コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
花火が始まってるとは言っても屋台の方は混んでいて前を歩くのも大変だった
「 茉白 , 離れないようにね 」
そう言い彼は私の手を引く , 頬が赤く染まる
暑さも相まって火照っているのかもしれない
「 なんかしたいことある? 」
「 そうだなぁ , あ , やりたい ! 」
私が水風船を指差す 彼は少し微笑みながら
いいよやろっか , と言ってくれた
「 …… あ 」
途中で破れてしまって一個も取ることが出来なかった 折角なら取りたかったな , と少ししょんぼりしていると
「 すいません , もう一回いいですか 」
屋台の人に100円玉を差し出しながら彼はそう言う .
「 え , いいよ申し訳ないし 」
申し訳なさそうに私が言えば彼は微笑みながら
「 いいんだよ俺がしたいんだから 」
そう言って私の分の水風船を取って渡してくれた
「 ありがとう 」
嬉しくて嬉しくてどうにかしてしまいそうだった
彼の優しさに触れるたびに好きになっていく .
君の彼女になれたら , なんて高望みばかりしてしまう .
君も同じことを思っててくれたらいいのにな .
「 … 茉白 , 」
「 うん?なーに? 」
突然彼に名前を呼ばれ少し驚きつつも返事をする
彼はこちらを見つめながらただ黙っていた
何か言いたげな表情をしているのに2人の沈黙は続いていた
「 … ごめん , なんでもない 」
「 そう?ならいいけど 」
何が言いたかったんだろ , 話してくれたって良かったのに .
2024年9月 始業式
楽しかった夏休みも終わって再び学校生活が始まる
一学期のように楽しい時間になるのかな , なんて淡い期待をしていた
でもそれは間違いだった .
「 葉月? 用事って一体どーしたの? 」
その日は急に葉月から呼び出されていて近くのカフェに来ていたところだった .
「 えっと … 」
いつもとは違い妙に真剣な顔をしている葉月
なにか大事なことを言うんだ , そんな事が葉月から伝わってきた .
「 実はね , 私奏汰のことが好きなの 」
「 え , … 」
その瞬間時間が止まったかのように私は黙ってしまった . それでも葉月は話し続けた
「 それでね , やっぱり好きならちゃんとアピールしたくって , ほら茉白って奏汰と仲いいじゃん . 親友だし応援して欲しいなって ! 」
「 ………… 」
どうすればいいのか分からなくて私はただ下を向いて黙っていた . 前を向けないのはただ分からないだけじゃなく私の目に涙が溜まっていたからなのかもしれない .
「 … 応援 , するよ 」
今までに無いほどか細い声でそう言えば葉月は嬉しそうに笑い
「 ほんと?!嬉しい!ありがとう!! 」
「 うん , 」
必死に作り笑いをする . 今すぐにでも逃げ出したかった .
「 ごめん , 用事思い出しちゃった 帰るね . 」
私は逃げるようにその場から離れ一人下を向きながら家へ向かう . 大粒の涙が溢れて 前がよく見えない . こんなはずじゃなかった .
「 … 最低だな , 私 ほんの一瞬葉月と親友なんかじゃなかったら良かったのに , そうしたら私が応援することなんてなかったのに , なんて思ってしまった . 」
私の方が先に奏汰を好きだった , 短かった髪も今では鎖骨まで伸びている 最初は葉月だって私を応援してくれていた . それなのに …
嫌なことばかり考えてしまう自分に嫌気が差して涙は止まることを知らなかった .