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#異世界転生
夏休みに入って、数日が経った。
照りつける日差し。
外からは、蝉の声が絶え間なく響いている。
⸻
「お邪魔しまーす!」
玄関の扉が開き、元気な声が部屋に響いた。
「いらっしゃい」
こはるが出迎える。
「うわ、涼し〜!!」
部屋に入った瞬間、渚が声を上げた。
「生き返る……」
「外やばすぎるって……」
紅葉も軽く息を吐く。
⸻
部屋に入るや否や、テーブルもたれかかる渚
「で?宿題やるんじゃなかったの?」
紅葉が渚に目を向ける。
「やるよ!やるけどさぁ!」
「まずはクールダウンしなきゃでしょ……」
「はいはい」
紅葉は笑いながらノートを取り出した。
⸻
結局、ノートは開かれたまま。
ペンは転がり、会話だけが進んでいく。
「こはる、一人暮らしなんだよね?」
渚が部屋を見回しながら言う。
「はい、そうです」
「いいなぁ〜。自由じゃん」
「……自由、ですか?」
少しだけ首を傾げる。
「最初は、少しだけ寂しかったですけど……」
ふと、思い出す
⸻
雪斗に会えて嬉しかったのも束の間
思うように会えずに
ただ時間だけが過ぎていく日々
寒い部屋に1人きり
学校が始まっても
朝起きて
家を出て
帰ってきて
また1人
でも今は……
雪斗とも仲良くなれた。
もちろん陽向とも。
そして……
目の前には渚や紅葉。
「今は、みなさんがいるので、全然寂しく無いですよ♪」
「なにそれ〜!」
渚が勢いよく抱きついた。
「かわいすぎ!!」
「え、あ、ちょっと……」
「こはるはほんといい子〜!」
「ちょっと渚さん、暑いです……」
「あ、ごめん!」
ぱっと離れる。
「……あと少しだったのに」
紅葉がスマホを構えていた。
「何してるの?」
「いや、浮気現場の証拠の写真を撮ろうかと」
「ほぅ……それならもう一回やろうか!」
再び渚がこはるに抱きつく。
「やめてくださいー!」
部屋に3人の笑い声が響き渡った。
⸻
数時間後。
サラサラ……
部屋にはノートに文字を書く音。
「……そういえばさ」
ひと段落着いたのか、渚が口を開いた。
「この前の祭りの時、みんなはぐれちゃったじゃん?」
紅葉がピクっと肩を振るわせる。
「あの日、ちょっと気になったことがあるんだよねー」
そう言いながら紅葉の方を見る。
「ナンノコトカナァー?」
視線を逸らす紅葉
「紅葉から、【こはるといる】ってメッセージがきたんだけど〜…こはるは?」
「え?私には、【渚さんたちと一緒にいる】って連絡がきましたよ……?」
「やっぱり!!」
ちょっと気まずそうに、視線が宙をさまよっている。
「いやぁ……それは何と言いますか………」
声が少し震えていた。
「紅葉、あのね?」
「…………。」
「私は、陽向と付き合ってるよ?」
「うん。知ってる。」
「修学旅行の時も、紅葉が気を遣ってくれたの…知ってるよ?」
「……………」
「今回もさ、多分そうやって気を遣ってくれたんだろうけど………」
渚が続ける。
「私は紅葉のことも大好きなんだよ。」
「…………」
「だからさ、あんまり変な気を使わないで?紅葉ともいっぱい思い出作りたいから!」
静寂に包まれた。
「そんな恥ずかしいこと……よく言えるね……」
「なっ!人が真面目に!!」
「でも、ありがと。」
そう言いながら、2人は恥ずかしそうに笑っていた。
全部は分からないけど……
その暖かい雰囲気に……
こはるも自然と笑顔になっていた。
「よし、じゃ〜早速気を遣わないで聞くけど…」
「ん?」
「2人とも、実際修学旅行と花火の時はどうだったの?」
「へ?」
「はい?」
気の抜けた声が出た2人。
「ほら、気を遣った側としては、その結果が気になるし」
「気を遣わないで話してくれていいんだよ?」
まずは近くにいた渚を標的にし、詰め寄ってく紅葉。
「わ!わかった!言うから!!ちょっと一旦落ち着いて!!」
⸻
「とまぁ、こんな感じでして…」
「普通に、よかったです……。」
これ以上ないほど渚の顔が赤くなっている。
「ふーん」
「その顔やめて!」
「渚ってさ」
「ん?」
「ツンデレだよね」
「違うし!」
「で?」
紅葉が視線をこはるに向ける。
「こはるは?」
細めた目でこはるを見る紅葉。
「どうだった?」
「わ、わ、私ですか!?」
「私も話したんだ……こはるも言うんだ……」
恥ずかしさのあまり涙目の渚もこはるをじっと見つめる。
「えっと……その………」
何を話していいのか分からずもじもじするこはる。
「まずは、修学旅行ではどうだった?」
紅葉が優しく問う。
「……まずは、着物試着体験に行きました。」
「それから、手を繋いで歩いて……」
「え?それもう付き合ってるんじゃないの?」
「違いますよ!」
こはるが慌てて否定する。
「ほら、人が多かったじゃないですか?」
「確かにいっぱいだったね」
「人とぶつかったりしてよろけてしまって。危ないからって手を繋いでくれたんです。」
「あ〜………」
その話を聞いた2人。
小動物(こはる)が危ないからとリードをひく飼い主(雪斗)が思い浮かんだ。
「まぁ確かに……(こはる小動物っぽいし)」
「それじゃ仕方ないね……(放し飼いはあぶないし)」
「??」
急に2人が大人しくなり不思議がるこはるだが、そのまま話を続けた。
「それから⸻」
⸻
「……という感じで、花火を見て終わった感じです。」
さすがに届かなかった言葉のことまでは話さなかったが、花火の日までを話終えたこはる。
渚同様に顔が赤くなっているであろうことが自分でもわかった。
「清純だねぇ……」
「渚とは大違いだね」
「え?」
「え?」
「………」
「まぁ、冗談はさておき、会いたいんじゃない?」
「え?」
「ほらこはる、正直になりなよ♡」
からかうように言う渚。
「渚も会いたいんでしょ?」
「おおお思ってないよ!?」
クスリと笑うこはる
再度こはるをちらっと見る紅葉。
「……話したいんでしょ?」
「……はい」
小さく頷くこはる。
(……なんだこの可愛い生き物)
「じゃあ決まりだね。はい渚」
「ちょ、待って!心の準備が!」
「いらないでしょ。ほら、連絡」
しぶしぶスマホを取り出す渚。
「……送った」
「なんて?」
「今何してるーって」
ブーッ
「……あ、返事きた。」
「雪斗の家にいるって」
「へぇ」
「ちょうどいいじゃん」
紅葉はニヤリと笑った。
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