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数日後、アフレコスタジオで再び顔を合わせた瞬間から、嫌な予感はしていた。
♧「おー、おはよ」
❀「……おはようございます」
黒崎は、いつもと変わらない調子で挨拶してくる。
でも、その目がなんだか企んでいるように見えるのは気のせいじゃない。
絶対、あのことを引っ張る気だ……!
できるだけ自然に振る舞おうと努めるけれど、黒崎が口を開くたびに警戒心が募る。
♧「……でさ、昨日はよく寝られた?」
❀「……はい?」
♧「ほら、俺の肩がそんなに寝心地よかったなら、つい思い出して眠れなかったりして?」
❀「な、なんでそうなるんですか!?」
案の定、きた。
しかもその言い方、わざとらしさ百点満点だ。
❀「絶対気にしてますよね!」
♧「はぁ? 気にしてねーし。肩貸してやったくらいで調子乗んなよ」
❀「調子なんか乗ってません!」
顔が熱くなるのを感じる。
これ以上この話題を引っ張られるのはまずい。
♧「まぁ、俺の肩がよっぽど気持ちよかったんだろ。仕方ねぇよな」
なにそれ! 絶対わざとだ!!
❀「そ、そんなわけないじゃないですか! ただ酔ってたから、それだけです!」
♧「ふーん。酔ったら俺に甘えるのがクセとか?」
❀「ち、違います!」
♧「へぇー、じゃあ他の男にもあんな感じ?」
❀「……!」
思わず絶句する。
からかっているくせに、黒崎の目はどこか拗ねたような色を帯びていた。 いや、気のせいだな。今日はずーっと私からしたら嫌な目しかしていない。
♧「別にどうでもいいけどさ。お前が誰に寄りかかろうが、俺には関係ねーし?」
❀「………」
ツンツンした態度の中に、ちょっとした嫉妬が垣間見える。
これ以上、まともに言い返せるわけもなく――
❀「もう……! 知りませんっ!」
顔を真っ赤にしたまま、私はその場を逃げるように離れた。
休憩時間。
廊下を歩いていると、後ろから聞き慣れた声が追いかけてきた。
♧「おーい、逃げんなよ」
❀「逃げてません!」
♧「ははっ、図星?」
❀「違います!」
そう言い返しても、ニヤリと笑う黒崎の余裕は崩れない。
♧「ま、そんなに照れるってことは、やっぱり俺のこと――」
❀「――違います!!」
遮るように叫んでしまったけれど、心臓の音が速くなっているのが自分でもわかる。
♧「そっか。ま、否定するならそれでいいけど?」
黒崎はわざとらしく肩をすくめて、いつものようにふざけた態度を取る。
だけど、ほんの少しだけ口元が緩んでいるのを見逃さなかった。やっぱこいつ悪魔だ。
私昨日そんなにからかいました?
❀「……次の収録、ちゃんと集中してくださいよ」
♧「言われなくても」
こんな調子で、またからかわれる日々が続くのだろう。 まぁ、さすがにここまでではなさそうだけど。
でも――
……それも悪くないかも。
主演同士の、終わらない攻防戦。
でもいつか、この素直じゃないやり取りの先に、もっと素直な気持ちを見せ合う時がくるのかもしれない――。そう思いながら早めに帰るが時が過ぎていくにつれて、この気持ちが大きくなる。
いや、やっぱあいつはありえない。
いや、アリエール?
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寺田心くんが懐かしく感じる