テラーノベル
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如何に若井さんが涼ちゃんを好きなのかを大森さん語りで。
部屋に入った瞬間に、スタッフたちが待ってましたとばかりに群がってくる。
俺、まだカバンも下ろしてないんだけど。
もうすぐ始まる夏季休暇に向けて、少しでもファンの子たちが寂しい思いをしないようにと、事前準備をしている真っ最中だから余計にか。プロデューサーとして決めることも多いけど、そんなのちっとも苦ではない。
ただ、まずは椅子にぐらい座らせてください。
次々に資料を出して質問してくるスタッフたちをさばいていき、やっと一息つけた。この後は二人と合流してテレビ番組のコメント撮りと、雑誌の取材だったっけ。
「元貴、この前収録したJAMS’Q&Aの編集が終わったから、一緒に確認してほしいんだけど」
群衆が散っていくのを待っていたのか、映像の編集スタッフがパソコンを持って声をかけてきた。確かに映像確認となると時間がかかるもんね。
「は~い」
返事をして、ソファーに座っている自分の横をポンポンと叩いた。彼が横に座ると、テーブルの上に置かれたパソコンが映像を映し出す。俺はちょっと溶けかけているアイスを食べながら、パソコンを食い入るように見つめた。
あら、涼ちゃん、いっぱい質問に答えてくれてるんだね。本当は俺ももっといっぱいガチャガチャを回したかったんだけど、スタッフとの打ち合わせやライブの最終確認したりしてたから、ほとんど回せなかったのが残念だったなぁ。
お、衣装に着替え終えた若井が前のめりで登場。
え~、俺も涼ちゃんと一緒に指相撲したかったのに。
大きな喚き声を上げる涼ちゃんは一番年上なのに、一番子供っぽい。容姿に反して負けず嫌い。そういうとこ、本当に可愛いよね。しかしいくら声を上げても劣勢は劣勢のままだった。笑えるぐらいに弱すぎる。
『いたっ!パキッ!ていった!』
『おい、人差し指なしだぞ!』
言いながら若井は自分の人差し指を涼ちゃんの手に重ねたかと思うと、直後には手全体で覆ってしまう。なに二人で手を握り合ってんの?しかも両手で。結婚式で誓いでも交わしてんのかよ。
「って、ちょっと待った!」
映像を見ていた俺は、思わず待ったをかけてしまった。
「……ねぇ、こんな若井、ファンの子たちに見せちゃっていいの?」
涼ちゃんへの愛情が滲み出てるというよりも、もう気持ちが駄々洩れも駄々洩れ。思いっきり底なしになっちゃってますけど。顔がにやけまくってますけど。
「ん~、いいんじゃない?だってそんなこと言ってたら、若井と涼ちゃんの二人きりの映像は一生世に出せなくなっちゃうし」
「…まあ、確かに」
若井のやつ、フェーズ2が始まったころは、もう少し涼ちゃんへの気持ちを抑えてたはずなんだけどなぁ。
最近じゃ、テレビミセスのディズニーリゾートロケのとき、涼ちゃんにカチューシャつけてもらって超テンションMAXだった。賞をもらって登壇するときに、さりげに涼ちゃんの腰へと手を当てて支えてあげてたし。もっと前には、涼ちゃんが転ばないようにと、移動中はずっと大きなスカートの裾を持ってあげてたもんね。
手の大きさを比べたり、涼ちゃんの頭を何度も愛おしそうになでたり、顔をつかんで頭ごっつんこしたり、スウェットパンツを引いてパンツを確認したりと、言い出したら本当にきりがない。
あ、ちなみに言っておくけど、この二人は付き合ってはいないから。
目下、若井が涼ちゃんの心の壁をよじ登っている最中なのだ。
「あはは、あんまりにも涼ちゃんに大好きアピールが伝わらなさ過ぎて、無意識に気持ちが爆発しちゃってんじゃない?」
すでに達観しているのか、彼は笑いながらに言う。
スタッフたちもマネージャーたちも、若井の涼ちゃんへの気持ちは気付いているのに、肝心な当人は全く気付いていないのが、ねぇ?
ほんと鈍感だよね、涼ちゃんって。人の感情には敏感なのに、自分へと向けられる恋愛感情に関してはびっくりするぐらいに気付かない。
なのに、時に小悪魔でもある。
この前だって若井、赤鬼の涼ちゃんを初めて見た時は見惚れて言葉を失っていたけれど、今回のこの妖精な涼ちゃんを見たときも瞬きすらしないで息を詰めていた。俺や周囲のスタッフが称賛している中、若井だけは言葉もなくただ涼ちゃんだけを見つめていたのだ。
『ねえ、若井、どう?似合ってる?』
唯一称賛をくれない若井の前に立ち、こてんと首を傾けて聞いた涼ちゃんは無意識の小悪魔だった。
『……あ、あぁ、うん。涼ちゃん、すっごく似合ってるよ』
なんとか絞り出した言葉は、いつもの若井の声量ではなくて。声、ちっちゃ!
これは視覚からの圧倒的な刺激に、脳が処理しきれてないんだろうな。
まあね、こんな可愛くて綺麗な33歳男性が、この世に存在していることが奇跡だよね。
Atlantisの女神と今回のこの妖精は完全に美人姉妹でしょ。自分の衣装センスを褒めてやりたい。如何に涼ちゃんを素敵に着飾るかをモットーにしていますから。
「もうさ、とっとと告白しちゃえよって思うわ…」
のん気にいちご練乳の話してる場合じゃないだろ。
若井ってさ、涼ちゃんと二人になると途端に彼氏感を出すクセに、肝心なとこで勇気を出さないよね。早く涼ちゃんの彼氏の座を射止めないと、他の誰かに奪われちゃうよ。
とりあえず今晩食事にでも誘って、さっさと告白しちゃえばいいんじゃない?
後で若井に会ったら、けしかけてやろっと。
~END~
コメント
1件
大森さん視点で若井の涼ちゃん愛が駄々洩れなの、にやにやが止まらなかったわ(笑)「とっとと告白しちゃえよ」って大森さんのツッコミ、もう完全に読者の代弁者だよね。涼ちゃんが無自覚小悪魔すぎて、若井の気持ちが伝わらないもどかしさがたまらない…この二人のフェーズ、もっと見たい!