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都道府拳

9 - 第9話 泥と風と

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2025年07月05日

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空を舞い、風に乗って戦った男がいた。

その魂は、静寂の氷に沈み、今、地上へと堕ちてゆく。

誰にも見られず、誰にも気づかれず、

ただ、終わるだけ――

……そう思っていた。

霧が深く立ち込める森の中、空から雷のような閃光が落ち、激しい衝撃音。

その地点に、ひとり駆けつける影がある。

泥だらけのスニーカー、ボロボロの学ラン。肩で息をしながら、煙の中に突っ込む。

埼玉:「……何だ今の光!? 落雷じゃねぇ……!!」

木々をかき分けて進むと、そこには――大の字に倒れた沖縄の姿

衣装は破れ、三線は砕け、その顔は血と灰で汚れている。

埼玉:「……お、おい……ッ生きてんのか……!? 聞こえるか!!」

沖縄の手が、わずかに動く。だが声は出ない。埼玉は迷いなく、沖縄を背負う。

埼玉 :「なんだよ……この状態で空から落ちてきたってのかよ……マジで、バケモンかよお前……――でも……」

歩きながら、ふっと笑う。

埼玉 : 「……バカなやつほど、放っとけねぇんだよ……」

霧の中、沖縄の意識が薄れては戻る。

夢うつつの中で、埼玉の背中の温度を感じてつぶやく。

沖縄 : 「……おれは……負けたんか……?風が……止まった……さぁ……」

埼玉は振り返らない。

埼玉:「風が止まった? アホ言え……ちゃんとオレの背中に届いてるわ。風は止まってねぇ。今はちょっと、迷子なだけだ。」

埼玉は、かつて千葉と使っていた旧拠点へ沖縄を運び込む。ボロ屋。電気も水道もない。

だが、火を焚き、包帯を巻き、埼玉は一人で手当てをする。

埼玉 : 「お前がどこで戦ってきたかなんざ、知らねぇ。けど――拾うしかねぇだろ。俺は、お前が一番カッケぇと思ってんだ。」

三線の破片が横に置かれる。

沖縄の目尻に、ひとすじ涙が流れる。

沖縄:「……なんくる……ないさ……」

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