テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#このキャラでログインしたい
298
『武装のチェックは大丈夫か? すぐに戦える状態になったか?』
「う、うん……大丈夫。種類自体は、いつも通りだし」
色々と詳細を聞いたり、他の書類にサインしたりした後。
それじゃやってみるかーという、物凄く気軽な感じで後日もう一度ログインさせられた私。
なんかメニュー表示が色々変わっていたり、明らかに開発陣専用みたいな項目も増えていたので、妙にビクビクしながらゲーム内へと入ってみれば。
前にログアウトした安ホテルとは全然違う、滅茶苦茶高級そうな一室へと出現した私のキャラクター。
思わずキョロキョロと周囲を見回してしまったが、そんな事より装備を変更しろと言われてしまい。
いつの間にかアイテム欄に入っていた、件の拳銃とスーツを身に纏った。
スーツすごぉ……防弾だって言ってたので、ゴワゴワする感じはあるけど滅茶苦茶格好良い。
これまで普通のスーツって感じだったのに、急に高給取りになった気分だ。
鏡に映った自分のキャラクターを見る度に、「うわっ、格好良い」ってなる。
そして何と言っても新しい銃。
手に持ってみると、これまで使っていた奴とは全然違う。
これぞカスタム拳銃って感じの見た目をしているし、何かメーカー? のロゴまで入っちゃってる。
アイテムの詳細には、コンバットマスターとかって文字も見えるのだが。
この時点で強そう、凄い名前。
そんな新しい銃を腰のホルスターに差し、予備のマガジンもたくさん腰に差していけば……あとはオマケを幾つか。
一応コレで、戦闘の準備完了。
『銃弾の種類とかそういうのも色々違うんだが……まぁ、その辺は後で良いよな? 簡単に言うと、これまでの弾より強いって事だけ覚えておいてくれ』
「大きさは一緒に見えたけど、違うの?」
『まぁ、色々とな。そういうのが知りたかったら、後で詳細を確認してくれ』
へぇ、そういうのもあるんだ。
やっぱり銃って難しいな。
とりあえずハンドガンで出来る“行動”を中心に覚えてしまったので、銃そのものに対してはまだまだ理解が足りていない。
などと思いつつも……何度もホルスターから繰り返し銃を抜いて、感覚を身体で覚えていく。
うん、平気そう。
細かい所の形は全然違うけど、一応初期のハンドガンと同系統? みたいだし。
詳細には“2011”って書いてあったけど……これが名前で良いんだよね? 2011年とかに作られた銃なのかな。
だとしたら、かなり古い。
まぁ良いんだけど、使いやすいし。
『さって、それじゃそこから、一気に相手の本拠地の近くへ飛ぶぞ? 相手にも通知は行くし、それこそ厳重警戒状態にはなると思う。そんな中を、お前は単騎で突っ込む訳だ。心の準備は?』
「ぜ、全然自信無いです……」
『気楽にやれ、マジで。例え負けちまっても、別に問題になる程じゃない。最悪の場合は、他の賞金首も呼んでサポートに入って貰うから。そっちも今日テストプレイ中だしな』
そんな事が出来るのなら最初から呼んでよ! 一人じゃ無理だよ!
とか言いたくなったけど、他の人と一緒にとか私が無理だった。
同じ立場の運営側のプレイヤーですよーって紹介されても、まともに喋れる気がしない。
『いいか? これからお前が行くところは、ここ最近なかなかの速度で成長していってるクラン。街の一角でデカイ建物を購入してな、そこを拠点に周辺のイベントステージを独占してる傾向が見られる。そこに訪れたプレイヤーが、ソイツ等に邪魔されてイベントに参加出来ないって状況が多数報告されてるって訳だ』
「うへぇ……狩場の独占ってヤツ?」
『だな。それでお前には、その建物に潜入……んで、クランリーダーを狩る事が勝利条件になる。クランVSクランの戦闘だが、お前は一人。ここまで良いか?』
良いけど良くないです、勝てるの? ソレ。
全く持って自信無いんだけど、そもそも相手もNPCじゃなくプレイヤーだし。
それこそ人間ならではのやり辛さ、みたいなのが発生しそうなんだけど。
もっと言うのなら、多勢に無勢もいいところだし。
ここ一ヶ月で、ハンドガン以外にも多少は知識を付けて来たが……どれもこれも、本当にオマケ程度なモノだ。
そんな私が大立ち回り出来るのかと言われると、ねぇ?
『今回の襲撃は、ある意味運営側のテストイベントに近い。だからこそ負けたって文句は言われないさ。そしてもしも敗北、このままでは“賞金首”の存在価値が薄いと判断される状況になったら……サポートの方を強化する手筈になってる。分かりやすく言うと、管理側だからこそ出来るチートだな』
「具体的には?」
『壁越しでも相手を見える様にしたり、相手が銃を向けている先が分かる様に弾の通るラインを表示したり。あとは現状俺みたいな“サポーター”は、ゲームシステムにもあるカメラのハッキングって事で視界を制限されてるけど。コレ等の制限を解除した状態でお前達をサポートする事になるな』
分かりやすい体力無限とか、攻撃力超絶アップとか。
そういうのじゃなくてある意味安心したけど。
とは言っても、銃のゲームにおいてソレは結構エグいレベルの“ズル”だよねぇ……。
とはいえ運営の用意したエネミーなんだから、それくらい使って当たり前なのかもしれないけど。
でもどうせやるのなら、可能であるのなら。
そういうのは、本当に最低限にしたいなぁ……。
仕事と言われれば仕方ないんだけど、一応私も“プレイヤー”のつもりだし。
ズルして無双したい訳じゃない上、ちゃんと戦って勝った方が……“楽しい”のは確か。
「私が勝てば、今の状態のままで良いって事だよね? 武装と、お兄ちゃんからのサポートだけでもズルいかもしれないけど。それでも、これだけなら他のプレイヤーでも再現可能って事だもんね?」
『未実装武器以外はな? とはいえ、そっちの銃も弾も、能力値的には他の武器でも再現可能だ。だからこそある意味、現状では正々堂々ガチンコの状態で喧嘩を売る感じになるな』
「ん、分かった。やってみるね」
大きく息を吸い込み、今一度部屋に設置された鏡を覗き込んだ。
そこに映っているのは、普段の私とは似ても似つかない渋い感じの男性。
ピクリとも表情を動かさない、冷静沈着な殺し屋。
プレイヤーネームを『6key』とか付けちゃったのは、ちょっと反省だけど。
とにかく、名前以外は凄く格好良い感じの男の人。
今私は、普段の私じゃない。
運営側に選ばれた、賞金首に登録されたプレイヤー。
集中、集中しろ……ダメダメな普段の私じゃなくて、今はこの人が自分自身なんだと思い込め。
普段通り、いつも通りに。
大きな仕事を任されたからとは言え、無駄に緊張すれば失敗する。
だから、いつも通りだ。
NPCとかプレイヤーとか、違いを考えるから緊張する。
だったらもう、そんなの気にせず全て“敵”だと認識しろ。
ここから向かう先に居るのは、全部敵。
それを全て撃ち倒す、ただのゲーム。
そう考えれば……もう、何回もやって来た筈だ。
この一ヶ月で、数えきれないくらいにイベントをこなして来たんだから。
「…………大丈夫、いけるよ」
『OK、それじゃ早速行こうか。お前の本当の初陣だ……今回は“殺さず”なんてヌルい条件はなし、本当に好きにやって良いぞ? 思いっ切り暴れて来い、夢月』
「了解」
兄の言葉と同時に此方の身体は光に包まれ、“テレポート”的な行為を開始した。
さぁ……やろうか。
お兄ちゃんが作ったゲームで、好き放題我儘やってるプレイヤーにお灸を添える為に。
このゲームを、誰もが思いっ切り楽しめる様にする為に。
私は今日、管理者に使われる殺人鬼になる。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!