ー冬の風が頬を切る、ロードワークの坂道。
ぐるぐると回る形の道で、意外と長い。
上の方には既に走りきった田中や西谷、日向達が居て
残りは俺と大地、そして旭。
後ろには烏養監督が笛を手に仁王立ち。
清水は上でタイムを記録しており、やっちゃんがタイマーを手にしている。
ピィ、と笛の短い音が響き
俺、大地、旭は走り出した。
ーーーー
「はーっ、坂道はさすがにキツイべ」
「ただでさえ走ってたのにな」
「大地さん、もう1回走ってきていいですか!!」
「あ、まて日向ボケ!!俺が先だボケ!!」
「あー、じゃあ監督の所まで先戻ってていいぞ」
「「あざーッす!!」」
(どうしてあんなに元気なのか…)
日向と影山は競い合い、あっという間に道を曲がって行く。
「元気だなぁ…」
「旭さんはもっと体力付けないとダメっすよ!!」
ばしっ、と西谷が旭の背中を叩き、喝を入れる。
あはは……と笑っていると、後ろから凛と綺麗な声が耳に入った。
「仁花ちゃん、私達も戻ろっか」
「はいっ!!」
清水 潔子。
名は体を表す、というのは最もだなぁと見る度に思うほどに…美人で、綺麗。
田中が前、清水 潔子という名は、潔子さんの為にあるのです…
なーんて言っていたが、まぁ納得だ。
ーー1年生の頃から、美人だと話題で、目立ってて。
排球部のマネージャーに、清水がなってくれて……話してみて。
見た目だけじゃなく、中身まですごく綺麗で
それから、俺は清水のことが好きなんだと思う。
ーーお疲れ様でーす
という皆の元気な、それでも少し疲れ気味な声が響き、今日の部活は終わり。
シューズを体育館の入口で袋にしまい、上履きに履き替える。
空はとっくに橙色に染まり、桃色のグラデーションが掛かっていた。
やっぱり冬はすぐに日が暮れる。冬休みなこともあって、解散時間はいつもより早いけれど、もう夕方だ。
夏場ならこれぐらいの時間は、まだ明るいだろうに。
今日は母に買い物を頼まれたから、早く帰らなければならない。
いつもなら誰かしらと自主練をするけれど、用事があるから仕方がない。
部室でサッと着替えを済まし、鞄を肩にかけ部室を出た。
「…ん…?ぁ、清水」
部室下を颯爽と歩く清水。サラリと綺麗な髪を靡かせ、そこだけ周りが花畑かのように感じた。
「へぇ、じゃあ菅原も買い物?」
「そー、人使い荒いよなー」
嶋田マートが改装工事で閉まっているから、隣町までお使い行ってきてー…
と渡された買い物メモを上着のポケットから取り出し、確認する。
清水も頼まれた様で、隣町まで行くようだ。
今日頼まれたことを神様に感謝し、バス停へと歩く。
「清水は何買うの?」
「醤油と、お肉と…」
「へぇ、肉!」
「すき焼きやるらしいから」
すき焼きを想像すると、部活終わりなこともあってぐるる…とお腹が鳴ってしまう
「…」
「…」
ば、と顔を見合わせ思わず吹き出し
また道をゆく。
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