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私
の部屋から見えるのは、白い壁に赤い屋根の小さな家ばかり。
それでも、窓から差し込む朝日はとても温かく感じられた。
そういえば昔、お兄ちゃんとよく日の出を見たなぁ。
一緒に星を数えたこともあったし、手を繋いで砂浜を歩いたこともある。
懐かしいな。あれ以来、そういうこともしてないし。
お兄ちゃん元気かな。
会いたいな。
会いたいよぉ。
あーだめだめ! 泣いてちゃダメだよ、私! よし、気合いを入れよう! 今日はこれからお城に行って、王様に謁見しないとだしね。
それから、私の今後の身の振り方についても話し合わなくっちゃいけない。
それにしても、昨夜の晩餐会は楽しかったなぁ。
食事をしながら、いろんな人と話をしたけど、みんな親切で優しかった。
特に、アスターさんには良くしてもらったと思う。
料理も美味しいかったし、デザートも凄く豪華だったよね。
あんなに豪華な食事をしたのは初めてかも。
それに、舞踏会とか社交場みたいな場所に出るのも初めてだ。
緊張してきたけど、でもやっぱり楽しみでもある。
ドレスを着たらもっと素敵になれるかなぁ。
そうしたら王子様の目に留まるかもしれないし! あー、わくわくしてきちゃった!! コンコンとノックの音と共に扉が開き、侍女さんたちが入ってきた。
みんな色とりどりの衣装に身を包んでいて、まるでお人形みたいだ。
「おはようございます、姫さま」
「おはようございます!」
「本日はご準備のお手伝いをさせていただきますね」
「はい!よろしくお願いいたします!!」
そう言うと、三人はそれぞれ動き始めた。
まず最初に、わたしの長い髪を丁寧に整えてくれる。
「まあまあ、本当に長い髪ですね」
「手入れには時間がかかりますでしょう?」
「ありがとうございます。実はちょっと邪魔かも~と思ってたところなんです」
「ふふっ、そうなんですか?ではちょうどよかったかもしれませんわ」
鏡越しに笑い合っていると、別の人が何かを持って来た。
「こちらをお使いくださいませ。首飾りになります」
「わあっ、可愛い!」
ネックレスのトップには、小さな花の形をした石がついている。
それを指先でそっと撫でると、少しだけ冷たい感触がした。
「こちらは昨夜のうちに作らせておきましたのよ」
「すごい!ありがとうございます!!」
次は肌にクリームのようなものを塗ってくれる。これは、お母様のお世話係の女性から教わったことだ。
毎日、起きると同時に必ずこれを塗り込むように言われていたんだけど、私は面倒くさくてずっとサボってきた。
それが昨日から急に真面目に取り組み始めたものだから、お父様にすごく不思議そうな顔をされたけどね。
ちなみに、これの正体は化粧水というものらしい。
女性には必要だけど、男性にとっては不要なものなので、お父様はあまり詳しく知らないみたいだ。
朝食を食べ終わる頃にはすっかり支度が整い、私は馬車に乗って学園へと向かうことになった。
昨日の夜のうちにお父様とお母様に挨拶をしておきたかったんだけど、2人とも忙しかったみたいで結局会えなかったなぁ……。
玄関先で見送ってくれたのは執事さんだけだったし、ちょっと寂しいかも。
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃいませ、クレアお嬢さま」
馬に乗りながら振り返ると、深々と頭を下げる執事さんの姿が目に入った。
こうして屋敷を出るのは初めてなので、何だか変な感じがしてしまう。
「ふわあ~! 楽しみすぎて緊張してきちゃったよぉ」
「クレア、遠足前の小学生みたいなこと言ってる場合じゃないからね?」
「そう言われても、なんかワクワクしない? ほら、新しい制服着てるせいかな。何かこう、気分的に大人になったような気がするんだよねぇ」
「えぇ……。でも確かに、新品の服って嬉しいよね」
「うんうん! 分かるぅ!!」
隣にいる親友のアリスと話をしながら、王都の街の中を進んで行く。
街には同じように学園に向かう生徒の姿が多く見られ、みんな楽しそうな表情をしていた。
中には家族連れの生徒もいるようで、その中には小さな子供たちを連れている親御さんたちの姿もあった。
「あっ! 見てみてアリス!! 可愛い猫がいるよっ!?」
「本当、すごいよねぇ……」
カーテンを開いたまま窓辺に立ち、感心しながら呟く。
昨日まであんなに寒かったのに、今日からは暖かくなって春が来る。
それもこれも全部、魔法みたいな奇跡のおかげなんだよねぇ――
そう思いながら視線を下げると、庭の草木が目に入った。
「あ! そうだ!」
良いことを思いついた僕は、慌てて部屋を出た。