テラーノベル
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白い空間に落ちてたカード。震える指で拾い上げて、
ゆっくりと文字を読む。
そこには——
《ゆづる》
と書いてあった。
息が止まった。
胸の奥で何かが弾けるみたいに、
熱くなる。
「……ゆづる……
せや……
俺の相棒の名前……!」
忘れてたはずなのに、
急に全部戻ってくる。
赤い帽子のピエロ。
俺よりちょっとだけ小さい手。
誰より高く飛びたがって、
いつも俺を無茶に巻き込む子。
——“ゆづる”。
その名を思い出した瞬間、
空間が震えだした。
白い世界が溶けていって、
次に現れたのは……
あの日の劇場。
落下事故のあと、
二度と来られなかった場所。
胸がギュッとなる。
でも、
まるで導かれるように
舞台の真ん中へ歩き出した。
その瞬間、
照明がパッとつく。
スポットライトがひとつだけ灯って、
舞台の奥を照らす。
そこに……
誰かが立っていた。
ゆっくりと顔を上げる。
赤い帽子のシルエット。
子どもの頃と同じ姿じゃない。
でも、面影がある。
まちがいなく——
ゆづる。
息が漏れる。
「……ほんまに……お前……」
ゆづるは少し笑って、
懐かしい声で言った。
「やっと思い出してくれた。
たっつん。」
その声を聞いた瞬間、
俺の胸がドクンと跳ねた。
「……俺……
お前のこと……」
声が震えて出てこない。
ずっと忘れてた。
でも、心の奥ではずっと探してた。
ゆづるは歩いてきて、
俺の目の前で立ち止まる。
「ねぇ、たっつん。
あの日、落ちたのは僕だけど……
“最後まで手を伸ばしてくれた”のは
たっつんだったんだよ。」
その言葉で涙が一気に溢れた。
「俺……っ
俺が……守られへんかったんやって、
ずっと……!」
ゆづるは首を横に振って、
やさしく言った。
「事故だった。
誰のせいでもない。
でもね——
たっつんが抱えてきたその痛み、
僕はずっとわかってた。」
そして手を伸ばしてきて、
俺の手をそっと包んだ。
昔みたく、小さくて温かい手。
「だから迎えにきたんだよ。
もう一回さ。」
「……迎えに……?」
ゆづるはまっすぐ目を見て言った。
「もう一回、飛ぼう。
今度は“相棒”としてじゃない。
——“パートナー”として。」
時間が止まる。
胸が熱くなって、
涙と笑いが入り混じる。
「アホかお前……
あの日でさえ怖かったのに、
今さらまた飛ぶとか……!」
ゆづるはニッと笑った。
「うん。怖いよ。
でも——
“たっつんなら絶対受け止めてくれる”
って僕は知ってる。」
舞台上のブランコが
ギィ、と勝手に揺れた。
照明が赤と青に染まる。
完全に——
二人のステージ。
ゆづるは俺の手を引いて、
ブランコの足元へ連れていく。
「ねえ、たっつん。
あの日の続き、やろう?」
手が震える。
でも、離れない。
「……しゃあないな。
行ったるよ、相棒。
いや……」
ゆづるが微笑む。
俺は息を吸って、言った。
「行くで、俺のパートナー。」
二人で飛んだ。
光の中へ。
恐怖も後悔も全部置いて——
思い出した絆だけを握って。
ブランコが最高点へ達した瞬間、
ゆづるが叫んだ。
「たっつーん!!
受け止めてね!!」
「任せとけぇぇぇ!!」
手を伸ばす。
ゆづるが飛ぶ。
光が弾ける———
──そして、二人の手はしっかりとつながった。
世界が色に染まる。
青と赤。
サーカスの色。
── ─── 再会の色。
コメント
1件
今回も楽しいお話ありがとうございました!!相棒当たらなかった〜!でも、オリキャラだからな…当たらないよ〜!最終回おめでとうございます!とても面白かったし楽しかっです!ありがとうございました!!