テラーノベル
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「テラちゃん、生きてんじゃん」
「あ、あぁ……うん……」
「……テラ、この子は……?」
流石の羽白も困惑している。
そりゃそう。だって人降ってきたもん。
これがあれか? 羽白の言ってた、えっと……ラピュ〇?
「なんだなんだ。生きてたんだ」
「えっと……エリスはなんでここに……?」
「え? なんかね〜、お空に割れ目? が入ってたから、ぶん殴って開けてみたらここにいた!」
「…………」
相変わらずのぶっ飛び具合だ。
これは本物のエリス。
「で、ここどこ?」
「__別世界」
「別世界」
「そう。別世界」
「…………なにそれ」
エリスが俯く。
流石に頭おかしくなったと思われたか……
そりゃそうだよな。別世界なんて言われて。
「_____めっちゃおもろいじゃん!!!」
「……」
そうだったな。こんなヤツだったな。
なんか安心したわ。
「テラちゃんがなんで生きてるか知らんけど、とりあえずここにいるね?」
「……どうぞ」
あぁ、面倒事が増えた。
ただでさえ俺もこの世界に慣れていないのに。
しかも相手が悪い。エリスとか面倒事の権化じゃん。
「あ、テラちゃん。言っとくけどさ」
「ユラナス、ブチ切れてたよ」
「_____」
「……私知らないからね」
「待ってエリス! 流石にアイツと一対一は無理! エリスもついてきて!」
「やだよーだ!!! 一人で勝手に怒られてろ!!!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「あんのクソバカ野郎_____!!」
「ユラナス、うるさい」
「テラだぞ!? あのテラが俺をおいて勝手に死にやがったんだぞ!?」
「なんであの人に固執すんの。まさかユラナス、そっちの気が……」
「ねぇぇぇわ!!!」
「あそう」
「くっそ……ただでさえ不安なのに……」
「……」
青緑の瞳を揺らし、頭を抱える。
_____せっかく綺麗な瞳なのに、勿体ない。
なんでそこまであの人に固執するんだろう。
よっぽどの人じゃないと思うけれど。あの人。
英雄とは言われているけれど……
ユラナスって、変な子。
「……テラ」
「……いつまでもウジウジしないで。ユラナス、そんなキャラじゃないでしょ」
「あぁわかってるよ! でも……」
「……」
私じゃ、貴方の不安は除けないのね。
ユラナス。
■△■△■△
俺は小さい頃から物覚えが早かった。
勉強もそれなりにできたし、運動神経も人より良かった。
昔からなんでもサッと出来る子だった。
そんな自分が誇りだった。
自分は才能があるんだと。そう、錯覚してた。
そんな時、テラに出会った。
彼は、凄かった。
力は無い。のに。
その知力で泥だらけ、棘だらけの道を切り裂いていった。
俺はそんな彼を見て思った。
“ 彼は天才だ “
と。
俺は天才じゃなかったのだ。
ただ、人より少し物覚えの早い、
” 何とも言えない子 “だったのだ。
俺は今まで勘違いしていた。
でも、早くに気づけてよかった。
惨めな思いをしなくてすんだんだ。
でも、悔しいものは悔しかった。
悔しかった。
悔しかったんだ。
悔しかったんだよ。
なぁ。俺ってなんなんだ。
俺って何があるんだ。
特にいい所もない、悪い所もない。
何も無い。
彼にはせめて、とんだクズでいてほしかった。
でも彼はとんだ優男だった。
気遣いができて、面が良くて、何でも出来て、
そこで分かった。
コイツと俺は比べるものじゃない。そもそも、比べられない。
もう、妬みにすら思わなかった。
だって、完璧すぎるんだ。
ちょっと凄い程度だったら俺もきっと争うと思う。
でも、無理だった。
アイツには誰も勝てない。
何も無い俺に、勝ち目はない。
彼はただの憧れ。ライバルじゃない。
そもそもあんな天才に勝てるわけない。
じゃあ、努力しても無駄だ。
俺は彼に勝ちたいだけだった。
その他はどうでもいい。
でも俺の勝ちたい相手が勝てない相手なら、
諦めたって、いいよね。
そんな俺は彼の言葉で、
諦めきる事が出来なくなった。
「なぁ、ユラナス」
「ん?」
「………諦めるってダサいよなぁ」
「え、」
「なんかさ、簡単に諦めるヤツいんじゃん。それだせぇなって」
「……」
「なんで簡単に諦めるんだろうって。最後まで足掻けよって。最後まで足掻かないですぐ諦めるなんて、すげーダサい。ビビってんのかって言ってやりたい。負ける前に諦めるのがかっこいいとか思ってるヤツもいるけど、それよりも泥臭く必死に頑張って最後に勝利を勝ち取る方が、カッケェよな」
「__ぁー……」
「たとえ勝利出来なくても、努力は消えねぇんだし、前よりもっと強くなれてんだぜ。なんの不利も無いよな。次を目指す為のきっかけにもなるし」
「負けって、別にダサくないよな。てか、ボロボロに負けたヤツがちょー強くなって戻ってくるって、カッコよくね!?」
「……うん」
そんなん言われたらさ、
俺がすげーダサく見えんじゃんかよ。
あんな簡単に勝てない相手だって言って、
簡単に諦めて。
なんだよ、それ。
「すげー、だせーじゃん…………」
あー、だっせ。
だっせぇなぁ俺。
敵として認識してたやつに俺のダサさ認識させられるとか、
「だっせぇ……」
もう、笑えてくるくらいだせぇ。
そんなんさぁ、
諦めきれないじゃんか。
「ユラナスって、カッケェよなぁ」
「え?」
「だってさ、ユラナスすげー頑張ってんじゃん」
「だから、カッケェなって」
「ユラナスは、」
俺の憧れだよ。
「!」
嬉しかった。
俺がカッケェと思った男に、
カッケェとか言われて。
俺はお前の期待に応えたいよ。
俺は、
「お前にとって、カッケェ男になり続けるよ」
「……はは、やっぱお前カッケェや」
俺とは全然違うな。
ユラナス。
凄い短くてすみません。
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