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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。現在私はダンジョン最深部でダンジョン内部の状況を映像で見ています。マスターの魔法の一種で、大変便利です。何かに応用出来ないかな?
「俺達農園の外に出た筈だよな?なんでここに居るんだよ?」
「マスターの魔法です。感謝します、マスター」
『造作もないことである、勇敢な少女よ』
そう、馬車で農園を出た私達は、打ち合わせ通りマスターの転移魔法でダンジョン最深部に移動したのです。
非常に便利ですね。これも応用出来ないかな?
「ふむ、不思議なものですな。遠くの状況をつぶさに観察できるとは」
壁に映し出されている映像を眺めながらセレスティンが興味深そうにしています。
『勇敢な少女曰く、写真なるものがそなた達にはあるのであろう?それを真似てみたのみである』
「ワイトキング殿、真似るだけでこのようなものを産み出すとは素晴らしい技量。皆目検討もつかぬ」
『称賛を受け取ろう』
お年寄り同士が和やかにお話ししていますね。
「こいつがあれば、どんなに離れていても正確に状況が分かるな。こいつは便利だ」
ベルも感心しています。
「マスター、魔法の原理を解き明かせばこの魔法を再現できるでしょうか?」
『不可能とは言わぬ。人間は技術によって魔法の再現を行ってきた。時はかかろうとも、何れは再現できよう』
「また学ばせていただきますね」
今の連絡手段は手紙と伝書鳩。正確性や時間に問題を抱えています。どんなに離れていても連絡を取り合えるなら、それだけで情報面で有利にたてます。何とかならないかな。考えてみますか。
「それにしても、お嬢もエグいトラップを用意したな」
『勇敢な少女は策士でもあるようだ。我も感心した』
「誉めないでください、照れます」
「いやいや、シスターも引いてるじゃねぇか。って!危なっ!!」
あっ、シスターにトラップのひとつが作動してしまいました。後ろから迫る矢を首を傾けるだけで避けるのは凄いけど……あっ。髪が痛んだ。不味い。
「怒られるぞ、お嬢」
「これは叱責されますな、お嬢様」
『危うく命を奪うところであったな』
なんと、私は怒られるみたいです。ううっ、今から憂鬱です。
「それで、お嬢。アンデッドはまだ導入しないのか?トラップだけで四人殺れたが」
そうなんです。最初のお宝トラップに引っ掛かるとは思わず、退路の落とし穴トラップも保険として一応用意していただいただけ。それなのに合計三人も引っ掛かる結果になったんです。
正直この成果は予想外です。
『あの者達は極度に怯えておる様子。以後そなたが言うままに用意したトラップに引っ掛かるか否か分からぬ』
「マスター、アンデッド投入は自由に行えるのですよね?」
『無論である』
「では、予定を少しだけ延ばして様子を見ましょう。以後のトラップに引っ掛かるかどうかで判断します」
流石にアンデッド投入をしないままとはいきませんが、気にはなりますからね。
私は微かな期待を胸に映像へと視線を向けるのでした。あっ、次のトラップの場所です。
カテリナです。トラップの数々を、と言うかまだ三つですが。それらを乗り越えて足場の悪い通路を進撃しています。しかし、まだ部屋には辿り着かないのも考えものですね。
「注意しろよ、死にたくないならな」
まあ、彼らがまさにおっかなびっくりと言った様子でゆっくりと進んでいるからかもしれません。何でもない岩肌の隆起にすら警戒する始末。確かに用心深さが必要だと体験したでしょうが、これでは精神が持たない……おや、次ですか。
「なんだ?」
「キッドさん!湧き水だ!」
確かに視線の先には、岩肌から流れ出る綺麗な湧き水がありました。ご丁重にコップまで有ります。
「あからさますぎるだろ。毒だ、飲むなよ」
「けど、喉が乾いたぜ」
緊張しっぱなしですからね。それに多分、シャーリィの性格ならばこれは…。
「おいシスター!?」
私は前に進み出て用意されたコップで水を飲みます。うん、美味しい。やはり毒ではありませんね。
「何ともありません、ただの水ですよ」
「だが、遅効性の毒かもしれないだろ?あんたにしては不用心だな?」
「私や貴方はまだしも、他の皆さんは水でも飲まないと落ち着かないでしょう?緊張の連続では身体が持ちませんよ」
「俺は飲むぜ!」
「俺もだ!」
我も我もと六人は湧き水に群がって水を貪ります。喉が乾いてたんですね。
「驚いたな、率先して安全を確認してくれるとは思わなかったよ」
「今は大事な仲間です。水でも飲めば少しは気が休まるでしょう」
一安心したところに追撃。シャーリィならそれを狙う筈。つまり、この湧き水は次のトラップの布石。
もし私の予想が外れて遅効性の毒だったら、その時はあの娘をちゃんと理解してあげられなかった私自身の落ち度です。悔いはありません。
皆が水を飲んで少しだけ緊張が解れていますね。
「ふぃぃ、生き返ったぜぇ」
「生きた心地がしなかったもんなぁ」
「とんでもない場所だぜ」
「ダンジョンってのはそんなもんさ」
各自一休みをしていますね。こいつら、私達を殺しに来たことを忘れてませんか?
いや、キッドだけは時折私を伺うような視線を然り気無く向けてきますが、他の六人は完全に心を折られていますね。もう生き残ることしか考えていない。
残念ながら、シャーリィは敵対者を生かしません。あの娘の逆鱗に触れたことを後悔しながら死ぬしかありません。
「ふぅ……」
一人が壁に寄りかかると、ショッと眼にも留まらぬ速さで岩から刃が飛び出して首を一閃しました。
ふむ、誰も気付いていませんね。本人も何が起きたか分からないまま死んだことでしょう。
「よし、先に進むぞ」
「へい」
「おい、早く行くぞ……ひぃいいいっっ!!」
一人が壁に寄りかかった男に触れると、まるで人形のように首が落ちて胴体から血飛沫があがります。
「何があった!?」
「また何かあったのかよ!?げぇえっ!!」
更に一人の足下から槍が飛び出して股から頭を一直線に貫きました。これはこれは、人間の串刺しですか。趣味が悪い。
「またかよ!?なんなんだよ!?」
「落ち着け!動くんじゃない!」
「わっ、分かった!」
立ち止まった一人が振り向くと、天井から勢いよく振り下ろされた鎌によって。
これは酷いですね、文字通り縦に真っ二つにされてます。
「ぁあああっ!!」
「もうやめてくれぇええっ!」
「くそぉっ!なんなんだここはぁ!?」
いよいよ恐怖が蔓延してきましたね。さてこれで残りはキッド含めて四人。そろそろ退場してもらいましょうかね。