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瑠璃🍫✨💭ྀི
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「そうだ。事後報告になっちゃうけど、マチアプの人、会ってみたんだ。結果的にはダメだったけど時々進捗を報告し合う同志みたいな関係になった。もう二人で会うことはないと思うけど」
「そっか」
何となく黙って行ったことが後ろめたく報告を済ませると肩の荷が下りた気持ちだった。それと、保身のような気持ち。私はちゃんと婚活もしてますよっていう……。沼にはまり切ってはいない。予防線代わりに広睦くんとの間に自ら建てた壁だ。
「さ、何食べる」
「春美さん、疲れたんじゃないですか。今週忙しかったって言ってたし」
「うん。でも今は仕事が楽しいからいい疲労感だよ」
「じゃあ、いつものところ行ってもいいかな? 」
「もちろん」
疲れてはいるけど、さっと食べて帰るよりゆっくり話せるほうが嬉しかった。いつの間にか、広睦くんといる時間が癒しになっていることに気づいた。
「あ、そうだ。店入る前に……」
不意に抱き寄せられて、胸で顔を打った。
すぐに目を閉じて受け入れる。胸板の弾力のある硬さと肌の温度が薄い布越しに伝わってくる。とても心地の良いものだった。
いつか……この子の温かさも誰かに上書きされて忘れてしまうのかな。ドキドキするのにこのままでいたい気持ちに駆られる。彼越しに胸いっぱい空気を吸い込むと顔を上げて胸を押した。
「ほらほら、行くよ」
不服そうにする姿に安心して寂しくなって、きゅっと口角を上げる。余裕ぶってないと心が大きく揺れてしまう。
「まぁ、いいや。会ってる時は楽しまないと。ですよね」
心を読まれたかとドキリとする。けど、私に言ったというより自分に言ったみたいで、広睦くんは広睦くんなりにこの関係が終わる覚悟を持って過ごそうとしているのだろう。私とおんなじだ。
この日も気持ちいいくらいの食べっぷりに微笑ましく見ていた。
ガツガツ食べているのに食べ方が綺麗でつい見とれてしまう。……綺麗だなぁ。食べ方だけじゃなく、所作も表情も瞳も指先まで。
「春美さんも食べなよ」
不意に声をかけられて見惚れていたことに気が付く。
「あっ、うん。いただこうかな」
「ふ、見過ぎじゃないですか。何、見とれてんの? 」
広睦くんにバレていてがっくりと肩を落とした。恥ずかしい。
広睦くんは、ん?と首を傾げた。
「本気で見とれてたんだ」
ゴホンと咳払いをして恥ずかしそうに目を逸らした。見とれてたなんて冗談だったらしくからかうつもりが自滅してる姿が可愛くて吹き出してしまった。
「あはは、そんなに照れなくていいでしょ」
「自意識過剰な奴みたいになったじゃんよ」
「間違ってはないでしょ」
広睦くんはイーっと顔をしかめて気にしていない素振りで再び甘辛いたれのかかった唐揚げにかぶりついた。
かわいい。ほんっとかわいいなぁ。
私もチーズがたっぷりかかったところを避けて取り分けたサラダをつまむ。今日もこの後、食事が終わったら少し歩いて解散するのかな……。
名残惜しくてもう少し一緒にいたいと思う。だけど、この前『この後、私の家に来ないか』と誘っても微笑むだけだった。
彼なりに何か思うところがあるんだろう。無理に誘うのも気が引けるし、正直もう一度誘う勇気もない。なぜ断るの、って聞けたらいいんだけど今の曖昧な関係だから断るわけじゃないって言われると、辛いものがある。
このくらいにしておいた方がいい関係なのはわかっている。でも……。
綺麗な顔、男らしい筋の見える首元、すらりとした腕、私よりずっと広い肩幅。顎のライン、伏し目がちな目が妙に色っぽくて……綺麗な瞳……。
瞳……バチっと目が合ってヒヤリとするほど驚いた。私、何を考えて……。
「マジで照れるからやめてよ。なんだよ」
ぐっと胸が詰まる。
「あの、今日はこの後どうするのかなって思って」
自然に聞けばいいのに、ゴクリと喉が鳴ってしまった。あと、これだけ見つめた後で言うのも不自然で、広睦くんは綺麗な瞳を見開いた後、かぁ、と顔を赤くした。
顔の前で合わせた手で口元を隠し、そっぽを向いてしまった。
「や、何も考えてませんけど。もう遅いしちょっとウロウロして腹落ち着かして帰るかな、多分。今日も腹いっぱいだし」
「あ、そう。そうだよね」
広睦くんも食べる手を止めてしまい、私もこれ以上何を言っていいかわからず沈黙が続いた。
はあああー……
という広睦くんの大きくて長いため息が沈黙を破った。
驚いて顔を上げて様子を窺う。
「あのさ、正直この状態で部屋とか行けないからな、俺。何もしない自信ないからな。わかってんですか」
俯いたせいで顔に落ちた前髪をかき上げたまま、私を睨むように不貞腐れた口調でぼそぼそと溢した。
「この前はさ、早々に泊まるってホテルに連れ込んだのに、今更もじもじしてどうしたのよ」
つい、突っ込んでしまうと広睦くんはゲホっとむせ込み気まずそうに言い訳をする。
「あれは何も考えて無くて、勢いだったからだよ。今、ちょっとそこ無理。春美さん抱いた後に、『じゃあ』なんて俺簡単に切り替えれないし気持ちの整理つかなくなるっしょ。あー……もう、考えないようにしてるんだよ。そういう関係になるかならないか」
「キスはするのに」
「そだよ、逆に健全に、人前でしかしてないだろ。二人っきりはヤバいから……」
健全なのか、人前のキスが。でも私とそういう関係になりたくないわけじゃないってことだ。広睦くんには悪いけど少し嬉しかった。
コメント
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このエピソード、本当に切なくて甘酸っぱくて…胸がぎゅっとなりました。「何もしない自信ないからな」って広睦くんが本音を漏らすシーン、どきっとしつつ彼なりの誠実さを感じてじんと来ました。春美さんが見惚れてしまう気持ち、わかります。お互いに終わりを覚悟しながらも惹かれ合うこの距離感が、たまらなく愛おしいです。続きが気になりますね。