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第5話
もうそろそろ、出発しないと遅刻してしまう。
だけど、アニカ姫を置いていくのは気が引ける。ソフィーに任せる事も頭を過ぎったけど、ソフィーも人を護るような事はした事無いし、危ない事には巻き込めないので辞めておいた。
「待ってますよ。私はもう少し残ってていいのか分かりませんが……」
「良いんだよ。じゃあ、私と一緒に刺繍やってみない?」
ソフィーがそう言ってアニカ姫の腕を掴んでいる。
僕はそれをみて安心したので城へ向かった。
城に着くとバタバタと聖騎士たちが動いていた。
「ロルフ。アニカ姫を知らないか?」
騎士団長が僕に話しかけたけど僕は首を横に振った。
「そうか……見つかったら教えてくれ」
そう言い残すと団長は慌ただしく去っていった。
これが、嘘か……
「ん? ロルフか。心配じゃないのか?」
団長が去ったと思ったらマルコさんが僕の隣にいた。
僕は首を横に振った。
これは嘘じゃない。妹と二人で過ごしている姫なんて心配じゃない訳が無い。
「そうだよな……自分の担当のお姫様が失踪したんだもんな……って何で姫が失踪したのか知ってるのか?」
何で……? 気にした事無かった……
僕は首を横に振った。
「王に結婚を押し付けられたんだ。姫の気持ちも分かるが……自分にもしもの事があったらと考えると跡継ぎは欲しくなるよな……」
え? 嘘っ……
僕、家に来ないかって誘ったけど……
「ん? どうかしたのか?」
話している途中で顔を覗かせた。
僕は一生懸命、首を横に振ったけど何やら気づかれた気がした。
「まぁ、姫も元気にしてたら良いんだけどな……」
「うん……」
僕はそう頷いた。
今日は何だか仕事も殆ど無く、僕も探しに出ろと言われた。
僕には昨日言った事が心にグサッと刺さっていた。
「今日、元気がないって聞いたけど……」
ロザンナが僕の背中に話しかけた。きっとロザンナも捜索に出されたのだろう。
もし、見つかったらどうしようか……
「ロルフのせいじゃないよ。姫様だって色々とあったんだろうけど、ロルフの事を嫌っているようには誰も思ってない」
そう言って僕の頭を撫でてくれる。ロザンナは出会った時から僕の姉のように接してくれている。
「まぁ、きっと大丈夫。あの姫様の事だしね」
ロザンナはそう言ってウィンクを飛ばした。
僕もおぼつかない笑顔で頷いた。
それで今日はアニカ姫は見つからずに終わった。
僕は帰路でお茶を買い足してから夜道を歩いた。夜空はとても綺麗で月明かりが一人歩いている僕を照らす。
でも、夜空を眺めていると道中にある林から魔物の気配がした。
シルバータイガーだ。毛は鉄のように硬く、刃も通らない。牙と爪には毒があって普通の人は出会ったら死を覚悟する魔物だ。
それも何匹かの群で僕を囲んでいる。僕もこんな量のシルバータイガーは相手をした事が無い。
僕は深呼吸をして息を整えてから剣を構えた。
✡
「何だか今日は遅いな……」
そうソフィーが夜空を眺めながら呟いている。
「いつもはもっと早いの?」
「うん。凄く早い時は日が暮れる前に帰ってくるけど、こんなに遅くなったのは久しぶり」
「きっと、私がいなくなったから仕事が伸びているのかも……」
「え? どういう事?」
まだ、ソフィーには私の話をしていない。
話そうか迷ったけど本当にバラさないといけない時まで取っておいている。
「うぅん。何でもない」
私はそう首を振るとソフィーは深くため息をついた。
「大丈夫だと思うけど……お兄ちゃんの事だからな……」
「百戦錬磨の彼なら大丈夫よ。アイアンゴブリンに襲われていた私の事も救ってくれたんだし」
それに、この国唯一の姫である私の護衛も任されている。
「うん。そうだよね」
そう言ってロルフさんの無事を二人で願った。
✡
三匹は倒せたけどその後の七匹が苦労する。魔法が使えない僕には魔法で蹴散らすみたいな事はできないけど、剣一本でどうにかシルバータイガーの動きは止められている。
シルバータイガーと僕は今の所五分五分の、強さだけど僕の体力がもうそろそろ尽きる。
鍛錬をしてもらってからの帰り道だから体力の有余はあまり無い。だから短期戦で済ませたい。
僕は毛の薄い所を狙ってなんとかやっつけた。
道端に九匹、とても強い魔獣が落ちている。僕は素材の回収をしてソフィーに作って貰ったポーチに入れた。
その代わり、頬に傷と腕を噛まれた。
どちらにも毒が入っていて魔法が使えない僕には何も出来なかった。
僕は血を垂らしながら家に帰った。
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海の紅月くらげさん
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