを抱き上げると、そのまま歩き出した。


「あ……レナード様っ」


その際に、ロミルダはレナードを呼び止めるが、相変わらず無視をされる。だが、珍しく

レナードは振り返ると、ロミルダを一瞥した。その顔は、恐ろしい程冷たかった。


それから半月後……ロミルダは原因不明の病で、亡くなった。





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