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同日21:00
新国家日本新党の決起集会後の会見は、国際メディアプレスセンターで開かれた。
この施設はさくらテレビ局内に設けられ、上念・F・海斗、平山夏生、幣原喜三郎らが会見に臨んだ。
その模様は、同テレビ局で独占放送された。
大株主であった韓洋の自殺に関する質問は一切なく、粛々と進められる質疑応答の中で、親衛隊代表として鷹野佑宝が紹介された。
カメラのフラッシュが一斉に鷹野を捉えている。
東京テロで勇敢に闘った英雄として、鷹野の名は鳥海ひよりと同じく、全国区になっていたのだ。
照れ臭そうな顔と緊張で震える声は、とりわけ女性視聴者の心を鷲掴みにし。 親衛隊のファンクラブも立ち上がった。
イケメン隊員総選挙と銘打たれたイベントの画像には、元航空管制官の安座間の写真もあった。
22:00
特捜柿崎を隊長とする捜査班は、東京区六本木の旅館、
「時空屋」
へ突入を開始した。
有印公文書偽造罪を適用しての家宅捜査を、新国家日本新党の会見時刻と同時刻に執行するにはそれなりの、政府としての意義があった。
共謀罪での立件も視野に入れていた。
親衛隊メンバーとして参加していた朝倉ケイが、SNSに投稿した文章と写真が強行執行の大きな材料となった。
「みんなで力を合わせれば、運命を変えられるのかも!」
という内容が、ネットにアップされていたのだ。
シャンパングラスの先の壇上には、生前の韓洋と握手を交わす不動産業・津田隆弘の姿も見えた。
特捜の亀山は、参加者全員の発言記録を調べていた。
津田が詐欺被害者であるのも、ケイが会社を解雇された経緯も全て把握していた。
また、赤虎隊と韓洋との繋がりも判明していた。
「韓洋グループが赤虎隊と繋がり、東京事象に乗じて小島の会社に不動産詐欺を働いた? ちょっと苦しく無いですかね、良いんですかね?」
突入前、柿崎の隣で大野が言った。
柿崎は、鼻で笑って答えた。
「上出来だろ」
突入隊が時空屋へ踏み込むと、建物内にメンバーの姿は見当たらなく。 柿崎は困惑した。
十数人もの人間が監視の下に消えたからだ。
施設内を捜索してから2時間後、地下のボイラー室に抜け道がある事が判明した。
道の先は都営地下鉄大江戸線・六本木駅の職員通用口に繋がっていた。
柿崎は呟いた。
「奴ら…ハナからこいつが狙いだったのか?」
更なるテロの予兆を柿崎は感じていた。