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これから『冥探偵の謎』を解き明かす旅に出た僕の話を書き記すさ
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彼が遺していったマスターキーを握りしめ、僕は誰もいない静かな事務所を見渡した。
これまでの日々が、まるで幻だったかのように部屋は冷え切っている。
僕はデスクに向かい、彼が遺した唯一の遺品である、あのルービックキューブを手に取った。
一見すればどこにでもある玩具。
だが、彼が消えてからというもの、このキューブは生き物のように時折、オルゴールのような微かな音を立てて勝手に回転することがあった。
白、赤、青、黄色――。
不規則に並ぶ色をじっと見つめているうちに、僕は黄泉國さんが生前、ボソリと呟いていた言葉を思い出した。
『助手くん。この世界はね、放っておくとすぐにズレてしまう。生者の未練、死者の怨嗟、それらが重なると、世界の音律が狂うのです。私はただ、その狂った弦をほんの少し、締め直しているだけですよ』
あの時は、また意味の分からない難解なボケを始めたとしか思わなかった。
けれど、違ったんだ。
彼は名探偵などではなかった。
あちら側の世界から現世の境界線に派遣され、世界の歪みを直す存在。
それが、彼の本当の正体だった。
――そのときの僕は、まだ知る由もなかった。
彼が本当はそんな大層なものではなく、歪んだ記憶や未練を切り貼りして正しい形に整える、世界の「ある役割」を担っていたという真実を。
カチリ、と手の中でキューブが音を立てて止まった。
すべての面が揃ったわけではない。なのに、キューブの隙間から、まるで古い本から零れ落ちたかのように、薄い一枚の紙片が滑り落ちてきた。
そこには、彼の几帳面な文字である「住所」と「男の名前」が書き綴られていた。
「……どこまで人使いが荒いんだよ、あの人は」
僕は涙を袖で拭い、その紙片をポケットに押し込んだ。
彼が遺していったこの手がかりの先に、一体何が待っているのかは分からない。けれど、あの人の謎を解き明かすためには、ここに行くしかないんだ。
僕はマスターキーを強く握りしめ、静まり返った事務所を後にした。
あの人の秘密を解き明かしに行こう。
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コメント
1件
第8話、読みました。 ルービックキューブがオルゴールみたいな音を立てて勝手に回りだすの、すごく不気味で好きだな……あれ、絶対ただの玩具じゃないですよね。黄泉國さんの「世界の音律が狂う」って言葉も、ようやく意味が繋がってきた感じがしてゾクゾクしました。 「どこまで人使いが荒いんだよ」って涙拭いながら言う主人公、泣かせるなあ。あの人の遺した謎を追いかけるしかないんですね。次の場所、気になります。