テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ゴウが倒れた夜。
ノーネームの地下通路は、いつもより静かだった。
ゼロはロッカールームで拳の包帯を外す。
皮膚は裂け、血が滲んでいる。
「……やっぱ、無理させすぎたか」
その時――
**ギィ……**と、鉄扉が軋む音を立てて開いた。
入ってきたのは、白いスーツの男。
闘技場のオーナーでも、スタッフでもない。
「久しぶりだな。“構えなき構え”」
ゼロの動きが止まる。
「……その呼び方を知ってる人間は、もういないはずだ」
男は微笑む。
その笑みは、闘技場よりも冷たかった。
「やはり生きていたか。
“無名流(ノーネームスタイル)”の最後の継承者」
ゼロは立ち上がる。
「それを知って、何の用だ」
男は名刺を置いた。
《拳皇会(けんおうかい)》幹部
── 鴉(カラス)》
「君をスカウトしに来た。
この街の“本物の格闘”を見せてやろう」
拳皇会。
表の格闘団体の裏で、
選ばれた強者だけが殺し合う組織。
ゼロは即答する。
「断る」
鴉は肩をすくめる。
「そう言うと思ったよ。
だから――」
ドンッ!!
天井が爆ぜた。
瓦礫の中から降り立ったのは、三人の闘士。
一人は異様に細い体で、指を鳴らしている。
一人は全身に傷跡を刻んだ大男。
そして――
最後の一人。
「……兄、さん?」
ゼロの声が震える。
男は仮面を外した。
そこにいたのは、死んだはずの兄。
シロ。
無名流の正統後継者。
「久しぶりだな、ゼロ。
いや――セーラ
ゼロの心臓が跳ねる。
「生きて……たのか」
「生きてたさ。
そして、捨てた」
シロの拳が鳴る。
「無名流も、家族も、全部な」
次の瞬間――
シロが消えた。
――速い。
ゼロが反応する前に、腹に衝撃。
「がっ……!」
壁に叩きつけられるゼロ。
鴉が言う。
「紹介しよう。
拳皇会最強クラス、“名を奪う者”シロだ」
シロはゼロを見下ろす。
「教えてやるよ、弟。
“名前を持つ拳”と、“無名の拳”
どっちが強いかをな」
ゼロは立ち上がる。
血を吐きながら、拳を握る。
「……だったら、俺は」
構えを捨てる。
「無名のまま、全部ぶち壊す」
再び、拳と拳が向かい合う。