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※クランバトルが申し込まれました。
本日20:00時より、時間制限有の特殊ルールに則りクラン全体を巻き込んだ戦闘が行われます。
挑戦者、所属のクラン『未加入』。
挑戦者、プレイヤーネーム『6key』(賞金首)。
賞金首からの挑戦状の為、勝利条件、勝利報酬が通常とは異なります。
下記をご確認下さい――
「なぁんて、ご丁寧に通知を寄越してくれるんだな。普通なら強襲でも何でも有りだろうに」
「運営から用意された特殊エネミーだって言うから、てっきり偶発的に襲って来る様なイベントかと思ったけど。意外と律儀だねぇ、公式さんも」
仲間達と一緒に、クランで買い取った建物内で談笑していた。
最近始まった、“賞金首”のイベント。
目撃例がいくつか上がっていたが、馬鹿強いエネミーが一対多の状態で襲い掛かって来るんだとか。
次の標的として、早速ウチが狙われたらしい。
まぁ最近は結構派手に動き始めたところだったので、あまりやってると運営に目を付けられるかなぁとは思っていたが。
まさかこういう形で制裁を加えて来るとは。
こっちがルールに則った形でやっていたら、向こうも新たなルールを作った上で、その範囲内で出た杭を打とうってか?
やるねぇ……流石は鬼畜ゲーばっかり作ってるゲーム会社。
やる事がいちいち面白い。
そんでもって、神出鬼没かと思われた“ボーナス”が、向こうからウチに来てくれるというのだ。
これは狩るしかないでしょう。
という事で、クランに所属している面々に全員声を掛けた。
ネトゲにしてはなかなか妙な時間設定ではあったものの、何とか全員が集まってくれたのは幸いという他無い。
ウチは学生組が多かったみたいだし、コレで社会人が交じっていたらこんなに簡単には集まれなかったと思うが。
とはいえ、これでコッチは全勢力。
たった一ヶ月で数十人は集められたのだ、なかなかのモノだと自分でも思う。
そしてこの状況に挑むが……賞金首と呼ばれたボーナス、相手は一人。
中身は運営が用意したプレイヤーなのか、それとも能力ガン盛りのNPCなのか詳細は知らないが。
どちらの場合でも、なかなかキツイ状況に陥ると覚悟しておいた方が良いだろう。
前者だった場合は、それこそ“こういうゲームのプロ”なんかを用意してくる可能性だってあるのだから。
とはいえ……。
「たった一人でどうにかなるもんかねぇ? 結構挙動はリアルに近いってゲームで、数十対一って。正直、笑えるんだけど。映画の主人公じゃねぇんだからさ」
仲間の一人が、ケラケラと軽い感じに笑いながら酒を呷っていた。
ゲーム内だからこそ飲める、という状況ではあるが。
ワルを気取っているビジュアルもあって、なかなか様になっている。
まぁそっちは良いとして、実際コイツの言う通りなのだ。
最初こそ、あまりにもシビア過ぎるゲームシステムに混乱する事が多かったが。
慣れてみれば、大した事は無い。
ゲームそのものが求めているスタイルなんて無視して、人数揃えて銃弾をバラ撒けば大抵勝てる。
数こそ力とは、よく言ったものだ。
「さて、そろそろ時間になるけど……おーい、お前等準備良いかー?」
申し込まれた対戦が始まるまで、残り数分。
この辺りで全員に無線を繋いで声を上げてみれば、いくつもの声が反応を返して来た。
建物は三階建、現状上から下まで兵隊が居る状態。
しかも建物周辺にも警備する面々を配置した。
さてさて、最近始まったばかりの美味しいイベント、賞金首様はどんな感じに攻めて来るのか。
クランを立ち上げた数名と一緒に、最上階でニヤニヤしながら指定された時間を待っていると。
「……時間だ」
20時丁度。
システムクロックがその数字を表示した瞬間、全員銃を取って立ち上がった……のだが。
しばらく待ってみても、銃声の一つすら聞こえてこない。
なんだ? まさか相手方が遅刻……なんてのは、流石に無いだろう。
相手は運営陣が用意したエネミー、既に近くに潜んでいて此方を観察しているものかと思ったのだが。
他のところから上がったこれまでの情報を見る限り、普通の大規模戦闘とはまた違った雰囲気の戦闘が始まる筈なんだけど……。
だとすれば、何も起きていないという事は無い筈なんだ。
「イエーイ、皆見えるー? これから、話題の“賞金首”が襲って来るんだってさ。だからクラン全体で警戒中~。もしかしたらガンサバの賞金首の一人、その公開配信になるかもしれないよー? ガンガン宣伝してねぇ~」
どうやら仲間の一人がネットで動画配信をしているらしく、スマホを自分達に向けながら気楽な事を言っている。
このゲームは、見ている映像をそのまま動画にする事が出来ない。
少なくとも、普通のプレイヤーには。
運営側のシステムブロックで、こうして現実の様にスマホやらカメラを用意しないと外部に映像が届けられないのだ。
そんな事をやっていれば当然余計な事に気を使う事になるし、スマホ片手に銃撃戦をやる馬鹿は居ない。
とはいえ、これだけの兵隊が集まって居るからこそ余裕をぶっこいている状態なのだろうが。
なので、特に相手を止める様な真似はせず。
どうせならウチのクランの宣伝頭にでもなってもらおう。
運営が用意した、ウォンテッドのイベント……この勝利者に輝いたクランとして。
なんて、口元を吊り上げていたのだが……おかしいな、本当に何も起こらないぞ。
「あー、その、なんだ。全員聞こえるー? 誰か、それっぽい奴とか見かけた?」
なんというか、若干気の抜けた状態で声を上げながら無線機に喋り掛けてみると。
向こうからは、特に問題無く声が返って来た。
問題なーし、とか、異常ないっすーという気の抜けた返事。
ロールプレイやってる奴とかは、クリアって声を上げて来たりするが。
んん? こりゃ本当にどういうことだ?
俺等、今回のイベントのターゲットになったんだよな?
便乗した誰かの悪戯とかなら分かるが、ちゃんとシステム通知さえ届いているし。
これが偶発的に相手と遭遇、もしくは街中で急に襲われたとかって状況ならまだしも……ちゃんとクランバトルを申し込まれてるしなぁ……。
どうしたもんか? と、思わず首を傾げてしまったが。
『あれ? ちょいちょい、監視カメラ接続エラー出てるよー? そっちの地域にいるのって誰だっけ? ちょっと確認して、アイテムの耐久値がアレだったら“修理コマンド”入れれば直るからー』
急に、そんな声が聞えて来た。
普段だったら、別になんとも思わない様なクラン内の設備に関しての会話。
だがしかし、その不具合が“今”起きたとなれば。
「ちょっと待った! それってどこのカメラだ!?」
『え? あー、南側駐車場辺りの……あ、もう一個接続エラー出た』
「駐車場付近! 誰か応答しろ!」
思い切り声を荒げて無線機に怒鳴ってみたが、向こうからはしばらく沈黙が続き。
やがて。
『クリア』
ポツリと、小さな声で返事が返って来た。
しかしながら、今この瞬間だからこそ違和感に気が付けた。
「お前、誰よ。プレイヤーネームは?」
続けて声を上げたが、向こうからは再び無音。
その後、ガリッとノイズを立てて本格的に何も聞えなくなってしまったではないか。
これはもう、決まりだろう。
「来た来た来た! お前等南側駐車場から相手が来たぞ! ウォンテッド“6key”とやらのお出ましだ! 全員戦闘準備!」
叫んだ後は、無線から慌ただしい声がひたすら鳴り響く。
誰も彼もバタバタと移動し始めたらしく、建物全体が慌ただしくなっていくのが分かる。
始まった、今回の美味しいイベントが。
絶対逃がさねぇ、開始されたばかりの新イベント。
攻略も、特別報酬をゲットするのも、俺等で決まりだ。
そんな事を思いつつ、どこまでも口元が吊り上がっていくが。
「……は?」
急に、室内の明かりが落ちた。
慌てて廊下に飛び出してみたが、どうやら建物全体の電源が落とされたらしい。
相手は最初にこっちの電源設備を狙って来たみたいだが……残念だったな。
こっちはそういうのさえ予見して、予備電源がすぐに作動する様になってるんだよ。
どこまでも相手が此方の術中に嵌っていく様で、ニヤけた口元を更に吊り上げてしまったのだが。
『あの……南側駐車場、だよな? 誰も居ねぇぞ? 配電盤は確かに壊されてるけど、敵の姿がねぇ』
「……は? ならもう潜入されてるって事だろうが! 探せ!」
『あー、もしもーし、こっち建物内部~。同じく南側来たけど……マジで、誰も居ねぇぞ?』
いやいやいや、居るだろう、絶対。
配電盤が壊されたって事は、外部から敵が来たって事だろうが。
なのに相手の姿が見つからねぇって、いったい何なんだよ。
この建物、そんなかくれんぼが出来る様な構造にはなってねぇぞ。
「間違いなく居る! 何処かに隠れてる筈だ! これだけ兵隊が居て、見つからねぇとか有り得ねぇだろうが!」
とにかく叫んで、システムメニューを開いてみるものの……駄目だ。
このゲーム、フレンドやクランメンバーの名前は表示されても、状況までは確認出来ない。
だからこそ、今この状況での仲間達の様子が把握出来ない。
「点呼だ点呼! お前等自分の名前を言っていけ! 名乗らなかったヤツがやられて、そこに相手が居るって事だよ!」
リストを眺めつつ、少々焦りながら仲間達の声を聞いていると。
やはり、足りない。
ほんの少数ではあるものの、数名が名乗りを上げていないのが確認出来た。
けど銃声すら聞こえていないのだ……そうなって来ると。
「ナイフキルだ! 相手はこの状況で、一人で完全ステルスゲーやってるぞ! 全員警戒! 向こうはもう建物に侵入してる!」
正直に言うと、これまでの戦闘と全く違ってゾッとしたのは間違いない。
だってこれは、“ガンサバイブオンライン”なのだ。
だったら銃を使うでしょ、ドンパチやってなんぼでしょうが。
街中ならまだしも、ここはそうじゃない。
確かに映画の様な“殺し屋”を気取るゲームだってのは謡っていたけど、普通に生きている人間が“ゲーム”としてやったら……そりゃもう、ゲームらしくなるってなもんで。
これまでの戦闘はみんなそうだったのだ。
とにかく“戦える場所”に移動したら誰も彼もデカイ武器を取り出し、アホみたいに撃ちまくって戦闘して。
警察を呼ばれようが、そんなものシステム的な一時的なモノ。
捕まったところで、罰金払って三十分もしない内にゲームに復帰。
だからこそ火力は力だって、誰も彼もデカイ銃を選んでいたのに。
まさかの、本格的にスニーキングして来る奴が出て来るとは。
そういう縛りをしてる奴は見た事があっても、正直大した事は無かった。
大の大人がかくれんぼしたところで、探す方が本気ならすぐに見つかってしまうのが関の山。
他のヌルいステルスゲーみたいに、NPCに“何故か見つからない”なんて事も無い。
何と言っても現代の設備さえフルに使って探されたら、いったいどこに隠れりゃ良いんだって話で。
それなのに厳重警戒中の建物の中、相手に一発も撃たせないでナイフキルだぁ?
ここまで徹底的に、そして実用的にこなしてくる奴なんか初めて見た。
おいおいおい。
運営が用意したチートばりのNPCじゃなかった場合、中身に普通の人間が居た場合。
プレイしているその人物は、まさか違う意味での“本物”だなんて言わないだろうな?
そんな恐怖が浮かび上がって来る程に、今の状況は異常。
あまりにも落ち着かなくて、何度も何度も無線を通して仲間達に呼び掛けてしまうが。
「なぁ……なんかさっきから、どんどん返事するヤツ……減ってねぇ?」
仲間の言葉に、またもや寒気が全身に走る。
運営が用意した“賞金首”……ガチでヤベェかも。
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