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【花いちもんめ 始め!】 そう2人が言ったと同時に景色が変わった。
雨上がりの地。
だけどどこか不気味で。
辺りに広がる点々とした水溜まりには空が映っている。
けど、青空じゃなくて分厚い雲景色。
気づけば僕は両の手に誰かの手が握られていた。
解こうとしても解けない。
まるで何かに操られているかのように。
ふと前を見ると黒色尉面のユイちゃんが誰かと手を繋いでいる。
4人の真っ黒な人影。
でも幼子のように背は低い。
そしてもう一方の手には真っ白な人影。
なんだか僕を見つめているような気がして不気味に思えた。
「なんぢはパーをいだせばチョキなる我の勝ちなり!!」
急に声を上げるユイちゃん。
やっぱりこれって僕の知ってる花いちもんめと何ら変わりない?
じゃあ本当にただの遊びってこと…?
そうは思いながらも嫌な予感が心から抜けない。
「勝って嬉しい花いちもんめ!」
そうユイちゃんが言ったと同時に景色は一変し、急に真っ暗な夜闇が視界を埋めつくした。
「は…、?」
驚きすぎてそんな声が零れる。
やっぱり何かある?
思えば思うほど寒気がする。
聞きたいことは山ほどあった。
けど今こんな状況で口に出せるわけが無かった。
そんなことを考えながら俯いていた顔を上げる。
そんな僕の瞳に映ってきたのは先程真っ黒な幼子の人影のような何かの姿が口では言い表せないほどの化け物に変わっていた。
本能的に目を合わせてはいけないと思いながらも、頭では正体を探ろうと目を離せない。
〔戸惑ってるところ悪いが、アレは人間では無いぞ〕
急に真後ろから声をかけられ、驚く。
水を纏った梟と狐らの声だ。
『まだ居たのかよ…』と辛辣なことを思いつつ、
「知ってるよ…!!」
なんて小声で怒りながら返す。
〔そんな怒るな怒るな〕
狐はそんな僕の返しを聞き、ケラケラと笑ってる。
相変わらずな態度。
「あの子が欲しい」
「あの子じゃ分からん」
「この子が欲しい」
「この子じゃ分からん」
「相談しましょ」
「そうしましょ」
足を振り上げながら交互に前後へ移動する。
見ただけじゃ『懐かしい』という感想しか浮かばない。
そういえば幼い頃、誰かとこうやって花いちもんめで遊んだ気がする。
でも誰だっけ…
思い出せない。
それに花いちもんめなんて4人以上居ないと楽しくない遊び。
僕の仲良い4人以上の人なんて全く覚えていない。
それどころか居たのかもすらも分からない。
そんなどうでもいいことを考えていると、
いつの間にか僕のチームに居たはずの僕と手を繋いでいたはずのミイちゃんはユイちゃんのチームの方に行ってしまっていた。
それじゃあ先程から僕と手を繋いでいるのは…
そう思いながら横やらを見る。
「ひっ…?!」
思わず声が出てしまう。
当たり前だ。
なんてったってあの先程見た本能的に危険だと感じる化け物がいたからだ。
無理やり手を離そうも、やはり動かない。
無理だった。
無意識に浮かんだ涙目の僕を見ながら化け物は口角を上げているように見えた。
まるで嘲笑うかのように。
「相談しましょ」
「そうしましょ」
結局僕のチームはまたジャンケンに負け、
ユイちゃんのチームが勝つ。
そして選ばれたのは僕だった。
けれどその時に呼ばれた名前は僕の名前じゃなくて。
あのザーザー降りの雨のようなノイズ音が辺りに響いただけだった。
結局僕のチームは全員ユイちゃんのチームの勝利。
「我の勝ちなり〜!!めでよめでむ〜!!!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねながらユイちゃんが喜んでいる。
そんな隣でミイちゃんはガックリと肩を落として明らさまに負けたことに落ち込んでいるようだった。
「…███」
急に目の前からあのザーザー降りのようなノイズ音が響き渡り、焦点を目の前に戻す。
目前に居たのはさっきも一緒に居た、
遊んでた、
白光りしている人影…
というか人の形をした何か。
僕より少し背が低いそいつが今、僕の服の裾を引っ張っていた。
それに気づいたと同時に
「やめろよ!触んな!!」
と声が出た。
自分でも驚いた。
なんだか嫌だった。
嫌悪感がした。
振り払わなければ自分を保てないようなそんな気がしたのだ。
「さてさて次は何せむやな〜?」
「だるまのころびしでもすや?それとも蹴鞠に遊ばむや?」
スキップしながらユイちゃんとミイちゃんは僕と白光りの人影の周りを回る。
「ミイ、ユイ。休憩先なり。劇と歌詞のいそぎせよ」
建物の影から月さんが出、そう言いながらこちらに向かって歩いてくる。
が、僕には一切目もくれずだった。
「なれば昔話にもせむぞ!!」
「せむ!せむ!!あたらなれば能楽にぞ!!」
飛び跳ねながら月さんに着いてくように纏わりつくようにするユイちゃんとミイちゃん。
「おい、人の子。突き立ちたらで着きこ」
睨むようにして僕の方を見ながら月さんはそう言い、小道の奥へ奥へと足を進めて行った。
〔着いてこいだってさ〕
急に嘲笑うような声が聞こえ思わず振り返る。
「お前らまだ居たのかよ…」
ため息混じりの悪態をつきながら目に映す。
さっきまで居なかったはずの水狐と水梟。
月さんが消えていった方向に進もうとして立ち止まる。
雨が降っている。
今僕がいる場所は降ってないのに1歩進めば雨に当たる。
つまり今僕は境界線上に立っている。
天気が雨と晴れの間に。
「傘とかないの」
そう水梟に声をかける。
が、居ない。
水狐も。
「はぁ…どこ行ったんだよ…!!」
軽く地団駄し、肩を落とす。
何度目だろうか。
意を決して進むも、すぐに後退する。
雨脚が強すぎて前に進もうにも先が見えない。
1歩進める前は小降りに見えるのに。
しかも月さんたちがどこまで行ってどのくらい距離があるのかも分からない。
そんな状態で進むには風邪を自ら引きに行くのと同じじゃないか。
「自然の傘とか落ちてないかなぁ…」
そうため息混じりに呟きながら辺りを見回す。
と、大きな葉っぱがあった。
「これって…里芋の葉?」
蕗の葉より明らかに大きくて。
蕗の葉に紛れるようにして生えている。
しかもこの葉の特徴といえば水を弾く。
つまり傘に抜擢だということ。
ただし1つの問題がある。
「これ、抜かなきゃってこと?」
「手汚れるじゃん───」
そう呟いてふと蒼葉くんの姿が何故か頭に浮かんだ。
そして思い出す草遊び。
「…まぁ、風邪引く方が嫌か、」
誰に言うでもなく呟き、 里芋の葉を引き抜く。
というより根より少し上をちぎった。
そうして里芋の葉を傘にして強い雨の中へと足を進める。
いい感じに葉のシワで雨が葉に溜まらず下へ下へと垂れていく。
その音さえも耳に心地好くて。
「ん?なにこれ」
「花…?いや、造花?」
少しばかり足を進めて少し薄暗い場所に来た。
元々雨雲で暗かったのがもっと。
そんな薄暗い場所に咲いてる花々。
透明な花だった。
まるでプラスチックで創られた造花みたいで。
けど触れれば本物で。
「うわっ!危なかった…」
足元には大きな蜘蛛の巣。
を踏むところだった僕。
まるでこの綺麗な花に誘われた者を攫う罠のような。
けど普通の蜘蛛の巣と違って綺麗だった。
「なんか綺麗…」
そんな声を零しつつ、辺りを見回す。
土砂降りなほどの雨なのに辺りに紫陽花や謎の透明な花があるせいで綺麗な場所にいるみたいな気分になる。
しかも蜘蛛の巣に水滴が引っかかってて真珠のネックレスみたいな。
空を見ればどんよりとした厚い雲が重なってるのに普通の雨の日と違って心は晴れの日のように晴れ晴れしていて。
コメント
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「花いちもんめ」っていう懐かしい遊びが、こんなに不気味で美しい世界に変わってしまうの、すごく好きでした…。里芋の葉っぱを傘にして雨の中を進むシーン、透明な花や蜘蛛の巣の水滴が真珠みたいって描写が幻想的で、心が晴れていく感じが伝わってきました。ユイちゃんや水狐たちの存在感も強くて、この世界にどんどん引き込まれました。続きが気になります…!