偉央は結葉が頷いたのを確認するなり彼女の下肢へと手を伸ばした。
結葉の下生えは、まるで子供のようにほんの少ししかないうえに、ふわふわと柔らかい毛質で。
偉央の指先は、まるで少女のような結葉の下腹部――恥骨の辺り――をスルリと通過する。
「あっ、偉央さんっ、そこは――」
その瞬間、ハッと我に返ったように結葉が身体を固くして、脚を閉じようと縮こまらせてきたけれど、偉央は「さっき許可したよね?」と低くつぶやいてそれを封じてしまう。
ついでに「触りにくいから足、力抜いて?」と追加で指示を与えれば、結葉はフルフルと震えながらもゆっくりと脚の隙間を開いてくれる。
「結葉は素直でとっても良い子だね。――大好きだよ」
うまく言いつけを守れた時は惜しみなく褒めてやる。
そんなご褒美を命令の合間に挟み込むことで、羞恥心と葛藤する結葉を巧みにコントロールしている偉央だ。
「そのまま動かないでね?」
言って、ゆっくりと敏感な秘芽の周りをクルクルと辿って、一度だけわざと掠めるように触れてから、結葉の身体をビクッと仰け反らせる。
今はそれ以上そこには触れない、と密かに心に決めている偉央は、いじらしく刺激を求めて勃ち上がった陰核には殆ど触れず、温かく濡れそぼった谷間に沿って指を進めた。
「や、……ぁんっ」
そんなところ、他人に触られたことなんてないんだろう。
結葉が、思わず脚を閉じそうになって、先の偉央からの言いつけを守ろうと懸命に堪えているのが、同じく顔の横から動かしてはいけないよ?と命じてある手指がギュッと握られたことで分かる。
「結葉はこういうことをするの、初めてだからね。しっかりほぐしておかないと僕のを受け入れるの、辛いから……恥ずかしいだろうけど我慢するんだよ?」
言外に「キミのためだ」と含ませながら、固く閉ざされた谷間を指の腹で撫でるようにしながら、指全体に結葉の吐き出した愛液をまとわりつかせる。
その滑りを利用しながら、クチュクチュと優しく撫でるように結葉の入り口付近のぽってりとした土手を左右に破り開いた。
そのまま、物欲しそうに濡れそぼった蜜口に中指を宛てがうと、結葉の反応を見ながらほんの少し指先を結葉の中に挿し入れてみる。
「ひ、あっ」
途端、結葉がギュッと目を閉じて唇を噛んで。
偉央は指先を結葉の中に挿し込んだまま、
「痛い?」
と労わるように声を掛けた。
結葉は唇を引き結んだまま、涙に潤んだ目で偉央を見つめ返す。
「答えて? 結葉。言ってくれなきゃ僕には分からない」
実際のところ、偉央には結葉の中に埋めた指先を押し返すようにギュッと締め付けながらも、蜜を吐き出すことで懸命に受け入れようと頑張っている結葉の入り口の圧が嫌というほど伝わってきている。
それだけで結葉のそこが相当無理を強いられていて、偉央の指一本に対してでさえ物凄い違和感を感じているであろうことは明白だったのだけど、あえてそれは言わずにおいた。
結葉はそんな偉央に、ありのままの思いを伝えてもいいものか迷っている様子で。
「素直に言ってくれていいんだからね。僕もキミに痛い思いをさせたくない。素直に言ったからって怒ったりしないから大丈夫だよ?」
偉央だって馬鹿じゃない。
新婚旅行に来てから――というより、やっと自分の妻に出来た結葉を、少しでも早く抱きたいと願い、そういう行為に持っていこうと些か強引に事を進めてしまった辺りから。
結葉が偉央のことを時折怯えた目で見るようになってしまったのには気付いていた。
知っていて態度を改めなかった――ばかりか助長させてしまったのは、結葉が自分を怖がる様が、何故か支配欲を掻き立てられて心地よく感じられたから。
つい追い詰めすぎたと反省しないわけじゃない。
恐らくこんな風に言ってやらないと、結葉が自分の意見を述べることを躊躇するであろうことも織り込み済みな程度には、自分の結葉に対する立ち位置は理解しているつもりだ。
「す、少し……」
結葉が小さな声でそう言ったのへ、「どんな風に少し?」と具体的な説明を求めるのは優しさからだろうか、それとも言わせることで結葉に恥ずかしい思いをさせたいという被虐性の表れだろうか。
何となく後者の意味合いが強い気がした偉央だ。
「…………す、少し……そのピリッと、して……苦しい、です」
言うなり恥ずかしそうに顔を歪めた結葉が可愛くてたまらない。
そんな風に思ってしまう自分はおかしいのかも知れないと心の片隅でもう一人の自分が警鐘を鳴らす。
今まで女性と付き合ってきて、これほどまでに支配したいと感じさせられた娘は居なかった。
(僕は本当に結葉のことを心の底から愛してるんだ)
それでそう自覚してしまうと言うのもおかしな話だとは思うけれど、実際偉央にはそうとしか思えなかった。
***
「結葉はここに指とか入れたことないの?」
自分でそういうことをしたことはないのか?と問われて、結葉は真っ赤になって首を振る。
性的な目的で、下腹部に触れたことすらない結葉だ。
中に指を入れるだなんて有り得ない。
結葉のその反応に、偉央が嬉しそうにクスッと笑ったのが分かって、結葉は訳が分からず戸惑ってしまう。
自分はそんなにおかしいことを言ったのだろうか。
オロオロと視線を彷徨わせたら、偉央が「嬉しいな」とつぶやいた。
「え……?」
聞き間違いかと思ったけれど、偉央は結葉の中に指を挿し込んだまま、結葉の頬へチュッと口付けを落としてきて。
「結葉の初めて、僕が全部もらえるんだって思ったら嬉しくなっちゃった」
言葉通り、偉央はとても楽しそうで、結葉はその笑顔にドキドキしてしまう。
途端、中に埋められたままの偉央の指を、自分がキュッと締め付けたのが分かった。
「……あっ、ん」
それが何だかゾクゾクとするような快感をもたらして、結葉は思わず吐息を漏らす。
今日は偉央のことを怖いと思うことが何度かあったけれど、やはりこうして笑顔を向けられるとこの人のことが好きだなと思わされる。
「偉央さん……が喜んでくださるの、……私も、嬉しい、です?」
何となく断定するのは恥ずかしくて、語尾が疑問系のように上がってしまった。
だけど結葉が照れながらも偉央を見詰めてしどろもどろにそう告げたら、偉央は一瞬瞳を見開いてから「有難う、結葉」と微笑んでくれた。
「――結葉、愛してるよ」
偉央の言葉に、結葉は心の底から幸せだな、と思って。
「私も……偉央さんを愛しています」
結婚式で交わした愛の誓いより、いま二人で睦み合った言葉の方が、結葉の胸にジーンと染み込んだ。
***
偉央は結葉の未開発の身体を長い時間をかけてじっくりとほぐしてくれて。
結葉は思ったほど痛みを感じずに偉央を迎え入れることが出来た。
結婚したのに避妊をしっかりして結葉の中に分け入ってくる偉央を見て小首を傾げた結葉に、偉央は「まだしばらくは二人の時間を楽しみたいからね。ダメかな?」と言って。
結葉は偉央がそれでいいのなら、そんなに焦らなくてもいいかな?と思った。
それに、結葉自身、まだ仕事を辞めていなかったから。
「私もお仕事があるので、その方が助かります」
勤め始めたばかりだ。
出来ればもう少し社会の荒波の中で頑張ってみたい。
そう思いながら偉央を見詰めたら、偉央は一瞬だけ視線を外してから、「結葉……。出来れば仕事は辞めて欲しいんだけどな?」と言った。
偉央は結葉には家にいてもらって、家庭を守って欲しいらしい。
「結葉にはなるべく外には出ないで家にいて、僕の帰りを待っていて欲しい」
ふっと甘えた顔をして、強請るような口ぶりに切り替えると、偉央が「――ダメかな?」と付け加えてくる。
専業主婦の母親を思い出した結葉は、「偉央さんがそう望まれるのでしたら」と答えた。
それが、悲劇の始まりになるとも思わずに。
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