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一様過去編です。 クルルやサーガラもどんどん出ます((登場人物多いかも?
はぁ…はぁ…
一頭の竜が無我夢中で森を駆け回っていた。
赤紫色の翼には木の枝が刺さり、血が滲んでいる。
「何処行ったんだよ…母さん!」
バタ…
竜は、その場に砂で出来た城のように崩れ落ちた。
この竜の居る森には、鴉(からす)の声が響き渡っていた。
「……仕方のないやつだ。」
後ろから赤紫色の、倒れている竜に似た
竜がそう呟いた。この竜の名は
グーロ・グリン。地獄の医者だ。
グーロは竜を抱えると
唇を噛み締めて森の先を睨みながら
灰色に染まった魔界の森を出ていった。
グーロは古びた小屋に入っていくと
竜の翼にガーゼを当て、手当していた。
「う…うぅん。」
ようやく竜が起き上がると
グーロは深刻そうな顔で竜に言った。
「グル。お前の母親は…連れ去られてしまった。」
「私にも止めることは出来まい。
………もう、片手が動かないんだ。」
震える左手を右手で握りしめながら
グーロが言うと、グルが目を擦った。
「いや、大丈夫。父さんは休んでて。
俺もちょっと考えるからさ。」
「母さん取り返さないと。」
グルは本棚から地図を取り出し
魔界の街の地図を見つめていた。
「レプリトスカって街なのか…リーズ国の隣だな。」
リーズ国とは、ゴブリンの住まう小さな国で
五大魔国でも最小。権力もない国だ。
理由としては、ある少年と竜が来たことが
原因らしい。だが、その詳細を知るものはいない。
「もはやリーズ国は潰れている…。拠点にするか?」
グーロがそう言うと、グルは頷いた。
「うん。俺も竜だし攻撃はされないと思う。」
「だな。竜なんかに攻撃しないだろう。」
グーロは頷くと、グルの体と同じ程大きい翼を広げた。
「今すぐリーズ国へ行こう。俺もだが、待ちきれん。」
「愛する妻を連れ去った魔王は許せない。」
「……分かった。」
グルも翼を広げ、小屋から飛んでいった。
灰色の空から、だんだん濃い青色の空に変わっていく。
それはスッキリとした空色ではなく
どこか恐ろしさを感じた。
この話は、グルがクルルに出会う前の話であり
また、医者になるキッカケの物語である。