♪BGM Everything is Everything♪
でお楽しみ下さい。
『ハッハッ…』紫苑は夢中で走っていた。
走りながら考えるのは蓮の事ばかり…。
ーなんで蓮がここに来るの?
赤の他人のフリして背中を押そうとするの?
私の病気のこと知ってるのに…ー
うっ…グスン…
夢中になり過ぎて信号が変わった事に
気づかない。
「紫苑危ない!!」
横断歩道手前で紫苑を抱きとめる
「何考えてんだ!!死にたいのか!!」
初めて紫苑に声を荒げてしまった。
紫苑は蓮の腕を払う。
『ほっといてよ!蓮には関係ない!
忘れてって言ったじゃない!
もう私に関わらないで!!』
「嫌だよ!紫苑が苦しんでるのに
1人になんて出来ない…出来るわけない。」
蓮は改めて紫苑をきつく抱き締める。
『傷付くのは蓮だよ。私は忘れちゃうから。』
「紫苑が好きって言ったろ?
……そんな簡単な想いじゃない。」
『そんなの私が嫌!
好きな人が苦しむ事が分かってるのに、
苦しんでることも 私分からなく
なっちゃうんだよ!』
「紫苑…。」蓮は力を緩めた。
蓮の胸をトンと押し身体を離す。
『その言葉だけでもう充分。
蓮の気持ち知れただけで。ありがとう。』
携帯が鳴る。
『はい…。(………)あ、居ます。
追いかけて来てくれましたが、
今戻るように伝えます。
はい、なんか……すみません。
はい、失礼します。』
『蓮 戻って……なんか話があるみたい。
私のこと……知らないフリでいいから。
泣いてたみたいだから
気になって追いかけたって。
でも気の所為だったって言って。』
「何でそんなこと…」
『だって他人のフリしたじゃん。
私の為なんでしょ?
それが蓮の優しさなんでしょ?
…だったら最後までしてよ!
中途半端の優しさなんていらない!!』
紫苑は声を荒らげる。
『これ以上イライラさせないでよ!
もう行って!じゃあね!』
紫苑は走り去っていった。
蓮は先程のカフェに戻るため歩いていく。
よく考えれば紫苑の言った通りだった。
知りもしない人を急に
追いかけるなんておかしい。
あの二人に問い詰められた時に
なんて答えるつもりだった?
分からない……。どうする?
ショップのドアを開け、二人の元へ座る。
〖紫苑ちゃん大丈夫だった?〗
《突然走って行ったから驚いたよ。》
「すみません。彼女……
泣いてるように見えたので気になって…。
……でも俺の気のせいでした。
逆に大丈夫?って心配されました。
この話 乗り気じゃなかったんですね。」
《紫苑ちゃん、歌を歌うのは
大好きだと思うよ。でもなんか隠してる。》
山際は鋭い男だと悟る。
だか詳しい事は知らない様子だ。
あえて言わないのか、
隠しているのかは読み取れない。
〖少し時間を置こう。
紫苑ちゃんのこと諦める気は無いんでね〗
目黒くん付いてきてくれてありがとう、
と西園寺は付け加える。
「いえ、お役に立てずにすみません。」
蓮は頭を下げる。
そして、席を立ち店を後にする。
駐車場で車に乗り込みため息を付く。
エンジンをかけ、車を走らせると
頬が濡れているのに気づく。
紫苑の嘘をそのまま伝えるしか出来なかった。
「俺…最低だッ…。」
涙がとめどなく流れていく。
少し走った静かな場所で路側帯に車を停め
ハンドルを殴り自分の不甲斐なさに
悔しさで情けなくなる…。
紅く染まる夕闇の中 枯れる事の無い涙と
紫苑への想いに気が狂いそうになる。
「紫苑……。オレどうすればいい?
ハァハァ……。苦しいよ…助けて………。」
蓮は車の中で
ハンドルに顔をつけたまま意識を手放していた。
夜のニュースに
【SnowMan目黒蓮 救急搬送!】と
大きく取り上げられる。
驚いたのは世の中だけではなかった。
何も知らされていなかったメンバー達。
マネージャーを含めメンバーが
対応に追われていた。
《照とナベで病院行って!》
深澤はマネージャーと共にその場の
対応を仕切っていた。
(めめ、一体何があった?)
深澤はもしかして…と思い当たる節があったが
何があったのか、まだ聞いていない。
とにかく 報道になってしまった以上
状況報告を上げなければ収まりがつかない。
佐久間は蓮の車を取りにタクシーで向かう。
(蓮、何があったんだよ…。ハッ!
まさか彼女の事でなんか悪い事が…。)
岩本と渡辺が病院に辿り着く。
報道関係者が多く集まってきていた。
裏から入り、病院の関係者に問いかける。
【目黒は?】
『現在まだ意識が有りません。
主な原因はストレスによる過労だと
思われます。ただ、長い時間
呼吸困難だったようで
脳に障害が残る可能性も…。』
〖脳に障害?なんで?!〗渡辺は愕然とする。
『あくまで可能性です。
まだ検査の結果が出ていないので…〗
【目黒に会えますか?】
岩本が担当へ問いかける。
『はい。病室にご案内します。
こちらへどうぞ。』
ーガラッー
呼吸器と心電図そして何本も線に繋がれた
青白い顔をした蓮が横たわっている。
ピッピッ…定期的に鳴る心電図。
シューシューと鳴る呼吸器。
静かすぎる病室に息を飲む二人。
渡辺は午前中 蓮と仕事で会っていた。
いつもの蓮だった…と思う。
スポンサーのケーキを美味しそうに食べ、
笑っていた。
午後はオフで誰かの所へ行くと、
はにかんだ笑顔で嬉しそうだった。
今 横たわる蓮を見ても信じられない。
〖一体…… この数時間で何があったんだよ……〗
岩本も紫苑に会いに行くと聞いていた。
想いを伝えに行く。
彼女を支え、守りたい、と。
彼女と会えたのか?
想いは伝えられたのか?
一体何があった?
答えの出ない問いに苛まれ
今にも崩れ落ちそうだった。
『ナベ明日は仕事?』【いや、オフ。照は?】
『俺も。どうする?』
【目覚めるまでここに居るよ】『俺も…。』
2人は暗い病室のなかで
そこから語ることなく黙ったまま
蓮を見つめ続けていた。
コメント
4件
切ない(´;ω;`)