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るる太📱⚡🐼
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熱い夏を超え、少し肌寒くなってきたある日。夕飯を終えて一息ついたその時だった。
画面に表示されたのは、奥さんの名前。そこには短く、「洸に会いたい」とだけ、冷淡なメッセージが添えられていた。
それを読んだ瞬間、頭が一気に冷えていくのが分かった。
……なんで、洸だけ?
あんなにお母さんっ子で、いつでも自分についてまわってた弦のことは無視して、なんで洸だけ?
いや……そりゃそうか。洸の顔は自分にそっくりや。おまけに大人しくて、聞き分けのいい、手のかからない子や。外見を何よりも気にして、オシャレが大好きなあいつのことや。自分の「飾り物」にするには、文句なしの都合のええ存在なんやろ。
「……ふざけんなよ」
お前が出ていって、家のことも子供のことも全部放り出して金だけもっておらんようになった間。俺が、そして新や空が、周りのみんなが……どれだけの思いでこの数ヶ月間を繋いできたと思ってんねん。
お前がおらんくて、寂しくて悲しそうに泣いていたこの子らを、毎日笑顔にするために、俺らがどれだけ必死にこの場所を守ってきたと思ってんねん。
「……会わせるわけないやろ」
今まで感じたことのない怒りと悔しさが、込み上げてくる。
考えるより先に身体が動いていた。弦と洸は2人で大人しくテレビに夢中になっている。その姿を確認し、階段を駆け上がり、寝室に飛び込む。そして、彼女が出ていってから一度も開けていなかったクローゼットの扉を、勢いよく引っ張り開けた。
奥の棚にしまってあった、少し大きめの白いボックス。
俺と彼女の、二人の思い出が詰まったそのボックスの蓋をあける。
その中から彼女が置いていった、四つ折りにされた離婚届を引っ張り出した。
逃げていた現実を思い出し、震える指先で、紙を広げる。
そこには、見慣れた綺麗な筆跡で、すでに彼女の署名と捺印がされていた。
残っているのは、俺の欄だけ。
この子たちの日常を、笑顔を、新や空や秀太が一緒に守ってくれたこの大切な温もりを、お前の都合で二度と掻き乱されてたまるか。
俺は引き出しからペンを取り出すと、溢れそうになる涙を堪え、怒りでどうにかなってしまいそうな心を無理やり抑えつけながら、自分の名前を書き殴った。
離婚届に自分の名前を書き終わった後はっと小さく息を吐き、少しだけ冷静になってクローゼットの奥を見つめた。
こんな顔のまま下におりたら、弦も洸も怖がらせてしまう。
それに……。
冷静になって思い返せば、彼女は最初からこんな人じゃなかった。
ここにいた時は、ちゃんと弦のことも洸のことも、目一杯愛してくれていた。だからこそ、弦はあんなにお母さんっ子やったんや。
全部が彼女のせいなわけがない。彼女だけが悪いんじゃない。 俺だって、決してできた父親じゃなかった。
「……俺がこんなに動揺してどうすんねん」
今さら母親面して、なんて、怒りに任せて彼女の愛情まで否定しようとした自分が恥ずかしかった。
こういう時こそ、父親の俺がどっしり構えて、冷静でおらなあかん。そう自分に言い聞かせながら、荒くなった呼吸を整えようとクローゼットの棚に手をかけた。
「……ここにあったんか」
いつの日にか、空が俺のために作ってくれた「伝説の剣」。
俺に見つけられることもなく、ずっとこのクローゼットの中で、静かに眠ってたんやな。
そっとそれを手に取る。金の色紙が丁寧に貼られた持ち手の部分。そこに、空の綺麗な字で「幸せになる呪文」と書かれた紙が貼られていた。
ふふっと思わず笑い、その紙をペラッと持ち上げる。
『みんな元宮さんが大好きです』
ただ、それだけ。
そんな、簡単なようで、今の俺にとっては決して簡単じゃない優しい言葉が目に飛び込んできた瞬間、堰を切ったように涙が溢れて止まらなくなった。
俺も、大好きや。
弦も、洸も、新も、空も。みんな、俺にとってかけがえのない、大切な人たち。彼女が消えた後のこの場所には、こんなにも愛が溢れてる。
ボタボタと涙が落ちて、情けなくて嬉しくて仕方ない。
彼女への怒りや、洸を奪われるかもしれない恐怖で張り裂けそうだった胸の痛みが、空のくれた呪文によって、切ないほどの恋しさに変わっていく。
空に会いたい。
今すぐに、空に会いたい。
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