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休日の昼。
駅前で待っていたローレンの前に、黒い服に身を包んだ葛葉が現れた。
『遅い』
「うるせ、5分前だろ」
『顔は余裕ないけどな』
「……今日は歩くぞ」
『デートだもんな』
「言うな」
服屋を何軒も回る。
『これどう』
「似合う」
『即答すぎ』
「ローレンは何着てもそれなり」
『それ褒めてる?』
「褒めてるに決まってんだろ」
試着室から出てきたローレンを見て、葛葉は少し視線を逸らした。
「……それ、買え」
『え、いいの?』
「俺が選んだ、から……」
『……大事にする』
夕方、少し高めのレストラン。
『今日なんか豪華じゃない?』
「たまにはいいだろ」
『くっさん緊張してない?』
「してねぇ」
『声硬い』
「……黙って食え」
食事が終わる頃。
「このあと、来て」
『どこに?』
「秘密」
連れて行かれたのは、高層階の高級ホテル。
大きな窓の向こうに、夜景が広がっている。
『……なにここ』
「予約した」
『は? なんで』
「……記念日」
『記念日って』
「俺とお前がちゃんと一緒になった日」
ローレンは息をのむ。
『……覚えてたの』
「忘れるわけねぇだろ」
葛葉は窓際にローレンを立たせた。
街の光が、二人を照らす。
「……ローレン」
『なに』
「俺さ」
一度、言葉が詰まる。
「人に執着するタイプじゃねぇんだけど」
『うん』
「ローレンだけは違う」
『……』
「一緒にいるのが当たり前になって」
「いないとムカつくし」
「いると落ち着く」
葛葉はポケットから、小さな箱を出した。
「……だから」
箱を開くと、指輪が光る。
「俺と、ずっと一緒にいてください」
「結婚しよう、ローレン」
『……っ』
ローレンの目に、みるみる涙が溜まる。
『……なに、急に』
「急じゃねぇ」
『……ずるい』
「なにが」
『こんなの……泣くに決まってるだろ……』
涙が頬を伝う。
『……俺……』
声が震える。
『くっさんと一緒なら……どこでもいいって……思ってたのに……』
『……こんな……ちゃんとした……』
葛葉は近づいた。
「嫌?」
『……違う……』
『……嬉しい……』
ローレンはとうとう泣き崩れる。
『……はい……っ、泣』
『……くっさんと……一緒にいたい……泣』
「……返事、それでいいんだな」
『……はい……っ、! 』
その瞬間。
ローレンが、勢いよく葛葉に抱きついた。
『……っ……』
「おい」
『……うわああああっ……泣』
肩に顔を埋めて、声をあげて泣く。
『……好きっ……泣』
『……離れたくないっ、……』
葛葉は驚きながらも、腕を回した。
「……泣きすぎ、笑」
『……無理……』
「指輪、つけるぞ」
『……手、震えてる……』
葛葉はそっと、ローレンの指に指輪をはめた。
「……俺のだからな」
『……俺のくっさん……』
「勝手に所有すんな」
『……もう、離さない……』
夜景の中、二人はしばらく抱き合ったままだった。