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涼架side
元貴は念のため暫く入院。
あの日から毎日お見舞いに行った
大好きな人に会いたかったし、
何より隣にいないと、ふとした時に消えてしまうんじゃないかって不安になるから
明日も一緒に居られる確信がないのが怖かったから
毎日面会時間ギリギリまで居座った
入院7日目の今日
いつも通り病室へ行く
『もとき~来たよ!』
「ん、いらっしゃい」
…なんだろう、胸騒ぎがする
『今日はね、久しぶりにピッコロ吹いたんだよ!ビターバカンスぶりだった!』
「よかったね、」
『そいでね!~~~、』
「…笑」
僕はひたすらに口を動かす
そうしていないと、勝手に涙が流れてしまうの
そんな僕の話を、いつも元貴は静かに微笑みながら聞いてくれていた
でも今日は違った
口元には笑みをたたえているが、時々顔が曇り眉間に皺を寄せていた
辛いのだろうか
僕のために無理してるんだろうか
そんなことを思った矢先
「ぅ”ッゲホッゴホッ…おぇ”、はぁっ…ふぅっ……、」
『元貴!!!』
『元貴?!はッふ…ど、すれば…泣』
「りょ、ちゃん…ごめ、な、すこーる…」
『あ、なーすこーる…、』
ピッ
<どうされましたか!大丈夫ですか?!
『もときがッ…!もときが…ッはぁっはぁっ泣』
<落ち着いてください!すぐ看護師向かわせますので、一旦深呼吸しましょうね…
元貴が大変だと言うのに僕は何をしてるんだ、
「す、みませ…ッ、」
『元貴ッ……』
<あ、大森さん?!大丈夫ですか?!
「あの、っふぅッ…くすり、の…」
<薬切れました?それとも副作用ですか?
「た、ぶん…ふくさよ、です……気持ち悪くてッ、」
『もと、き…泣』
「ごめんね…大丈夫よ、っ」
“失礼します!すぐ点滴しますね。”
「ありがとうございます…」
『……泣』
そして元貴はそのまま寝てしまった
僕は何も出来なかった
辛いのは元貴なのに、
気付かず喋り続け
吐いた時でさえ泣いてばかりで手を煩わせただけだった
元貴の隣にいるのはほんとに僕でいいのか
若井の方がいいんじゃないか
僕が彼女で、元貴は不幸になるんじゃないか
今日は、あの日とは違って、声を立てずに1人で泣いた。