テラーノベル
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次の日、僕は昨日と同じ時間にあの劇場へ向かった。
中に入ると、昨日と同じ席に、また彼女が座ってた。
「やぁ いい夜だね。もうすぐ映画が始まるよ」
そう言う彼女の隣に、僕は静かに座る。
映画を観ながら僕は考えていた。昨日会ったばかりのこの人は一体誰なんだろうと。
僕は彼女の名前も知らないし、彼女も僕の名前を知らないはずだ。
でも妙に彼女と居ると、落ち着くような感じがある。まるで、そこに居るのが当たり前のような、なんとも不思議な感覚だ。
もしかしたら一目惚れでもしてしまったのか…?いやいや、そんなことはない。これは恋心とはまた違ったものだ。僕の事は僕が1番知っているから違うと言い切れる。
多分。
今日の映画は少し変な映画だった。言語化ができない、なんというか頭で考えるよりも肌で感じろ的な。少し面白かった。
映画の最中、彼女はたまにケラケラ笑っていた。
そして、この映画も終わり、エンドロールが流れている。
「いやぁ、普通だったね」
彼女が涼しい顔でそういうので僕は
「いやめちゃくちゃ笑ってたじゃん」
と言う。
「笑える映画だと言って、それ即ち面白い映画と言うわけではないんだよ」
ふぅん。なんだかよく分からない。
するとそろそろエンドロールが終わりそうだったので僕は席を立ち、
「じゃあ、今日は僕がいつも行くお店に案内するね」
という。
彼女は少し頷いて席を立ち、劇場の外へ出た。
相変わらずボロボロになっていく世界を見ると、なんだか悲しくなるような、寂しくなるような感じがする。しかも日に日に悪い方に向かっている感じが特に嫌いだ。何事もハッピーじゃないとね。後味が悪い。
少し歩くと、僕が行きつけのお店が見えてくる。
「君はコーヒーって好き?」
僕がそう聞くと彼女は少し考えて
「まぁ…うーん」
と、少し微妙な反応だった。
「僕はコーヒーが好きなんだけど、今から行くお店のコーヒーは今まで飲んだコーヒーの中で、いちばん美味しいから、多分気にいるよ」
そういう時彼女はニヤリと笑って
「ほうほう。期待値を上げますな」
と言った。
お店に着くと、中に入り、奥のテーブルに座った。店内は落ち着いた雰囲気で小さな音でジャズが流れている。
「お客様 ご注文がお決まりになりましたら
お呼びください」
と、マスターがお水をくれた。
「マスター、コーヒーを2つ。」
僕がそういうとマスターは微笑みながら
「かしこまりました」
とカウンターに向かい、コーヒーを淹れ始めた。
「なんだか洒落たお店だね」
彼女が少しソワソワした感じで僕に言った。
「そうだね。映画を見た帰りはいつもここでコーヒーを飲みながら余韻に浸るんだ。」
僕がそう答えると彼女は
「大人って感じだね。なんというか…クール?」
と少し茶化した感じで言う。
何故か、少し恥ずかしい。
僕が少し照れていると、彼女は角砂糖の入った瓶を開けて1つ取ると、それをシャリシャリと食べ始めた。
!?…今、砂糖をそのまま齧ったのか?
絶対に変だ…
「角砂糖ってそんなキャンディみたいに食べる物なの?」
僕がそういうと彼女は
「君は食べないの?美味しいよ。シャリシャリして」
と言った。
まぁ、人の食文化に口出しはしない主義ではあるが、さすがにちょっと変だ。
「そ、そうなんだ。」と僕が言うと彼女は角砂糖を1つ取ると僕に
「はい、あーん」
と食べさせようとしてくる。
そんなことをされたら食べるしかないので食べたが、うん。ただの砂糖だ
「どう?美味しいでしょ」
と彼女が言うので
「甘いね」
と答えた。
すると、マスターがコーヒーを2つ、テーブルに置く。
「ごゆっくりどうぞ」
そういうと、マスターはカウンターへ戻って行った。
「コーヒーなんて久しぶりに飲むよ」
彼女がそういうと少し躊躇しながらコーヒーを口に運んだ
すると彼女は目を輝かせながら
「ほう!ほうほうほう!!美味しいよこのコーヒー!」
と言う。
そうだろうそうだろう。と僕も頷きながらコーヒーを飲んだ。
さっき食べた角砂糖の粒がまだ口の中に残っていたが、温かいコーヒーといい感じに混ざって美味しい。これは新しい発見だ。
「こんなに美味しいコーヒーは人生で2回しか飲んだことないね」
彼女がそう言った
「ほう。是非とも一回目のコーヒーも飲んで見たいよ。」
そうだね。と彼女は僕の瞳を見ながら笑った。
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