ー病室ー
ピッピッピッ
心電図モニターの無機質な音が
定期的に鳴る部屋
岩本と渡辺がうなだれるように背中を丸め
青白い顔をして眠っている蓮を見つめている。
ーガラッー
佐久間、ラウ、宮舘、向井、阿部が揃って
部屋に入ってくる。
『蓮は?』佐久間が岩本達2人に声を掛ける。
首を軽く振る。
〘意識が戻らない。呼吸困難だった時間が
長かったから脳に障害が残るかもって…〙
渡辺が涙をいっぱい貯めて
蓮の手をそっと握る。
《朝一緒の仕事の時は、元気だったのになぁ…。
ケーキ食べながら笑いあって…
何があったんだよ…。》
渡辺の眼から大粒の涙が蓮の手に落ちる。
ピクリ 蓮の指が涙に反応する。
ハッ?!
ゆっくり蓮が目を開ける
「しょ……っ……ぴ~?……な…ん…で…
泣…い……て……ん…の?」
かすかな息遣いと渡辺を呼ぶ声。
まだ苦しそうだ。手を握り蓮を見つめる。
《目覚めてくれて……ありがとう。めめ》
メンバー一同が涙でぐしゃぐしゃに
なりながら蓮の目覚めを抱き合い共に喜んだ。
〘俺、ふっかに連絡してくる。〙
岩本が涙を拭い部屋を離れる。
阿部が肩を軽く叩き、照を労う。
ナースコールを押し目覚めたことを報告すると、
医師と看護師が部屋に入ってくる。
メンバーは少し部屋を離れ、
待合室に行く事にする。
電気の消えた待合室は、自販機の放つ
薄暗い明かりだけでどこか不気味だが、
そんな事に気を取られる余裕も無いくらい
みんなの心は蓮に向いていた。
メンバー皆いつものように
小さく固まってそれぞれの位置にいる。
脳への損傷がどれだけ大きいものか、
未知数だった。目が覚めて欲しい。
願っていたのはさっきまで
それだけだったはずなのに…。
阿部がボソッと口を開く。
【人って欲張りな生き物だよね…。
ただ、目覚めて欲しいって願ってたけど、
目覚めたらまたみんなで活動したい。
元気に歌って踊れるめめが見たいって
思っちゃってる自分が居る。
なんで…っ…めめばっかこんな思い
しなきゃいけないの?】
佐久間が泣き崩れる阿部を抱きしめ あやす。
隣に居たラウも佐久間に抱きついて泣いている。
〖信じよう…。アイツの生命力を…。
強い奴だよ。誰よりも辛い時間を耐えて
今の居場所を作って確立してきた。
俺ら、今は何も出来ねぇかもしんねぇけど、
心の支えにはなることが出来るだろ?
みんなでアイツの傍に居てやろうよ。〗
渡辺はみんなの頭をそっと撫でる。
先生と看護師が部屋を出てくる。
メンバーの元へ歩いてくる。
「1時間後、脳の検査を行います。
受け答えもしっかり出来ていますし、
手足の痺れも現れていないようです。
詳しくは検査の結果しだいですが
2、3日で退院出来るでしょう。
【先生、ありがとうございます。
よろしくお願いします。】皆で頭を下げる。
医師と看護師が去っていく。
背中を見送っていると
ほっとしたのか岩本が
椅子にドスンと座り込んだ。
〖ひ、照?大丈夫か?〗渡辺が岩本を見つめる。
ーな、泣いてる?今まで我慢していたんだな。
『ふっ…良かったぁ…。ぅうう…。』
渡辺は座ったまま泣き崩れる
岩本に寄り添い背中をさすり慰める。
ーガチャー
「しよっぴ~。皆は?」
『ん。待合室にいるよ。
いっぺんに入ってくるとアイツら
うるせぇからな。』
「( *´꒳`*)フフ……あのね、暗闇から皆の声が
聞こえたの。皆の声…確かに
うるさかった…笑。
でも温かかった。
有難かったよ。独りじゃないって最強だね。」
『ん。でも無理はすんなよ。
検査まで少し休んどけ。』
「しよっぴ~…?少しだけここに居て。
聞いて…。予定外だったんだけど
紫苑に会ったの。
プロデューサーの西園寺さんに
連れられて行ったら、紫苑だった。
彼女の歌を世の中に出したいって。
口説きたいから手伝ってくれって。
彼女はそんなこと望んでないのにね。
俺彼女の事傷つけちゃった。
病気のこともあるのに
余計な負担かけちゃったかな…。」
『今はなんも考えんな。
とりあえず少し寝ろよ。』
「ん。そうだね。……ありがとう。…それと…
ごめんね。」
『謝んな。今は…』
(また泣きそうになるから)
背中を向け肩をふるわせる。
蓮は渡辺の手を握る。
渡辺も背を向けながら
弱く冷たい蓮の手を握り返した。
コメント
2件
ギュー(つ・ω・(-ω-*)ヨシヨシ
(ó﹏ò。)ウゥゥ