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第4話
「……家、来ます?」
その一言で私は固まってしまった。
「あ、ええっと……その……」
そうあやふやになりながら彼はなんとか言葉を繋ごうとした。
「つまり……その……飛び出してきたんです、か? あ、変な勘違いだったらすみません」
そう言って手を左右に振っているけど勘違いじゃない。
「ううん。凄い当たってます」
「え、あ……とりあえず帰れそうに無いんです、よね……」
私は苦笑しながら「えぇ」と頷いた。
「それじゃあ今頃、聖騎士たちは捜索しているって事ですね」
「はい。恥ずかしながら知り合いという知り合いがこの近くにはいないので……泊まらせてくれませんか?」
そう言うと彼は少し自分のした事を自覚したのか固まったけど直ぐに頷いた。
それから彼の後ろを付いていった。
それでもすぐ近くにあって中に明かりがついてた。
家の外観は小屋みたいな感じで周りは……木と雑草。町の外れにある小屋にしか見えない。
中に案内してもらうと綺麗で彼らしいと思った。私と同い年の女の子が一人椅子の上でうとうとしていた。
「ソフィー」
そう囁くと女の子は「う〜ん……」と目を擦りながら私と彼を見た。
「……って! え? 彼女?」
我に帰った女の子は頭の整理がついていなくて混乱している。
「違う。彼女を泊めたいから今夜は一緒に寝ていいか?」
「別に駄目じゃないけど……びっくりさせないでよね」
そう言って女の子はため息を付いた。
「アニカです。よろしくお願いします」
私はそう言って頭を下げた。
「ソフィーって呼んで下さい。何か困った事があれば何でも言って下さい」
そう挨拶を交わしていると私のお腹が鳴った。
「あら? まだ食べてなかったの?」
「……はい。夕方、出てきてそのまま何も……」
「そっか……お兄ちゃん。何か作ってあげて」
「うん」
彼はそう言ってキッチンに立った。私は椅子に座っていた。
大丈夫かな……城は今頃、夜中と思えない程バタバタしているだろうけど帰れない……
窓から夜空をながめながら私は唇を噛んだ。
「あの……これ……」
彼の声で私は我に帰った。
スープが盛られた木のお皿が私の目の前に置かれていた。
「あ、わざわざありがとうございます」
彼はスープを木のスプーンで掬って食べ始めた。私も彼が食べ始めたので食べ始めた。
美味しい……初めてなはずなのに懐かしい……
何だか好みの味だった。
前を見ると緊張している彼の姿が見えた。
私はスープを食べ終えると「美味しかったです。突然のお願いなのにこんなに手厚くしてもらってありがとうございます」と頭を下げた。
彼には頭が上がらない。泊まらせてくれる約束をしてくれた上、護ってくれた。
彼の仕事なのかもしれないけど、こんなに優しくしてくれる人なんてそういない。
お見合いに何度か行った私には分かる。同じ年代の人にこんな人はいなかった。
「アニカ。お兄ちゃんが困ってるよ。こういう時に何も声を出せなくなるんだよ」
え?
顔を上げると顔を真っ赤にしてどうしようか困り果てている彼がいた。
「あ、ええっと……もう休んでて大丈夫ですよ」
そう言って彼は私の事を部屋に入れた。
私は部屋の中にあったベッドに横になった。ベッドはいつも使っている上質な物じゃないけど、普通の寝心地だった。
疲れがどっと出て直ぐに眠りにつけた。
✡
あぁ……もう、恥ずかしい……
そう思いながらアニカ姫を僕の部屋に入れた。
「あれ? 照れちゃったの?」
意地悪そうに微笑むソフィーがいてため息しか出なかったた。
「ソフィーも、もう寝て」
僕はそう言って後片付けをした。ソフィーも眠気が限界まで押し寄せていたのか欠伸を噛み殺しながら部屋に行った。
次の日の朝方。
僕はいつも通り朝日が昇る頃から剣の訓練をするために外へ出た。
いつものように剣を振っていると後ろから人の気配を感じた。
後ろを向くとアニカ姫が僕の事を見学していた。
「朝早くから凄いですね」
そう言ってアニカ姫は空を見上げた。
「なぜ、頑張れるのですか?」
なぜって……
「もう二度と、大切な人を失いたくないから……」
僕が剣を見つめながら言うとアニカ姫は「もう二度と、大切な人を失いたくない……」と口の中で転がしていた。
僕はその横で鍛錬に励んだ。絶対にソフィーだけは護らないと……
もちろん、アニカ姫を護るのが僕の仕事。だけど、僕がこうやって励めてるのはソフィーを、つまり、家族を失いたくないから。ただ、それだけ。
アニカ姫は僕の汗水ながして鍛錬しているのを横目に何かを考えているように見えた。
いぶきざん