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家に着くと、先に降りた彼が、


「私の手を取って」


と、車外から片手を差し伸べた。


「あ、ありがとうございます……」


手を添え座席から降り立つと、ハイヤーが走り去るのと同時に手首がぐっと引かれ、そのまま胸に倒れ込むように抱き寄せられた。


「……鈴、キスをしても?」


邸宅の太い門柱の陰で見つめ合うと、彼にそう尋ねられて、


「ええ、はい……」と、小さく頷いた。


片手で顎が持ち上げられ、性急なキスが唇を塞ぐ。


「……あっ、ん……、待って、深いキスは……」


唇を薄く割って挿し入れられる舌に、僅かに身をよじる。


「うん、どうして……?」言葉の合間にも、啄むようなキスが幾度となく繰り返される。


「……恥ずかしい、だって……」


まだ外だからと、抱かれている胸を少しだけ両手で押し返すと、


「待ち切れないんだ……君を、私のものにしたくて……」


背中に回された腕で、広い胸板にきつく抱きしめられた──。


「んん……」


夜遅い住宅街には人通りもなかったけれど、隠せない照れに熱くなっていた頬に、ふいにぽたっと冷たい雫が当たった。


「あっ、雨……」


「雨だな。濡れないよう走ろうか」


彼が私の手を引いて駆け出し、玄関まで連れ立って走った。


ドアを開けて中へ入ると、走ったせいでハァハァと小さく息が上がっていた。言葉もなく息を整えていると、どちらからともなく顔が近づき、抑えられない思いで互いに唇を求め合った。


キスで気持ちが高ぶって、「……好き」と、微かな吐息混じりの声が漏れる。


「ああ、私も好きだよ……」


答えた彼が、ふいに私の身体を横抱きに抱え上げた──。


ダンディー・ダーリン「年上の彼と、甘い恋を夢見て」

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