「ご指名誠にありがとうございます! 不破湊です」
賑わう歓声。甘ったるい香水の匂い。床下から艶やかに照らす紫色のライト。シャンパンの炭酸が弾ける音と共に、湊は優しく、ただ優しく微笑んだ。
ハキハキとした挨拶を心掛けているが、少しだけ舌っ足らずに聞こえるらしいその声は、警戒心がある客の心を絆すには充分だった。
「貴女のこと、絶対楽しませるから、一緒に居てもいいですか?」
歯に浮くようなセリフ。
恥ずかしげも無く吐いた言葉は、水に溶ける絵具のようにじんわりと相手の心に染み入る。
だって俺は。
人気ナンバーワンホスト。不破湊なのだから。
*************
深夜2時。
秋口とはいえ、真夜中になると肌を刺すような冷気の中、裏口のすぐ側で、湊は紫煙を燻らせた。
「あー……飲み過ぎたー……」
体内で暴れるアルコールの加虐性を恨みながら、鉄柵に肘を置く。今日は客の中でも金の羽振りが良い姫が来ていたせいもあって、大量の酒を摂取してしまった。
酒も姫も好きだが、28歳ともなると、段々と身体に応えるようになってきている。
自らの老いが怖い。
「……もう俺も歳なんかなぁ」
なんて、ぼそりと呟いた。
周りには悟られないようにしているが、このままホストを続けていて良いのか、将来はどうするのか。漠然とした不安が脳裏にこびりついて離れない事が稀にある。
その度に、キャラじゃない、と言い聞かせて、無理してヘラヘラして誤魔化し続けているが、そろそろ限界なのかもしれない。
「不破先輩お疲れ様っす!」
思考の沼にハマりかけた瞬間に、背後から明るい声が聞こえた。
「あ、新人クンじゃん。お疲れ」
振り返ると、先日入店したばかりの新人ホストが居た。
褐色肌で湊より少し背が高い。スーツの上からでも鍛えているのが分かる。
湊がにこやかに微笑むと、新人もぱあっと明るくなって続けて話し出した。
「不破先輩一服っすか?」
「そ。新人クンは? 1本吸う?」
「いいんすか!? いただきます!」
言うやいなや犬みたいに擦り寄ってきた。シトラス系の香水だろうか。少し匂いが強すぎる。だが、指摘するほどキツイ訳では無いので、顔には出さずに煙草を渡した。
いつもの癖でライターを取り出そうとしたが、後輩に火をつけるのは有り得ない。すんでのところで堪える。
「今日は指名貰えたん?」
「はい! 人に好かれるのだけが取り柄なんで!」
「生意気か」
先輩の前で言うことじゃないぞ、とぺし、と額を叩く。新人はすみません、と笑った。
「でもまじで得意なんすよ。試してみます?」
「はあ?」
「つーか、不破先輩、もう俺の事好きっすよね?」
何言っとるんやこいつ。
湊と新人はまだ話した事はほとんど無い。というより、2人で絡むのなんて今日が初めてだ。
この前来たばかりで仕事の仕方も分からないような奴、すぐに好きになるわけないやろ。
「俺、催眠術的なの得意なんすよねー。だから、話しただけでみーんな俺の事好きになっちゃう」
そう言って、新人はネクタイを緩めた。
緩んだシャツから筋肉質な胸筋がチラリと見えた。
「何言って……うわ、エロいなーお前」
「ガン見じゃないすか」
そのまま新人はシャツを第3ボタンまで開けた。そこまではだけると、最早乳首まで見えてしまいそうになっている。
男色の趣味など無いが、新人の身体は妙に艶めかしい。
「良かったら乳首舐めます?」
「マジで!?」
「はは、いいっすよ」
ぐい、とシャツを開き、新人は胸を突き出した。
据え膳食わぬは男の何とやらや。湊は手に持っていた煙草を投げ捨てると、飛びつくように新人の胸に唇を近付ける。
本来なら乳首にはすぐに触れずに、敢えて焦らすように舐めるのが前戯の鉄則だが、今はもう我慢が出来ず、何も考えずに尖りを舌で転がした。
「……っ、どうすか? 後輩乳首、美味しいすか?」
「……あれ? おれ、なんれ乳首舐めてんの……?」
ちゅぱちゅぱとしゃぶるように乳首を啄む。吸う度に僅かに身体を震わしているのが伝わった。新人の胸元から香水の匂いが濃く感じる。
先程まではキツかった匂いが、今はただただエロい匂いだとしか思えない。
なんか、おかしい?
僅かに残った思考が自らの行動に警鐘を鳴らした。さっきまで何とも思っていなかった新人に対して、何故自分は劣情を抱いているんだ?
「よくわかんねーけど、乳首、うまあ……♡♡」
普段の自分なら絶対に言わないような言葉が自分の意に反して紡がれている。いや、これは本当に思っている事だ。
現に湊は新人の乳首を舐めながら、ガチガチに勃起している。スーツの下は我慢汁でぐちょぐちょに濡れているのが、安易に予想出来る程に。
「不破先輩って、意外とド変態なんですね」
「変態じゃ、ない♡」
「嘘つき、勃起してる癖に」
見透かされている。
自分が男の乳首を舐めて勃起してることがバレている。
その事実に、湊はより興奮してしまい身体を震わせた。見透かされているのではなく、湊の股間がテントを張っているだけなのだが。
少し汗でしょっぱい乳首を一生懸命に舐めていると、頭をぽん、と優しく撫でられる。
「っあ、不破先輩、噛んじゃだめ」
乳頭を前歯で甘く噛むと、新人が喘いだ。
噛まれるのが好きなのか。
湊は弱点が分かってニヤリと笑うと、舐めて、噛んで、優しく吸ってを繰り返し、勃起している乳首に沢山の御奉仕をする。
野郎の乳首も悪くない。
「気持ちい、っすけど、そろそろこっちも舐めたくなってきたんじゃないすか?」
「……こっちぃ?」
カチャカチャとベルトを外して、新人はパンツをずり下げた。
「ほら♡」
ぼろん、と飛び出た男性器を見て、湊は目を大きく見開く。むわ、と蒸れた匂いが途端に立ち込め、香水に交じって雄の匂いが鼻腔を擽った。
通常時だと言うのに15cmはあるであろうその巨根。色は浅黒く良く使い込んでいるのが分かる。湊のものよりも2回り程度は大きいだろうか。男として、雄として圧倒的に上。
「っ、やばあ……♡」
興奮のあまり思わず息が漏れた。
湊はごくごく普通のノンケだ。ちんこに興奮することなどあるはずは無い。あるはずはないのに、目が離せない。
そのまま湊は膝を付いて、目の前の陰茎に頬擦りをした。
「ちんぽ、あつい……♡♡」
「ふふ、舐めたいっすよね、ちんぽ♡ 不破先輩、ちんぽ大好きですもんねー♡」
そんな訳あるか、と反論しようとするも、身体はその言葉に肯定するかのように、尿道に優しくキスをしてしまっている。
これから舐めさせてもらう陰茎に敬意を表すかのように。ちゅ、ちゅ、と柔らかい唇を尖らせ、鈴口に奉仕を始めた。
「いー子っすね、じゃ、そのままあーん♡」
我慢できない。
ゆっくりと唇を割り、新人のものを咥え込んだ。
コメント
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すっごい癖です、フォロー失礼します!
好きです、、、︎💕︎ 催眠系良いですよね、、徐々に堕ちていってる感が最高です、👍 続き楽しみにしてます☺️