【??? side】
…最初は良かったんだ。
まだ父さんが生きていた時は、父さんが俺を守ってくれていた。
でも、亡くなってからは……酷かったんだ。
父さんの弟…つまり、俺の叔父は俺が次期総統である事を良く思っていなかった。
だから父さんが生きていた頃から時々、俺に暴力を振るったりしていた。
でも父さんがそれを知っていた為、俺をあまり叔父と二人きりにならないように配慮してくれてた。
なのに、父さんは持病により、亡くなってしまった。
俺の母さんは俺が生まれてすぐ、亡くなっていた。
それから俺の居場所はなかった。
俺は獣人。
獣人を差別していた叔父は俺を監禁し、暴力を振り、毒などの被検体にした。
しかし、一応俺も次期総統。
表に出ないといけない時だけ、外に出る事が許された。
ご飯は3日に1回。
怪我の手当てなどはされず、内臓なども傷がついていると思う。
叔父たちの顔色を伺い、怒りに触れないよう静かに過ごしていた。
しかし、途中から俺の身体に異変が現れた。
叔父たちに限らず、人を見ると身体が凍り付き、手足が震えた。
上手く呼吸が出来なくなり、声は出なくなった。
時には腹痛が俺を襲い、立っていることも出来なくなった。
昔、本で読んだ「対人恐怖症」と言うものだろう、と考えた。
獣人は弱ると、本人の意思など関係なく動物になるという。
精神的にも身体的にも弱りすぎたのか、俺は動物の姿で過ごす事が多くなった。
そのうち叔父は「こんな出来損ないの次期総統はいらない」と言い、俺を軍から追放した。
きっと国民の目撃情報はこの時のなんだと思う。
動物の姿のまま、森に入ったのだが、森に張ってある罠に引っ掛かり両足を怪我。
大型獣に襲われる事も多かった。
その時、W国の幹部に拾われたんだ。
あの、ポメラニアンの獣人に。
W国は父が支援していたから、総統様と書記官様には会ったことがあった。
特に書記官様は、数年前と変わらない声で、優しさで、温かさで、俺を包み込んでくれた。
しかし、人間の姿を見られてしまったなら、もう無理だ。
W国の総統は俺が欲しいと言っていた。
その理由は分からない。
S国の時みたいに実験体にされるのかもしれない。
もしかして奴隷にされるのかも…
そんなのは嫌だ。
何より、俺は人前で喋る事が出来ない。
人と関わる事すら怖い。できない。
きっと、W国の人ともきちんと関われないだろう。
森の中を走りぬける。
走り抜けた先は言葉通りの断崖絶壁が広がっていた。
落ちたらさすがに猫でも即死するような崖。
もう死んでしまおう。
もし、俺が生きてる、と知ったらS国は何をしでかすか分からない。
きっと俺と関わった人は多大なる迷惑を背負ってしまう。
そうなる前に…俺は本当に死んでしまった方がいい。
そう思い、俺は崖に足を踏み出した。
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黒猫〜‼︎