翌朝。
街の広場には人々が集められ、王国兵が高台から声を張り上げていた。
「王国の民よ! 帝国軍が国境を侵犯した! このままでは我らが大地は蹂躙される!
よって、若き者たちを徴兵し、国の盾とする!」
どよめきが広がる。
泣き叫ぶ母親、唇を噛む若者、目を逸らす老人たち。
広場の空気は重く沈んでいた。
ユウたちもその場に立っていた。
リオが拳を握りしめる。
「来たな……ついに」
レオンは震えた声を漏らす。
「ぼ、僕……戦争なんて無理だよ……」
ミラは冷たい瞳で兵士たちを睨んでいた。
「……選ばされる。強制的に」
ユウは一歩前に出て、広場を見渡した。
「……俺たちの選択が、今、試されている」
その夜、ギルドの宿舎。
四人は集まり、それぞれの思いをぶつけあった。
リオが机を叩く。
「俺は行く! 戦場に立って、剣で勝ち抜く! それが俺の生き方だ!」
レオンが涙を浮かべる。
「リオ……でも、死んだら意味がない! 僕は生きていたい……怖いんだ!」
ミラが静かに言葉を投げる。
「私も……行く。逃げ場なんて最初からない。私の家族を殺したのも、戦乱だった。……だったらせめて、戦いの中で何かを掴みたい」
ユウは黙って剣を置き、仲間たちを見渡した。
「剣を取るのは、それぞれの選択だ。
だが、一つだけ忘れるな。――剣は、生きるためのものだ」
リオがユウを見据える。
「ユウ……お前はどうするんだ?」
ユウは迷いなく答えた。
「俺は行く。戦場で剣を極め、寿命を全うするために」
翌日。
四人は戦場を見据え、最後の鍛錬を始めた。
リオはひたすら突撃を繰り返し、荒々しい剣筋をユウに叩きつける。
「はああああッ!」
ユウは軽やかに受け止め、即座に反撃。
「力だけじゃ通じない。呼吸を読め!」
レオンは盾を構え、必死に防御する。
「くっ……!」
ユウが叱咤する。
「恐怖を剣に変えろ! 怖いからこそ、一歩踏み出せ!」
ミラは矢を次々と放つ。
「……ッ!」
ユウが指摘する。
「的を射抜くだけじゃ足りない。仲間と連動しろ!」
激しい訓練の中、四人の息が次第に合っていく。
リオが前衛で切り込み、レオンが盾で守り、ミラが遠距離から援護。
ユウは全体を導きながら剣を振るい、彼らを勝利へと導く。
「……これなら、戦場でも戦える」
ユウがそう呟くと、仲間たちは誇らしげに顔を上げた。
数日後。
再び広場に兵士が現れた。
「本日をもって、志願者および徴兵者は王都へ向け出立する!」
リオが前へ踏み出し、名を告げる。
「リオ・ハルヴァン! 志願する!」
彼の声は力強く響いた。
ミラも静かに続く。
「ミラ・カサンドラ。同じく志願します」
人々の視線がレオンに集まる。
彼は全身を震わせていた。
だが、ユウの背中を見て、一歩を踏み出す。
「……れ、レオン・グリード……僕も……行きます……!」
最後にユウが剣を背負い、静かに告げた。
「ユウ・アマツ。剣をもって、王国に尽くす」
兵士は頷き、彼らの名を記録に刻んだ。
その夜。
仲間たちは焚き火を囲み、最後の食事を共にした。
リオが笑いながら肉を頬張る。
「戦場に出ても、絶対生き残ってやる!」
レオンが震えながらも頷く。
「うん……死にたくない。でも、逃げない」
ミラが火を見つめながら呟く。
「私たちは……もう後戻りできない」
ユウは剣を膝に置き、仲間に告げる。
「戦場は、命を奪い合う地獄だ。だが、俺たちは剣を通して何かを掴む。……必ず、生きて帰ろう」
四人は静かに拳を合わせた。
そして、戦乱へと歩みを進める。