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僕の友達は、悪魔だった。
それは、性格を表すものでなく、種族的なものでの悪魔。
そんな彼の性格は種族から来る偏見とは打って変わって温厚で、しなやかで、美しい優しさを帯びている。
僕は、そんな彼の優しさと、物事に対する柔らかな陽射しのような眼差しが好きだった。
彼の声もまた、優しかった。
まるで、懐かしい思い出話をするように、それでいて天使が神聖な歌を歌うように。
すべて、ぜんぶ、優しかった。
ある日、彼はふっと微笑んで言った。
「僕は、僕の事をわかってくれる友達がいて、なんて贅沢なんだろう!!」
彼の黒髪がさらさらと風になびき、光が当たったそのさまは、今でも脳に焼き付いて離れない。
そのとき僕は多分、 彼の事を、来世まで覚えていたかったんだ。
いや、来世では足りないな。ずっと、ずっと、永遠に、覚えていたいんだ。
その日、僕は初めて、自分が幸せ者だと知った。
そしてその日、星を見た。
君の瞳に、輝く星を。
ああ、ああ、君は僕に話しかける。
そのたびに星が光り、ぼくらは笑う。
なんて素敵な一日だったんだろう。
僕は、彼を好きだった。
でも、それを伝えてしまうと何かが変わると思って、伝えられなかったんだ。
もしかしたら僕は、怖かったのかもしれない。
またとある日、彼の頭から、血が出ていた。
黒髪によく映える鮮血。
きっとこんな事思ってはいけないけれど、綺麗だったから、少しだけ、嬉しかった。
はっと気が付いて、僕は彼を家に入れた。
彼は、言う。
「他のひとに見られたら君まで怪我をさせてしまう。だから、やめて。」
彼の手を引いていた僕の手が、振りほどかれて、立ち止まる。
君の瞳は優しさで満ちている。
どうしてこんな時まで僕の事を優先するの?
君はこんなに優しいのに、世界は君を悪とする。
ああ、なんて酷い世界だろう。
それでも僕は彼を返すわけにもいかなかったので、ひとまず、彼の怪我の手当てをして帰した。
でも僕は見つかってしまった。
ただそれが知り合いだったので、軽く注意されるだけですんだ。
他人からするとこんなふうに言えるだろう。
けれど僕には、彼の事を蔑んでいる憎い言葉にしか聞こえなかった。
あの声は大嫌いだ。
もう聞こえなくていい。
少なくとももう一生。
そして、事件は起こった。
酷く乾燥した冬の日のことだった。
一つの民家が火事になった。
彼は誰よりも速くその家に駆けつけた。
そして、なかにいる人間を助けた。
彼は火傷を負いながらも助けた人間を助けた。
それなのに、彼は、その後、助けた人間とその他大勢の人間に、殺された。
もう彼の瞳は輝かない。
もう彼の紡ぐ優しい言葉は聞こえない。
もう彼の瞳は僕を捉えない。
もう彼の言葉は僕を好きにさせてくれない。
もう彼は生きていない。
僕がどんなに呼びかけたって、美しい君はもういない。
ああ、なんて酷い。
僕は、世界を憎んだ。
強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く、憎んだ。
君の死体を家に持ち帰ってから、ご飯を食べた。
なんの味もしない。
なんの意味もない食卓。
ふと、横においてあった本を見る。
君が好きな本だ。
でも、感想は二度と聞けなくなった。
その日は空白の中で眠りについた。
そして、今目の前にいるのは神聖とされる神父。
クソみたいな顔をしやがる。
この野郎。
こいつの第一印象だ。
偏見で僕の愛するひとを殺した。
そして、もうすぐ僕も死ぬ。
こいつに刺されて。
それなら、いっそのこと、
こいつも道連れにしてやる。
「さようなら。僕の愛した世界、さようなら。クソみたいに変わってしまった世界よ!!
次なんて永遠に来ない世界よ!!」
神父の手からナイフを奪い、心臓に一刺し。
次に頭、目、首、手首、とりあえず滅多刺しにした。
彼の血よりはるかに汚い汚水が飛び散る。
僕は家に帰った。
そして、きみと手をつないで、家にあった銃で頭を撃ち抜いた。