テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ゆうな
232
178
41
#みじかめです、!
夢仁羽
104
Side:らいと
昔、俺を助けてくれた警官に憧れて入った警察。
ネオンがギラギラと輝く底で、深い闇がはびこるこの街では、俺たちだけの力ではどうしようもないことが日々起きている。
今は夜の見回り中だ。ビルの建物の陰には、酔いつぶれた人たちが寝転んでいる。
「おーい。大丈夫か?」
声をかけながら、うずくまる男の肩を軽く揺らす。
「まだまだぁ〜……」
男は気だるげに手を振った。すかさず隣から莉犬くんが覗き込む。
「お家、わかるかな?」
「うーん……」
「免許証とか持ってる?」
「あるよぉ〜」
「お迎えしてくれる人、いる?」
「かみさんが……起きてれば、ね」
「じゃあ、電話掛けてくれるかな?」
莉犬くんの慣れた誘導に、酔っ払いは大人しくスマホを取り出した。
ーーー
「ふぅ、迎えに来てくれてよかったね」
奥さんが渋々迎えに来てくれて、無事に帰っていくのを見送った後、莉犬くんが小さく息を吐いた。
その直後、ふと遠くの街頭の向こう、角を曲がっていく鮮やかな赤い髪が視界をかすめた。
「りぬくん。ロゼみたいな人見つけました」
「えっ。すぐに案内して!」
俺の言葉に、莉犬くんの表情が引き締まる。二人で小走りにその後を追った。
路地の角を曲がった瞬間、そいつもこちらの気配を察して後ろを振り返った。少年はハッと目を見開き、弾かれたように逃げていく。
「おーい! そこの赤髪のやつ、止まれ!」
呼びかけも虚しく、少年は止まるわけもなくずんずん進んでいく。
必死に追いかけたものの、元々距離が空いていたこともあって、複雑に入り組んだ路地の先であっさりと見失ってしまった。
「あー、だめだったかぁ……」
莉犬くんが肩を落として悔しそうにつぶやく。
「まだ近くにいるかもしれんで、もう少し探しますか?」
「そうだね〜……。あっ、ゆうなちゃん!」
俺の提案に頷いた莉犬くんが、自販機の明かりの下に佇む少女を見つけて声を上げた。
「げっ……警官の方々ではないですか」
少女――ゆうなは、露骨に嫌そうな顔を浮かべた。
「こんな時間に子供が一人で歩いてたら、怖い大人に攫われちゃうよ〜?」
「あたしはもう大人だし」
「未成年はまだ子供なんだからね」
莉犬くんは誰とでも話すのが本当に上手い。一度話しただけの人でも、ちゃんと名前を覚えている。
「これから友達と会うから大丈夫なの」
「その友達も未成年なら……」
「友達の親も来るし、大丈夫!」
「ほんとかな〜? ……あっ、そうだ。ロゼって子、知らないかな?」
莉犬くんが不意に核心を突く名前を出した。
「えっ……。……知らないけど」
分かりやすく動揺した。声が少し震えている。確実に知っている証拠だ。
「そっか〜。ゆうなちゃんは色んな人たちと仲がいいから、知ってるかもと思ってさ」
「……知ってたら、どうするの」
「今、この近くに危ない人がいて、ロゼくんが一緒にいる可能性があるんだよね。だから、守るために探してるの」
「ふーん……」
ゆうなちゃんは視線を落とし、ポケットからスマホを取り出すと、何かを操作しようと画面を叩き始めた。その手元をじっと盗み見る。
「なにしとーと?」
「わぁ、博多弁だ。あたしの友達にもいないや。……時間に遅れそうだから、友達に報告してるだけだよ」
「ロゼに連絡しとるわけじゃなくて?」
「……お兄さん、ほんと鋭いね。嫌になっちゃう」
観念したように小さくため息をついた。
「そりゃどーも」
「ロゼのことは知ってるよ。でも、仲間を売るマネはしたくない」
「そいつに、本当に危険が迫っとってもか?」
「……ロゼは自滅するような馬鹿じゃない」
「自滅はせんかもしれんけど、他人が無理やり壊しにくることだってある。それは、自分等がいちばん分かっとるやろ」
言葉を詰まらせてしまう。
「……っ」
「俺たちはさ、捕まえたいわけじゃなくて、守りたいの。ゆうなちゃんも、ロゼくんも」
莉犬くんがそっと諭すように言葉を重ねる。
「……もう時間だから! じゃあね!」
「待ち……」
引き留めようと俺が手を伸ばしたが、莉犬くんが手でそれを優しく制した。深追いしすぎない方がいいという判断だろう。
「ゆうなちゃん、気をつけるんだよ!」
莉犬くんが去りゆく背中に声を張り上げると、振り返りもせず、ボソッと小さな、だけど確かな声がこちらに聞こえてきた。
「……ロゼ、よく裏通り沿いのネカフェにいるよ」
ーーー
Side:ゆうな
やらかした……。
ロゼの居場所、教えちゃった。
頭がまだ、あんまり回ってない。
でも、「裏通り」はアーシたちの呼び名だから、警官なんかにわかるわけないよね。
少し早くなる鼓動を落ち着かせながら、スマホを開いてロゼにメッセージを送る。
既読 22:56 警官がロゼを探してる
ロゼ さっき見つかったけど逃げれた
既読 23:02 ごめん…ネカフェのこと言っちゃった
ロゼ 大丈夫だよ報告ありがと
ロゼは優しいから、こんなアーシのことでも絶対に見捨てない。
……そんな優しさが、たまに辛い。
コメント
4件
ロゼくん優しいし、 りいぬくんもみんなの名前おぼえれるのすごすぎる‼️
莉犬くんの「守りたい」っていう言葉、すごく沁みましたね。ゆうなちゃんが最後にぽろっと居場所を教えてしまうところ、彼女なりの葛藤とロゼへの信頼が伝わってきて胸が苦しかったです。二人の警官の温度感の違いも丁寧で、また次が気になります🌷