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#異世界転生
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ピンポーン
「はーい」
雪斗が扉を開ける。
「……ん?」
「なんでお前らいるの?」
「会いに来た」
紅葉が即答する。
「……雑すぎない?」
「今更でしょ」
「お邪魔しまーす!」
そんな2人の横をすり抜け、渚がそのまま押し入る。
「勝手に入るなよ……」
「いいじゃんいいじゃん!減るもんじゃないし!」
⸻
「はいはい、いらっしゃい」
奥から声がした。
「あ、おばさんこんにちはー」
「あら渚ちゃんこんにちは。今日は賑やかねぇ」
エプロン姿の母親が顔を出す。
「急に押しかけちゃってすみません」
「いいのいいの、若い子は元気が一番」
「それに聞いたわよ。陽向くんと……ね(笑)」
「えっ!!ちょっと雪斗言ったの!?」
「いや……陽向が浮かれて自分で言ったんだよ…」
「ちょっと陽向ー!!」
そのまま奥の部屋へ消えて行った。
「えっと……お邪魔します。」
こはるも軽く頭を下げる。
「こんにちは」
柔らかく微笑む雪斗の母親。
「こはるちゃんも来てたのね」
「はい、突然すみません。」
「いつでも来ていいのよ。ゆっくりして行ってね」
「はい」
少しだけ嬉しそうに頷く。
「それじゃちょっと私は買い物行って来るわね。雪斗、ちゃんとお客さんに飲み物出しなさいよ」
「わかってるよ」
「それじゃ行ってくるわね」
そう言って母親はエプロンを外し、外へ出て行った。
「飲み物持って行くから、先に部屋言ってて」
「はーい」
雪斗に言われ、渚の声が響いている奥の部屋へ紅葉が移動する。
こはるは、綺麗にされているリビングの棚の上に置いてある写真を見てから、紅葉の後に続いて行った。
⸻
「で?」
渚に叩かれている陽向が言う。
「結局なんで来たの?」
「渚が会いたがってたから」
「そんな事言ってない!!!」
バシッ
「いてぇ!」
「あと」
紅葉がちらっとこはるを見る。
「急にお邪魔してしまいすみません。」
こはるが改めて雪斗に向き直る。
「いや、全然いいけど」
「私も、みなさんとお話しとかしたくて」
「確かに、夏祭り以来だしね」
「そうですね」
2人で楽しそうに話し始めた。
「……私の時と雪斗のリアクション違うよね」
ボソッと紅葉が陽向と渚に言う。
「そうか?でも確かにこはるは何と言うか……」
陽向が少しだけ考える。
「小動物みたいな感じ?で、ついつい優しく保護しなきゃみたいな感じになっちゃうところはあるよね」
「それ分かるかも(笑)」
小声で話しながら、紅葉はもう一度2人に視線を送った。
優しく笑っている雪斗と、楽しそうに笑っているこはる。
「まぁ、分からなくもないけどね」
そう言いながら、紅葉は何事もなかったかのようにカバンからノートを取り出した。
⸻
宿題をするこはると紅葉と雪斗。
ゲームをする陽向。
スマホを見ている渚。
「そう言えばさ」
スマホで夏休みイベント特集記事を見ていた渚がふと口を開いた。
「せっかくの夏休みなのに、この間の花火以降、全然夏っぽいことしてなくない?」
ゲームをしていた陽向が手を止める。
「たしかに!」
「海とか?川とか?プールとか?」
「水着見たいだけだろ変態!」
蹴られる陽向。
そんなやりとりをしている中、ペンが止まるこはる。
(海………川………プール………)
(川は、いつも見ているあの流れている水)
(プールは学校の授業で入ったやつ)
(海は……プールなんかより広くて……しょっぱい…)
(でも私泳げないしな……)
知識としては知っている。
しかし実物を見たことがないため、少し興味が湧いていた。
(でも私泳げないしなぁ……)
そんなことを考えていることが顔に出ていたのか、その表情に気づいた雪斗が声をかける。
「どうかした?」
「あ!いえ、私海を見たことがなくて。」
「マジか……行ってみる?」
「でも私…みなさんご存知の通り泳げないので…」
その話を聞いていた渚。
「大丈夫だよ!泳げなくても、浮き輪とかで浮いてるだけでも楽しいし!」
「最悪入らなくても、砂浜で遊んだりもできるしね」
「スイカ割りとかといいね!」
だんだんと会話が弾んでいく。
みんなと海の話をしていくうちに、こはるも自分の気持ちが昂っていくのがわかった。
「あの、私……行ってみたいです!」
その声を聞いた瞬間、皆で顔を見合わせた。
「決まりだね!」
「はい!」
⸻
いつ、どこにいくのかを話し合っている最中、ふと渚が言う。
「水着、買い替えないとな〜」
「ん?持ってないの?」
「多分、今あるやつ着れないと思う……」
「へぇ〜」
紅葉が視線を落とす。
「どこがどう変わったのかねぇ……?」
「どこみてるのよ!」
そう言って胸を抑える渚。
「どれどれ」
そのやりとりを聞いてニヤニヤした陽向が身を乗り出す。
「まだ触らせねーよ!」
「……ん?」
「……へぇ」
「……おぅ」
「………?」
(まだなんだ……)
「え?私なんか変なこと言った??」
「でも水着って……?」
こはるが首を傾げる。
「この間まで授業で着てたのに、もう着れないんですか?」
「あれは学校用の!」
「まぁ、一部のマニアには需要があるかもだけど」
「陽向、こはるに変なこと教えない。」
「え?」
情報が錯乱し、混乱するこはる。
「遊びに行くときは別の着るの!」
「そうなんですか!?」
「むしろそれで来られたら困るわ」
「だいぶ浮くね」
少し考え事をしていた雪斗が口を開く。
「多分、俺も外用の水着持ってない気がする」
「確かに俺も無いかも」
「それじゃどうせならみんなで買いに行こうか!」
「はい!」
「私もいいのがあったら買おう」
⸻
後日 水着売り場
「うわ〜!いっぱいある!」
「テンション上がりすぎ」
「だって可愛いの多すぎない!?」
「とりあえず選ぼう……の前に、男子はあっち行っててね」
「え!」
驚く陽向。
「いや、そりゃそうだろ。あっちいくぞ」
「今日の楽しみが………」
陽向を連れて男子の水着コーナーへ消えていく2人に、呆れ顔の渚。
「あのバカ……」
「それじゃ選ぼっか」
⸻
「ねぇ見てこれ!」
「さっきも似たの見た」
「違うし!これはここにリボン付いてるんだよ!」
「はいはい」
「紅葉さんは何かいいのありましたか?」
「まぁ、だいたいは決まったかな」
「早いですね……」
「まぁ……悩むの面倒なだけだよ…」
そう言いながら少し悲しそうに自分の胸元を見る紅葉。
「……?」
⸻
シャー
渚が試着室のカーテンを開く。
「お待たせー!」
「どう!?」
2人の視線が下から上へ。
「はいはい、似合ってる」
「雑!」
「なんか…すごいです……」
「んふふ〜でしょ♪」
「それで陽向を悩殺するわけか」
「違うし!!」
顔が赤くなっていた。
⸻
シャー
紅葉が中から試着室のカーテンを開ける。
「………」
「いや、普通に似合ってるじゃん。」
「すごく大人っぽいですね」
「そ……ありがと」
頬が赤くなっていた。
⸻
「最後、こはるは?」
「えっと……」
手に持っているのは、渚と選んだ少しだけ布の多い、やわらかい色の一着。
「それ?」
「ヒラヒラしていて可愛いなと…」
「可愛いよねそれ!」
「確かにこはるっぽい」
「そう、ですか?」
「着てきなよ」
「あ、はい!」
⸻
カーテンの中。
(これで……いいのかな…?)
そっと紐を結ぶ。
⸻
「……あの」
「……開けますね」
カーテンが開く。
「……」
もじもじするこはる
「……」
「……え」
「……変、ですか……?」
「……いや、前々から思ってたけどさ……」
「うん」
「思ってたよりもちゃんと女の子してるよね……」
自分の胸元と見比べながら言う紅葉。
「普通に可愛すぎる!!」
「えっ……」
耳まで赤くなっていた。
⸻
「おっまたせ〜!」
店の入り口付近で待っていた雪斗と陽向に、渚が大きく手を振った。
「お、きたきた」
「お疲れ〜」
渚に気づいた2人が顔を向ける。
「遅くなってしまいすみません!」
「大丈夫だよ、俺らも選んでたし」
「渚が陽向に見せる水着を選ぶのに時間がかかってね」
「違う!!」
「え、まじ?」
「だから違うって!!」
「陽向……すごいから楽しみにしてな」
「紅葉やめて!!」
「でも、本当に可愛いかったですよ」
「こはるまで………」
そんな会話をしながら帰路に着く。
「海楽しみだね〜!」
袋を持ったまま、こはるは少しだけ立ち止まる。
初めての海……
(……楽しみ、です)
その表情は、少しだけやわらいでいた。