「ただいま……」
玄関の引き戸を開けながらシンが言う。
「………」
先に帰ってるはずの湊の返事がなかった。
「湊さん…?」
靴を脱ぎ中に入る。
奥に進むとテーブルの脚の陰から人影が見えた。
「湊さんっ!」
倒れているのかと慌てて近寄ると、仰向けになって寝息をたて湊が眠っていた。
ホッと胸を撫で下ろすと荷物を置いて湊の側に寄る。
湊の寝顔を近くで見るとあまりに気持ちよさそうに眠っているのでつい触りたくなってしまった。
手を伸ばしそっと湊の髪を撫でる。
「…んっ」
くすぐったいのか身動ぐと湊はシンの方へ身体を向けた。
「湊…さん…?」
「……」
起きる様子はなかった。
(まるで猫みたいだな……。)
猫を撫でるようにまた髪に触れる。
そろそろ止めないと起こしてしまう…
手を止めて離れようとした時、シンの腕を湊が掴む。
「…っ」
湊を見ると薄っすらと瞼をあけていた。
「すみません」
そう言って慌てて手を引っ込めようとすると
「やめるな…」
湊がシンの腕を強く掴んでくる。
「えっ……」
引っ込みかけた手を止める。
「続けてて……」
髪を撫でられるのが余程気持ちよかったみたいで、もっと。と催促してくる。
手を再び伸ばすと湊の髪を撫でる。
目を閉じたまま湊は気持ちよさそうに顎を少しあげた。
「気持ちいい……」
そう言う湊は今にも喉をゴロゴロと言わんばかりの表情をする。その表情にシンはすぐにでも抱きつきたい衝動に駆られるのを必死で堪える。
(か…可愛すぎる………!!)
そう心の中で叫んでいた。
頭を振って邪念を払うシンの異様な光景を湊は不思議そうな目で見る。
「…なにやってんだ?」
シンの異様な行動の元凶が自分にある事を湊は知る由もない。
不思議そうにシンをじっと見る湊と目が合うとシンはもっと触りたいという気持ちを我慢できなくなっていた。
「こっちも気持ちいいんですよ…」
そう言って頭を撫でている手とは反対の手で湊の顎を撫でる。
「俺は猫じゃねぇよっ」
シンの手を振り払い少しくすぐったそうに身を捩る。
「ククッ……猫より…可愛いです……」
笑いながら今度は両手で背中を擦るとそのまま湊のシャツを捲り上げる。
「おいっ…」
「やめるな。って言われたんで…」
静止する湊を無視して身体中を弄る。
「シン……やめっ……」
「気持ちいい…でしょ?」
そう問いかけるシンの瞳に危険を感じた湊は
「もういい…」
湊はシンの腕を払い除け起き上がろうとする。そんな湊の肩を掴むとシンは床に抑えつける。
「まだ……終わりじゃないですよ…」
そう言って右手で湊の髪を掬う。
はらりと落ちる髪の感覚が心地よくて思わず目を閉じてしまう。
シンの手が湊の髪をそっと撫でるとシンは湊の瞳を見つめる。
「好きです…」
「へっ……」
もう聞き飽きるくらい聞いた言葉なのに見つめられながら言われると変な声が出てしまう。
シンは湊の髪を撫でながら
「少しウェブがかったところとか…少し茶色がかったところとか…湊さんの髪、触り心地が良くて……好きです」
愛おしそうに湊の髪に触れる。
(髪の事かよ…)
勘違いか…と残念がる自分の気持ちに気がついて、ハッとした。
このままだと完全にシンのペースに巻き込まれてしまう……。
流されないように気を引き締めようとするが…間近で見るシンの顔は見惚れてしまう程綺麗だった。
湊の心を見透かすようにシンはさらに顔を近づけてくると
「やめて…いいんですか……?」
ほくそ笑み聞いてくる。
「もう…いいから……」
戸惑い気味で答える湊に
「本当はやめてほしくないくせに……」
そう言って両手で湊の頬を覆い鼻を近づけてくる。
「おぃ…」
目の前に迫るシンの顔は何度見てもドギマギしてしまい慣れない。
「挨拶です。まだ、ただいま。の挨拶してなかったんで…」
「だから…猫じゃねぇっつーのっ」
「そうでしたね…なら…」
「んっ……」
シンは湊に口づけをした。
「これならいいですよね」
「ここは日本だっ!キスの挨拶の習慣は、ねぇぞ!それに…口にはしねぇよっ!!ばーか」
「だったら今度から、『ただいま』の挨拶はキスをする。にしましょうか?」
「するかっ!」
「照れてる………」
「照れてるんじゃなくて嫌がってるんだ!」
「可愛い……」
「話を聞けっ」
「明日から楽しみだな〜」
「話になんねぇ……」
「また、記録が伸びますね」
嬉しそうにシンが言う。
「なんの記録だよ…」
「1日のキスの回数」
「まだ数えてんのかよ…」
「数えてますよ。1日の記録と総回数と…」
指折り答えるシンは得意気だった。
「はぁぁぁ……」
湊は深くため息をつく。
「ハグの回数も。湊さんが好きって言ってくれた回数も。全部記録に残してしています」
人差し指を立てて自慢気に話すシンの顔があまりにも嬉しそうで怒りや呆れを通り越し『凄い…』と、尊敬してしまうのだから仕様がない。
「お前ってヤツは…」
湊は苦笑いをするしかできなかった。
「ところで……続き。してもいいですか?」
真面目な顔で聞いてくるシンに呆れながらも
「俺が満足するまで……やめんなよ………」
照れながら答える。
その言葉を聞くとシンは湊を抱きしめ
「もちろん……」
そう言ってまた髪を撫ではじめた。
【あとがき】
ヤバい…妄想が止まらない…笑。
そろそろ書き始めて半年が経とうとしてます。
記念にイベントとかするのも有りかと思ってますが…
例えば、いただいたリクエストを元に限定公開とか?
ご希望とかありますか……?
できうる範囲でお応えできたらと思っています。
コメントにてご要望お聞かせ下さい😊
それでは、また次回作でお会いできますように…。
月乃水萌
コメント
5件
今回のストーリーもめっちゃいいですね🥰キュンキュンしました♥️湊さんもシンくんも可愛い✨シンくんは湊さんのことなら全て数えてるのんもいいですね!
イベントとか最高すぎる😍😍