テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ただ、こんなに良くしてもらって私は何もできてないから、申し訳ない気持ちもいっぱいで。お金も払えないし。
「蒼さんに誘ってもらって嬉しかったです。今日は朝からすごく楽しくて。私は蒼さんや遥さんに何もお礼することができていないし、こんなに楽しんじゃって良いのかなって思って。あと、表情が固いのは……。緊張してる……ところもあって」
「なんで緊張するんだ?」
不思議そうに訊ねられ
「蒼さんが……。かっこ良くて!あぁぁぁ、いつもかっこ良いと思ってますよ?でも今日は特別で。変なこと言ってごめんなさい!」
「ちょっ……。そんなに大声出さないで。恥ずかしい」
顔を手で覆っている蒼さん。
私の声、隣の席まで聞こえてしまったみたい。
チラッと視線を感じる。
「ごめんなさい」
また迷惑かけちゃった。
「ありがとう。本音、聞けて良かった。安心した」
その表情、椿さんと被る。同じ人だから当然か。綺麗な顔だな。
パンケーキを完食。
「お腹いっぱいです!本当に美味しかったです。連れて来てくれてありがとうございます」
二人でお店を出る。
「いえいえ。あんなに美味しそうに食べてもらえると、あのお店選んで良かったって思えたから」
そんな会話をしていると、お店に並んでいた女の子が急に蒼さんにぶつかってきた。
「すみません!」
女の子は謝ってくれた。
「いえ」
平然と答えている蒼さんだが、身体は大丈夫なんだろうか。
「あの、女の子とぶつかりましたけど、大丈夫ですか?蕁麻疹……」
「あぁ。大丈夫。ああやって少しくらいなら。うーん。そうだな。わかりやすく例えると……」
蒼さんの手のひらが私の頬に触れる。
そして、唇の端を親指でツーと動かされた。
「んっ……!?」
「例えばこうやって意識して触れるとアウト。桜には大丈夫だから今触ったけど。逆に触れられてもダメ。抱き付かれたりするのも身体が反応する。ゾワゾワして……。嫌悪感が生まれて……。蕁麻疹が出る」
「ごめん。今唇触ったのは、さっきのパンケーキの生クリームが付いてたから?」
えっ……。
「ごごごめんなさい……!!」
慌てて自分のカバンからウエットティッシュを取り出し、蒼さんの指を拭いた。
「そんな、いいのに」
ハハっと蒼さんは笑ってくれた。
うぅ、私、全然良いところない。どうしよう……。
次は、映画を見に行くため映画館に向かった。蘭子ママさんに感謝だ。
「トイレとか大丈夫?」
「あっ、私、行ってきてもいいですか?」
まだ顔に生クリームとか付いていないか心配。
お化粧も崩れてないか心配だし。
トイレの鏡で化粧を直す。
ふぅ、どう見ても一緒に歩いてたら不釣り合いだ。
遥さんと蒼さんだったら違和感ないのに。兄弟だけど……。
トイレから戻り、蒼さんを探している時だった。
えっ――?
あれって……。
優人に似てる。
まさかっ?本人!?
遠くにいるため、本人だという確定は出来ない。でも近づきたくもない。
一気に心臓の鼓動が速くなる。嫌な汗が身体から流れる。
手が震えだしそうだ。
もし本人だったら――?
「桜?」
蒼さんに名前を呼ばれハッと我に返る。
「どうした?なんか顔色悪い気がする」
せっかく楽しい時間なのに、もしもの可能性を話して心配をかけたくない。
「なんでもないです。蒼さんを探してて」
嘘をついてしまった。
「ごめん。俺もトイレ行ってた」
気にしない、優人じゃない。別にいたってもう私は関係ない。
46
127
#大人ロマンス
朝永ゆうり
1,462
#執着
猫とろ
585
自分に言い聞かせる。
「桜、なに飲む?ポップコーンとか食べる?」
まだお腹いっぱいだ。
「お腹いっぱいです!」
「そっか、じゃあ飲み物だけ買って来る。混んでるから、ここでちょっと待ってて?」
「はい」
あっ、返事をしちゃったけど、今は一人になりたくない。
咄嗟に蒼さんの裾を掴んでしまった。
「私も一緒に行っていいですか?」
「いいよ」
蒼さんって頼りになるな。隣に居てくれると思っただけで、あの人が優人だとしても怖くない。
似ている人がいたところをチラッと見ると、それらしき人はいなかった。やっぱり、見間違えだよね。
「そろそろ行く?」
「はい」
上映時間間際になったため、席に座る。
映画が始まった――。
二時間半の映画はあっと言う間だった。
「グスッ……。うぅ……」
「おい、桜、大丈夫か?泣きすぎ」
エンドロールが終わっても感動して泣き続けている私を見て、蒼さんは爆笑している。
「思ってた以上に感動してしまって。最後なんて……。まさか死んじゃうとは思いませんでした」
見た映画はラブストーリーだった。
困難を乗り越えて結ばれたカップルが、最終的にはヒロインが病気で亡くなってしまうという結末。
「すみません。ちょっと、お手洗いに行ってきます」
泣きすぎて化粧が崩れてしまった。こんな顔で歩けない。
「落ち着いた?」
トイレから出ると、嫌な顔せず待っていてくれた。
「はい!すみませんでした」
「ん。じゃあ、行こうか?」
二人で映画館を出る。
あっ、もうこんなに暗いんだ。
外に出ると日は沈んでいた。
「この後どうする?外でご飯食べて行く?」
お昼は蒼さんに奢ってもらっちゃったし、家に帰れば何か作れる。
「あの、良かったら私が帰って作ります。ダメですか?」
「いや。我儘言うと、桜が作ったご飯が食べたい」
ドクンと鼓動が高鳴った。
はぁぁぁぁぁ。嬉しい。
「はいっ!何か食べたいモノ、ありますか?」
蒼さんが食べたいモノ作ってあげたいな。
「そうだな……」
蒼さんがそう呟いた時だった。蒼さんの視線が一点を見つめている。
どうしたんだろう?
「どうか……」
どうかしましたか?と声をかけようとした瞬間
「ごめん、桜。ちょっとこっち寄って?」
「へっ?」
蒼さんに引き寄せられた。
そしてーー。
抱きしめられる。前は何も見えない。
えぇぇぇぇぇ!!
こんな人通りの多いところで急にどうしたんだろう。
抱きしめられて、心臓が飛び出そう。