第78話 「見えない不安」
――ある日の、昼時。
「……いらっしゃいませ」
「今日はランチセットBで」
「かしこまりました」
混んでいる時間に楓と顔を合わせると、相変わらず会話は少ない。
――だが。
「ほんと、お昼時の混み具合はすごいね」
「ああ、おかげさまでな」
「今日は早くお昼食べられるといいね」
「そうだな。食べるのを忘れないようにしよう」
「忘れるとかあるの!? 食べるのを!?」
「ああ。忙しいとたまにな」
「それは色々よくないと思うけど……まぁ、ほどほどに」
「ああ。では、少々お待ちください」
(なんか……再会したときより……藤堂、表情豊かになった……ような?)
大抵の人間からすれば大差ないだろうが――そう思ってしまった鞘佳は、自然と緊張せずに言葉を返していた。
(たぶん、送ってくれたときのあれがきっかけで……私も、ちょっと肩の力が抜けたかな) *****************
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