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「ここのピザ屋さんはね。安くて美味しいんだよ。」
僕達は劇場を出たあと、ちょうど向かい側にあったピザ屋さんに入った。ピザ屋の店主は大柄で無愛想な顔をしていて、見た目通り寡黙な感じだった。
「…いらっしゃい」
店主がそういうと、彼女は真っ先にカウンターへ向かい
「やあ、また来たよ。私と彼にいつものやつを二つね」と言うと店主は「ふん…」
と鼻を鳴らすと、店の奥へ消えていった。
「このお店、よく来るの?」
僕がそう聞くと彼女は
「ま、立ち話もなんですから。お席にどうぞ」
と、僕を窓辺の席へ座らせ、彼女は向かい側の席に座った。
「いつもね。」
そう彼女が口を開く。
「休みの日は向こうの映画館で一日中映画を見続けて、お腹がすいたらこのお店でご飯を食べてまた映画を見てるんだ。」
「そうなんだ。僕もよくあの映画館に行くからずっと気になっていたんだ。このお店」
僕がそういうと彼女は少し自慢げに
「うんうん。このお店のピザはきっと今までのピザ屋さんの中でもナンバーワンと言っても過言じゃないね。」
と言う。なんで君が自慢げなんだ。と突っ込もうとしたら彼女がまた口を開いた。
「…君は挑戦をしないタイプかな?」
と僕に質問をしてきた。
「あぁ…まぁどちらかと言えばそうかな。」
僕がそう返答すると
「それは何故?」と彼女は言った。
理由は沢山あるけど、強いて言うなら
「自分で選んで後悔するのが嫌だから」
と答えた。
彼女はふぅん…と言ったところで店主がピザを2皿持ってきた。
「いつもの奴2つだ。正規のメニューじゃないから二度と頼むな」
と机に並べられたピザの上にはオリーブとチーズとこれでもかと言うくらいのパイナップルが乗っていた。
彼女は嬉しそうにそうそうコレコレみたいな顔をしてテーブルの上にあったはちみつをそのピザにぶっかけていた。
「変なピザだね」
僕がそういうと彼女は
「食べてみればわかるよ。ちなみにさっき二度と頼むなって怒ってたけど、私がこの店に通い始めてからこれしか頼んだことないんだけどなんだかんだ言ってちゃんと作ってくれるの。優しいよね」
とんでもない迷惑客じゃないか。
何だこの人は。
しかもパイナップルだけで甘味は補えているはずなのにお皿から溢れんばかりにはちみつをかけている。もはやはちみつの味しかしないだろうみたいになっていた。
だが、郷に入っては郷に従えという言葉があるように。(まぁ厳密に言えば従ってはないのだけど)僕もはちみつをこれでもかと言うくらいかけてみる。そして1切れ食べてみる。口に入れるまでにはちみつがぽたぽた垂れるので前かがみになり服につかないように1口
「おぉ!結構いける!」
そういうと彼女はニコニコしながら
うんうんと頷きながら夢中になってピザを食べていた。にしても綺麗に食べる人だ。これだけはちみつやパイナップルが乗っているのに全くこぼさないし、手も汚くない。どれだけ見てもなぜ汚れないのか疑問が残るばかりだ。
僕たちは食べ終わるまでに特に会話という会話をしなかった。というより、僕が話しかけても彼女はピザに夢中で頷くことくらいしかしないからだ。
「いやぁ…美味しかったね。大満足」
彼女がそういうと僕は頷きながら
「そうだね。最初はびっくりしたけど食べてみるとこれが案外いける、どころか毎日食べたくなるほど美味しかった。」
「ふっふっふ、そうだろうそうだとも。私は毎日食べているがな。」
彼女がそういうと、僕は自然と口角が上がった。
「次は僕が好きなお店に連れていくよ」
ふと、僕がそう言ってしまった。しまった。つい、気が緩んで馴れ馴れしくしてしまったどうしよう。
僕が内心ドキドキしていると彼女は
「いいよ。じゃあまた明日、この時間にあの劇場の中でね。」
と約束をしてくれた。彼女が立ち上がり、じゃあ、また明日。と言うとレジにお金を置いて帰って行った。
僕はまだ、ドキドキが止まらずにいた。
「もう店終いだ。お前も早く帰れ」
店主がそういうと僕はハッとして荷物をまとめて店を出ようとした。すると店主が
「まて」と言う。
「これじゃ少なすぎる。今日は2人分だからな。」と言った。
僕はああ、と財布を取り出すと細かいのが無く、大きいので支払わざるを得なかったのでレジに置かれたお金を取って大きいお金で払った。
取ったお金は少しだけ湿っていた