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暖かい春の日でした。
一目見た瞬間彼は私の運命の人だと悟りました。
その日から彼を目で追うようになりました。
隣の組の彼ということしか知りません。
友人に相談する間もなく夏休みに入りました。
私は吹奏楽部でいつもトランペットを吹いています。
今日も裏庭で自主練習をしていました。
裏庭は校舎が影になっており日が当たらないのでとても涼しいです。
冷房のついていない音楽室よりも快適です。
快く吹いている時でした。
「凄い綺麗な音色だね」
どこからともなく現れた彼に声をかけられました。
私はしどろもどろありがとうと返しました。
彼のことを何も知らなかったけれど初めて野球部だという事が分かりました。
帽子を取り微笑んだ彼は「またな!」とボールを持って走って行きました。
彼は次の日もその次の日も私の元へやって来ました。
私の音色が綺麗だと褒めてくれます。
彼ともっと早く出会いたかったと悔やんでしまいます。
彼とあと一年しかいられません。
夏風と共に辺りにトランペットの音色が響きます。
若緑が木々に生い茂っていて彼のようだと思い自然と口角が上がってしまいます。
「今日も吹いてんの!」
グラウンド側から彼が顔を覗かせました。
彼のクシャッという笑い方が好きです。
「そういえばさ!まだ名前聞いてなかったよね、俺は吉野 颯太。今更だけどよろしく!」
君は?という笑顔が向けられます。
「私は、百瀬 鈴です。よろしくお願いします。」
「鈴か、そっか鈴、よろしくな!鈴!」
「それじゃあ!」
彼はそう言い初日と違い何も持たずグラウンドへ戻って行きます。
「またね!颯太くん!」
男の子の名前を呼ぶなんて初めてでドキドキしました。
顔が熱くなるのが分かります。
彼は一度立ち止まり目を大きく見開いて我に返ったかのように私に手を振り走って行きました。
誰かを好きになったことなんて無かったから少しだけ不安でした。
けれど恋をすると世界が輝いて見えるんです。
負の感情なんて元から無かったかのように一日、一日が楽しいんです。
夜、早く明日にならないかと楽しみなんです。
私の人生に光を照らしてくれました。